酒と鉄道の日々

大好きな酒と趣味の鉄道の話題を絡め、時評・四方山話に酔うコーナー。

秋田内陸縦貫鉄道

2007-04-18 06:11:34 | Weblog
 秋田県北に位置する北秋田市・鷹巣と、桜の名所として知られる、仙北市・角館とを結ぶ、94.2kmの第三セクター鉄道がある。
 その名も、秋田内陸縦貫鉄道。文字通り、秋田県の最深部を縦に縦貫し、沿線の集落を丹念に繋いでいる。

 1986年に、旧・国鉄から分離された「阿仁合線」・「角館線」を引継ぎ、1989年には、両線の間の未開通区間を完成させて、現在の路線となっている。

 開業当初から、経営は厳しかったのだが、ここ数年は、会社の資本金に迫る、
3億円弱の単年度赤字を続けていて、その存廃が俎上に上ってきている。

 ご多分に漏れず、沿線の過疎化が進行し、本来の利用者であるはずの、沿線住民の利用が減少を続けているのが、なんと言っても痛い。

 鉄道が最も得意とする「定型大量輸送」、即ち、通勤・通学に、もっともっと需要を積み上げなければ、存在価値が問われても抗弁しようがないかもしれない。

 しかし、その地で暮らす人たちにとっては、ナニモノにも代え難い交通手段であり、その存廃は、生活を根底から覆すほど、重要なポジションを占めていることも
、また事実なのだ。
 
 特に、交通弱者(イヤな表現だが)にとっては、この鉄道があればこそ、安心して買い物にも出かけられるし、通院もできる。子供たちを下宿させることなく、学校にも通わせられる。

 鉄道にこだわらなくても、バスがあるだろう、という意見もある。しかし、沿線は、秋田県内でも有数の豪雪地帯、並行する国道は在るものの、急峻で狭隘な区間も少なくない。

 こうして観て来ると、この鉄道は、沿線住民にとっては、広い意味での「社会保障」の一環を担っていると言わざるを得ないのだ。

 鉄道の廃止によって、沿線の過疎化に拍車がかかり、地域が崩壊する危惧を内在している点が、ローカル線存廃問題の本質でもある。

 そうは言っても、赤字が続くことを容認できる時勢ではない。

 沿線住民が必要とするなら、多少の不便は在っても、日常的に率先乗車すべきだし、行政サイドも、管内の小中学生の通学には、鉄道利用のための施策を講じるとともに、職員の通勤等、行政自らの鉄道活用と、企業への活用要請を行うと共に、
鉄道会社と一体となって、同鉄道への観光客誘致のための行動を起こすべきと思う。

 いま在るものを観光資材として活用し、地域振興に役立てることこそ、本来の意味での「第三セクター」化の実践であろう。
 
 失ったものの大切さを、後で説いても、何の意味ももたない。
 沿線住民も含めて、「地域」をどう形成していくのか。せっかくの鉄道のレールを錆付かせるのでは、その代償は、あまりにも大きい。

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