VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

永遠の桃花通信29

2021-11-06 08:02:04 | 永遠の桃花

素素を失って生きた300年、今再び白浅が去ったら、

それも  他の男の所へ・・・

思うだに  死なれるより辛い夜華です。

墨淵は夜華にしてみれば完璧な男性

 白浅が今夜身を任せたのは

彼女の義理堅さゆえ、と思っています。

桃をもらったら桃を、桃がなければ

枇杷で返す。それが白浅のやり方だから・・・

 

結魄灯を三日間、しっかり火を消さぬよう

しっかり見張るよう、白浅に何度も念を押す。

そして

夜華は ぐっすり眠る白浅を彼女の寝殿に

戻して  神芝草を取りに向かいます。

 

一方、白浅はその夜、夢で素素時代の

出来事を見るのです。

原作では 素素のエピソードは

目を無くす以前の事はおぼろな夢として

断片的に語られているだけで、

それも  白浅は  脇で見ていて

二人の顔もおぼろで、誰かもわからない。

 

番外編1-2で

夜華の物語に出てくるエピソードと

つなげると  更にわかるようになっています。

 

『私は東屋の扉を押し開けた。

安っぽい銅鏡の前で

質素な白い衣服を纏った女性が、

座っている玄色の衣服の男性の髪を

とかしていた。(中略)

座った男性が言った「私が見つけた

新しい場所は私たち二人しかいない。

きれいな山や水もない。

貴女は住み慣れるかな?」

立っている女性が言った。

「桃の木が植えられる?

桃の木が植えられるなら大丈夫。

木は家を建てる事ができるし、

桃は食べられる。あ、だけどこの山は

なかなかいい所じゃないの。

つい先日には、貴方が家の屋根を

葺き替えたばかりだし、どうして

新しい場所に引っ越す必要があるの?」

 

・・・座っている男性は神仙、女性は

ただの人間。彼らの声はとても聞きなれた

ものだった・・・

 

男性は少し沈黙してから言った。

「あちらの土はこちらのものと少し違うので

 桃の木が育たないかもしれない。うん、

貴女が植えたいのなら、試してみると

良いかもしれない。」

背後の女性は 少し黙ってから

突然身体を屈めて 男性の方に抱きついた。

男性は振り向き、しばらく女性を見つめてから

二人は口づけを交わし始めた。

・・・私は二人の顔をはっきり見る事に

こだわっていた。加えて 夢だとしっていた為に

特に避ける事もなく 大きく目を開けたまま

恋人たちが真昼間からキスを続けたまま

ベッドに倒れこむのを見た。

瞬時に景色が変わった。

・・・玄色の衣服の男性は 白い衣服の女性に

切々と語りかけていた。「絶対にこの山から

一歩も外に出ないで、今の貴女は

赤ちゃんを身ごもっているのだから、

家の人達に気づかれやすくなっているのです。

万が一彼らに気づかれたら大変な事になる。

私は用事を済ませたら すぐに戻って来るから。

あ、そうだ あの場所に桃の木を植える方法を

考えついたから」言うと、袖の中から

一枚の銅鏡を取り出し、女性の手に握らせる

「寂しいと感じたらこの鏡に向かって

私の名前を呼ぶと良い。忙しくさえなければ

貴女と会話できる。絶対に忘れないで欲しい。

この桃林や山を一歩も外に出たりしないでね」

女性は頷き応じた。男性の姿が消えてから

ようやく小さな声で溜息をついた。

「東荒大澤に誓いを立ててちゃんと夫婦に

なったのに、家の人に会わせようとしない。

これじゃまるで、妾みたいじゃないの。

はあ、妊娠してもこそこそ隠れていなければならない。

あまりにも惨めだわ。どうしたらいいんだろうな」

頭を振って家に入っていった。

 

その後、季節が変わり、白浅は女性が何か叫びながら

外へ飛び出す場面をみる。

天から激しい稲妻が二つ降りそそぎ、白浅は

目を覚ます。

結魄灯が枕元にともっていた。

 

白浅は 目覚めると 年齢差という

大きな溝を超えて、自分と夜華が

相思相愛であることをはっきり悟り、

ようやく心が軽く 晴れやかになった。

情というものは  やはり 自分の気持ち

だけで  触れるか触れないかを

選ぶことができないものだった・・・