昨日から始まったNHKドラマ「路(ルー)」をざっと見た。
台湾新幹線の建設をめぐる物語ということだが、今、何故、これをNHKがドラマ化したのかという点がまず気になった。
11年ほど前、NHKは「JAPANデビュー」と題するシリーズを放送した。その第一回が「アジアの”一等国”」と題し「日本の台湾統治」を扱った番組だった。「未来を見通す鍵は歴史の中にある」と大見えを切ったのだが、実際は「自虐史観」から一歩も抜け出せない、いかにもNHK的な内容だった。
日本統治時代の台湾は、世界的に見ても驚異的な近代化を成し遂げた。鉄道、病院など社会インフラが整備され、学校教育も普及した。
ところが、NHKが採りあげた「台湾統治」の中味は、資源の収奪(ひのきなどの木材、砂糖など)や文化の収奪(日本語の強制など)などの”負”の側面が強調された。言うまでもないことだが、社会の近代化においては、光と影が同時に存在する。生来の言語が奪われ、日本語の強制が行われたとする「文化の収奪」だけでも、次のような反論は可能である。
「初等から高等教育までの普及を図るためには、日本語で学ぶことが最も有効で効率的だった。」
「高等教育を台湾語(閩南語(びんなんご)や漢文で行なうことはできず、日本語の使用は不可避だった。」(台湾語は話し言葉の言語、漢文は文書用語であって、どちらも近代科学技術や思潮に対応する言語体系ではなかった。)
「欧米諸国の植民地統治は、最低限の教育投資しか行わず、台北高校や台北帝国大学のような高等教育機関を設置することはありえなかった。」
さらに、「JAPANデビュー」においてNHKは、日本に好意的な(台湾)日本語世代の発言を意図的に編集して、日本の台湾統治の不当性を視聴者に印象付けた。
以上のような歴然とした経緯があるので、今回のドラマが日台間の歴史にどのように触れるか、その点だけは興味があった。ドラマの筋書き、出演者等々については、全く関心がない。
ドラマでは、台北帝国大学の卒業生だったらしい日本の老人が、悔恨の一言を述べるシーンがある。学徒出陣直前に、友人がその老人の知り合いの女性に求婚したいと打ち明ける。それに対してその老人は「お前は台湾人だ。”二等国民”だ。だから結婚はできない」と言ってしまった。そのことを今でも後悔している…と。
NHKが「アジアの”一等国”」「台湾人は”二等国民”」というような断罪的な表現を好む理由は明らかだ。NHKはいかにも差別を許さず自由平等を尊ぶような顔をして、歴史の「正邪」を裁く”神”になろうとする。今流行りの「人権」や「ヘイト」を持ち出せば、誰も文句を言えないだろうという算段もある。
だが、公正中立な報道を標榜しながら、その実、中共(中国共産党)の顔色を窺うばかりのNHKにとやかく言われたくはない。台湾人の気持ちに”寄り添う”などと、気色悪いことは言わない方がいい。
くだんの「アジアの”一等国”」は偏向番組であるとして、視聴者の集団訴訟に発展した。その事実を弄ぶかのように「台湾人は二等国民」という刺激的な台詞を入れたNHK。その体質は一向に変わっていない。考えてみれば、戦前、大日本帝国臣民を一等、二等などと囃し立てたのは、他ならぬNHKと「朝日」ではなかったのか。
タイトルは失念したが、台湾映画で台南の高校に転学してきた日本人高校生と台湾の女高生が淡い初恋を経験するという映画があった。その日本人高校生の父親は、台湾新幹線の建設のために台南にやってきたという設定だった。
私には、説教がましいNHKドラマ「路」よりも、この映画の方がずっと清々しかった。
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