エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

会津を愛した早乙女貢さん

2008-12-26 | 文芸
             【磐梯朝霧:早乙女貢 画文集「会津の詩」より】

 今朝の新聞で、作家・早乙女貢氏の逝去を知った。ご本人は言葉に出して健康に自身があると言っておられたくらいで、元気に作家活動を続けておられると思っていたので、突然の訃報に驚いた。
 吉川英治文学賞を受賞した「会津士魂」「続・会津士魂」は全21巻、30年かかったと言い、現在も書いている続編の完成まではあと30年、百歳を超えるまで生きなければならないし、生きる自信があると語っていたそうだ。
 この秋にも、「会津まつり」で例年のように家老・西郷頼母になりきって馬上から颯爽と会津の町を眺めておられたのに。私が先生へ敬意を込めて頭を下げると、軽く会釈を返されたのが目に残っている。
 
 本棚に、早乙女貢 画文集「会津の詩」(新人物往来社刊)がある。発売と同時に求めたものだが、本人はあくまで趣味だと言っているが素晴らしい絵と文章である。

【月明鶴ヶ城:早乙女貢 画文集「会津の詩」より】


【長命寺土塀:早乙女貢 画文集「会津の詩」より】


その巻頭の「わが故郷会津」には、氏の故郷会津への思いを示す一文がある。
「会津に行くたびに、私は安らぎを覚える。 血が呼ぶ、というか、祖先の墳墓の地という思いが、一木一草にも親しみをおぼえ、川の流れにも、親しく懐かしい響きを感じるのだ。・・・・
 曽祖父は会津藩士であり、戊辰戦争で活躍した。その由緒が、私をこの地に導き寄せる。・・・・・明治維新の陰で、もっとも甚大なる被害を受けたのが、会津藩だった。歴史は常に勝利者によって改?される。そこには欺瞞の歴史しかない。明治維新がいい例だ。会津藩士の士道と頑なまでに正義を信じる武士の心は、非道な手段で政権の座を得た薩長土の連中にとって、憎くてならなかったろう。彼らは、おのれらの野望による悪事を隠蔽するために、会津藩を”逆賊”とし、”朝敵”として叩き潰さねば、枕を高くして眠れなかったのだ。・・・・・・」


会津藩への思慕の強い作家として有名であり、『會津士魂』に代表される幕末作品・考察における視点は一貫して会津・新撰組など幕府側に立っている。
歴史を敗者の側から書いてくれた早乙女さんの文章は、私にとってもこころ強い支えとなるものがあった。会津にとって大切な方を失ったと思う。ご冥福をお祈りします。

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