澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「サヨンの鐘 」を聴く

2009年10月06日 03時54分05秒 | Weblog
映画「練習曲~単車環島日誌」(2006 台湾)の中で、自転車で台湾を一周する主人公が宜蘭(イーラン)に立ち寄る場面があった。そこには「サヨンの鐘」の碑が建てられ、多くの観光客が訪れる場所となっている。
映画では、台湾の原住民のひとつであるタイヤル族の老女達が、日本語らしい歌を歌う場面が出てくる。「…丸木橋…」という言葉が聴き取れるのだが、その歌の由来は分からなかった。

(映画「練習曲~単車環島日誌」)

調べてみると、日本統治時代、タイヤル族の娘・サヨンは、離任する日本人教師を送りに山を下りるが、その帰路、台風で増水した河に流されてしまう。その出来事は美談として伝えられ、1942年、李香蘭主演で映画化(下記の映像)された。
上記のタイヤル族の老女の歌は、古賀政男作曲、西条八十作詞、渡辺はま子の歌唱によってレコードになっていた。
もう80歳を超えた老女が、今なおこの歌を覚えていて、歌っているのが驚きだった。最新の台湾映画の中にも、日本と台湾の”刻まれた歴史”が現れるのが実に興味深い。
現在宜蘭にある「サヨンの鐘」は、10数年前に再建されたものらしい。映画「練習曲」の中では、「これはレプリカです」とだけガイドが説明している。それでは、日本統治時代の「サヨンの鐘」はどこに行ったのか?と思ったら、中国国民党政府が撤去を命じたのだそうだ。40年にも及んだ国民党独裁時代には、日本語はもとより日本統治時代を想起させる事物はすべて禁止・廃棄された。にもかかわらず、現在の台湾では、日本統治時代を見つめ直そうとする気運が高まっている。これは素晴らしいことだ。

(映画「サヨンの鐘」のポスター)

李香蘭主演の映画については、国立民族学博物館で上映された際の解説文があるので、引用させていただく。


【サヨンの鐘上映会の解説文】
「サヨンの鐘」(1943年/75分)
今回のみんぱく映画会では、1943年に封切となった松竹映画「サヨンの鐘」を上映します。
映画「サヨンの鐘」は第二次大戦以前の台湾でおこったある事故がきっかけとなり製作されました。1938年、日本統治下の台湾の宜蘭県にあるタイヤル族の村に赴任していた一人の日本人警官に召集令状が届きました。その警官は普段から村人の面倒をよく見たり、学校の教師もつとめたりして、村人や学校の生徒からとても慕われていました。警官が村を離れるとき、村人たちは彼の荷物を運びながら見送ることにしました。その中に当時17歳の少女サヨンがいました。下山の日は運悪く暴風雨となり、川はいつになく増水していました。荷物を背負ったサヨンは足を滑らせ、川の激流に飲み込まれ、そのまま帰らぬ人となったというものです。
当時の台湾総督は、出征する恩師を見送るために少女が命を犠牲にした愛国美談としてこの事故を扱い、サヨンの村には記念の鐘が贈られました。さらに、この愛国美談は、西條八十、古賀政男という当時の流行歌のヒットメーカーにより、「サヨンの鐘」という楽曲として台湾全島で流行しました。そして、この大ヒットに便乗して1943年に製作されたのが、李香蘭(山口淑子)主演の映画「サヨンの鐘」です。
開催中の企画展「臺灣資料展」の展示資料は1930年代を中心に収集されたものであり、「サヨンの鐘」からは、この時代の台湾の原住民社会の様子をうかがい知ることができます。また、当時の日本が表象した台湾原住民の人々を克明に伝えてくれると思われます。「皇民化」の号令とともに、台湾の人々は日本人としてのアイデンティティをさまざまな形で植えつけられていきます。満州映画界のスター李香蘭を起用した、まさに国策映画として製作された「サヨンの鐘」もそれを進めていく一つの手段とも言えるでしょう。一方で、植民地主義という言葉だけではかたづけることができない、台湾の人々と日本人との関係が当時の台湾にあったことも事実です。映画会では、横浜国立大学教授の笠原政治先生をお招きし、台湾原住民の人々と日本人とが共有した歴史を読み解く機会ももちたいと考えています。
当時の台湾の人々にとって、「日本人」であるということはどういうことだったのかを考えることは、現在の我々にとって、多文化社会のなかのアイデンティティのありかたを考えるうえで、何かしらのヒントを与えてくれるはずです。

〈出演〉李香蘭(山口淑子)、近衛敏明、大山健二
〈監督〉清水宏
〈脚本〉長瀬喜伴、牛田宏、斎藤寅四郎
〈音楽〉古賀政男
〈製作〉台湾総督府・満州映画協会・松竹株式会社



サヨンの歌 - 李香蘭




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私は「サヨンの歌」が大好きです (trefoglinefan)
2009-10-07 02:00:30
メロディーも美しいですし、
歌詞も素朴で心を打つものだと思います。
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Unknown (torumonty)
2009-10-07 09:04:34
コメントありがとうございました。
宇野功芳氏がこの曲を採り上げているんですね!聴いてみたいものです。原住民(タイヤル族)のお婆ちゃんの映像も見ていただきたいですね。
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Unknown (Unknown)
2009-10-09 19:04:29
「練習曲~単車環島日誌」と完全に違うタイプの台湾映画ですが、いいと思って勧めたいです。

題名は「不能沒有你 あなたなしでは生きていけない」

内容は台湾の底辺(なんとなくワーキングプアに近い)にいる中年父親が幼い娘のためにいろいろ頑張っていた悲しい話です。

予告編:
http://www.youtube.com/watch?v=_LBsXOR8GvE

映画を紹介する日本のブログ:
http://blog.goo.ne.jp/anemone339/e/5127dcba9c185d8fd33a088950668ac4

この映画の音楽に携わるのは「海角七号」のナレーションの蔭山征彦さんで、とても才能の溢れる方だなと思います。
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Unknown (torumonty)
2009-10-10 19:14:52
コメントありがとうございました。
予告編も見ました。興味があります。ありがとうございました。
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