東京で開催中の「世界ウイグル会議」に対して、中国政府が神経をとがらせている。今晩の「プライム・ニュース」(BSフジ系列)を見ていたら、凌星光・中国社会科学院教授が「新彊ウイグルは中国の核心的利益」、「中国はまだ完全な独立国家ではない。何故なら台湾がまだ解放されていないから」と言い放った。「世界ウイグル会議」の開催については、「日本政府の友人には東京で開催しないように働きかけた」と言論弾圧を試みたことを自ら広言した。
中国は、新彊ウイグル、チベット、台湾の領有を「核心的利益」と位置づけている。ベトナム、フィリピンと紛争になっている南沙、西沙諸島についても、核心的利益であるとすでに広言している。昨年、ベトナム研究の専門家から話をうかがったとき、「もし、中国政府が尖閣諸島を核心的利益と位置づけたら、それは日本にとって深刻な事態になる」と話された。
ところが、つい最近、温家宝首相が「尖閣諸島は中国の核心的利益」だと言明したという報道が伝えられた。ついに尖閣諸島問題が、台湾やチベット、ウイグルと同列の核心的利益になったわけだ。核心的利益とは、中国にとって死活的な意味をもつ権益のことであるから、これが確保されなければ、武力行使を含むあらゆる手段に訴えることが正当化される。
漁船一隻の体当たりにさえ、発砲ができなかった海上保安庁だから、今後、中国の海上監視船なるものが出動してきたら、どうするのか? 強硬手段を辞さない相手に海上保安庁、自衛隊が対抗できるのか? 遺憾ながら「平和憲法」に呪縛された自衛隊には、おそらく何もできないだろう。
マスメディアは、「尖閣問題で、温家宝首相は中国の領有権を主張した」などというおざなりの報道をしないで、中国の言う「核心的利益」についてもっと詳しく視聴者に説明すべきだろう。事態は、想像以上に深刻なのだから。
世界ウイグル会議:議長、中国式人権を批判
毎日新聞 2012年05月14日 22時58分(最終更新 05月14日 23時28分)
14日開幕した亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(本部ドイツ・ミュンヘン)の代表大会で、ラビア・カーディル議長は「中国式の人権という理論は中国人ですら受け入れられなくなっている。民族問題を解決しない限り、中国が国際社会で地位を確立させることは不可能だ」と訴えた。
17カ国約125人のウイグル人活動家が参加し、約20のメディアが取材。新華社など中国メディアも訪れた。
04年設立の同会議は3年に1度、代表大会を開いており、アジア開催は初めて。カーディル議長は日本開催の理由を「(中国に近い)アジアの強い民主国家で支援が期待できるため」と述べた。17日まで。【石原聖】