(事例)
甲夫と乙子共有の不動産に
1番抵当権として次のような登記がある。
連帯債務者
住所A 氏名甲夫
住所A 氏名乙子
今般甲夫と乙子が協議離婚をすることになり
甲夫が乙子に、その持分全部を財産分与し、
抵当権の被担保債務を乙子が免責的に引き受けるものとして
抵当権者の同意を得た。
その際に
甲夫の住所がAからBに、
乙子の氏名が丙子に代わっている。
※ ※ ※
所有権に関して
甲夫と乙子(=丙子)の住所や氏名の変更登記を
同一の申請書ですることはできない。
甲夫の登記と乙子の登記は
「同時に同一の住所に移転した場合」等の事情がなければ
一括して申請することはできない。(規則35条9号)
しかし、
抵当権変更(免責的債務引受)の前提登記としての
債務者の住所や氏名の変更はどうか?
【登記研究507 198頁】
根抵当権の債務者A及びBが日を異にして住所移転をした場合
根抵当権変更登記の申請は、同一の申請書ですることができ
この場合の登記原因の記載は、「年月日A住所移転、年月日
B住所移転」が適当である。
そもそも、二つ以上の権利に関する登記を
一つの申請情報によって申請できるかどうかというのが
この事例に関して一括申請ができるかどうかという問題である。
所有権に関しては、甲夫と乙子の登記は
それぞれ別個独立の持分権についての登記(二以上の権利)
であるのに対し、
抵当権の債務者の場合は
仮に甲夫と乙子の両名が記されていたとしても
一つの抵当権という一の権利の一内容にすぎないから
一括申請の可否を問われる「二以上の権利」にはあたらない、
と思われる(私見)。
※ ※ ※
上記より事例における変更登記は次のようになると思われる。
登記の目的 1番抵当権変更
原 因 平成年月日甲夫住所移転、平成年月日乙子氏名変更
変更後の事項 連帯債務者甲夫の住所 B、連帯債務者乙子の氏名 丙子
令§4 申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、
一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。た
だし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産
について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付
が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この
限りでない。
規§35⑧ 同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上
の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の
登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記
又は更正の登記であるとき。
規§35⑨ 同一の不動産について申請する二以上の権利に関
する登記(前号の登記を除く。)の登記の目的並びに登記原因
及びその日付が同一であるとき。
規§35⑩ 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産
について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、
質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記
であって、登記の目的が同一であるとき。
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