武田邦彦氏(中部大学教授・化学)のブログを転載させていただく。
国を失った日本人(2) 空中分解した国、子供を被曝させる
ある読者の方から、厚生労働省の「お母さん向けパンフレット」を送っていただきました。
このパンフレットは、厚生労働省が多額の税金を使って大量に配布したもので、データは一切、書いてありませんが「放射線は安全だ、基準を守れば赤ちゃんは安全だ」を繰り返しています。
厚生労働省の中にはお医者さんもたくさんおられ、国民の健康を守るために、「健康ニッポン」などの大がかりなキャンペーンを展開しているのに、実に不思議です.
福島原発の事故が起こってから国は、
1) 外部からの線量の限度を、1年1ミリから1年20ミリにした(内部はわずか2%の査定)、
2) 水の限度を10ベクレルから300ベクレルにした、
3) 食材は魚を含めて急遽決めて、コメも含めて約500ベクレル(キログラムあたり)(魚は2000,コメ500、野菜300など)、
から、少し前のブログに書いたように、
「国を信用して、基準値を守る生活をすると、子供の被曝は1年に50ミリシーベルトになる」
というきわめて過酷な状態になるのです.
でも、このパンフレットのように、厚生労働省はそのデータを示さず、「基準を守れば赤ちゃんを守ることができる」と言っています(悪魔の言葉ではないか?).
本当に国は、1年20ミリとか50ミリで良い、「法律を守っている」と思っているのでしょうか?
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実は違うのです。
5月25日、「国」の原子力保安院は、「被曝について法律違反をした」という理由で東電を厳重注意処分にしました。
その理由は、
(1)第2原発で4月21日まで管理区域の設定基準を超える線量が測定されながら、線量管理をしなかった、
(2)放射線業務従事者でない女性5人が、放射線管理の必要な区域で勤務し、うち2人が一般の線量限度である年1ミリシーベルトを超えて被ばくした、
ということです。
そして、
「保安院は、作業員全員が携行できる線量計の確保や、通常時と同様に3カ月に1回内部被ばくの評価ができるよう機器を早期に整備することなど、7項目の改善策を東電に指示した。
第1原発では地震発生直後から女性計19人が作業に従事。女性の放射線業務従事者について国が定めた被ばく線量の限度「3カ月で5ミリシーベルト」を2人が超えるなど、放射線管理の不備が判明していた。」
と伝えています。
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私たちは国を失いました.税金は払わなくて良いでしょう.そのぐらいの常識は、訴訟になったときに裁判官も理解すると思います.
その理由、
1) 【文科省】 外部被曝だけで1年20ミリまでOK。
2) 【厚労省】 食材も入れて1年50ミリまでOK
3) 【経産省】 1年1ミリを越えると厳重注意
一体、これは何でしょうか?
完全な国の空中分解です。
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このほか、保安院は「日本国の法律」に基づいて、次のように東電に注意をしています.
1) 一般人の基準が1年1ミリということを忘れたのか!
2) 職業人の被曝は1年20ミリ(3ヶ月で5ミリ)ということを忘れたのか!
3) 職業人が働く管理区域では、線量計の携帯、内部被曝の管理が必要だと言うことを忘れたのか!
もちろん、日本では法律は一つですから、福島県や自治体は、
1) 一般人(それも子供)を1年1ミリ以上被曝させている、
2) 管理区域の人に線量計も内部被曝の管理もしていない、
3) それが現実なら、法律を守る立場から、除染に全力を挙げなければならないのに、限度を上げて被曝させている、
また、練馬区役所(ホームページは改正されたようです)、松戸市などは、「1年100ミリまで大丈夫です」と言い、法律違反をしています.
ある真面目な地方公務員から私に「1年1ミリという法律を教えてください」と依頼が来ました。とても正直で真面目な人なので、この質問は良いのですが、やはり法治国家ですから、国が空中分解していても、公務員は法律を守って欲しいものです。
でも、もう国は無い! 自分で行こう!
(平成23年5月26日 午前11時 執筆)