
その生涯と由縁の街を巡る
内容(「BOOK」データベースより)
我が国ではまだ紹介されていないバッハの足跡を、最新の現地取材をもとに、数多くの貴重な写真と、その人間性の深い理解に基づいたエッセイでたどる、バッハ入門者にも、そしてバッハを極めた人にも必携の一冊!あなたの知らないバッハがここにいる。
「私のような勤勉だったら、誰だって私のようになれるでしょう」
10歳で孤児となった<音楽の父>バッハは雌伏の頃を振り返り、こう述懐したという。
学術書、文献の類いではないのですが、加藤さんの文章には何ともバッハを身近に感じている「愛」のような感情を感じます。あくまでも、バッハを一人の人間として捉え、たとえバッハ没後250年の年に書かれたという「堅苦しさ」や「荷の重さ」などは微塵も感じさせない作品です。若月さんの写真もすばらしく、特に教会やオルガンの映像には圧倒されます。東京書籍さんは再版しないのでしょうかね。
1685年にアイゼナッハに生まれ、1750年にライプツィヒに死んだヨハン・セバスチャン・バッハの音楽人生を、旧東独を中心とする現在のドイツの各地に探ってみようという、何とも贅沢で、気ままな物見遊山風な観光旅行・・・・
加藤センセの文章は、なかなかに楽しく、多少なりとも気障で困るう!風なところがなきにしもありや。で、ところどころ1989年のあの歴史的大事件前後の東独の感慨も未練たっぷりに盛り込んでの書きぶりは、これはこれでなかなかに面白い。
しかし何と言ってもバッハ由縁の地を、見事な美しさで切り取った若月氏の写真力、本書の魅力はそこに尽きるだろう。これらの写真がなければ、この本の魅力は半減!どころか、意味がないとも言っていい。文章を読むのが「かったるい!」と思う向きには、写真だけでも見ていれば、ああ、それだけでも、本書を手に取った意味はある。
冒頭の〈バッハ関連地図〉の部分をコピーして、さあ、現地へ・・・・っていう気にさせる好読み物。 クラシック音楽好き、歴史好き、旅行好きにはチョーおすすめ。
特にケーテンとライプツィッヒに行ってしばらく滞在したくなりました。ケーテンは特にアンナ・マグダレーナと結婚したり、平均律の第1巻を完成した街です。本当はもっと詳しく知りたかったのですが、バッハゆかりの街は多いのです。何年か先に自分で訪問してみたいと思います。
ケーテンに関しては私のバッハの平均律のページ「聖律の音楽」のなかで、「アムーザ」(音楽嫌い)とバッハにはからずも命名されてしまっているケーテンのお妃についてのことを書いています。彼女の名誉回復ができないものかという、門外漢のおせっかいのようなものでしょうが、いろいろ調べて書きました。その他、ケーテン時代の平均律などの自筆譜に手のかかった表紙がついていることについても想像をたくましくしております(アンナ・マグダレーナのページにあります)。
写真が綺麗であることは大いに評価できるが,文章が主観的(史料に基づいた記述もあるものの,我々には知り得ないバッハの感情をあれこれ推量する傾向がある)で,少なくとも私には合わなかった。
史料に基づいたことを書くときにも出典を明記して欲しかった。「バッハへの旅」という題名にするからには,旅行ガイドのような実用的な情報(交通機関,宿泊施設,詳細な地図など)も含めるべきであった。314ページの「カール・フィリップ・エマヌエル」とされている挿絵は誤りで,実は「ヨハン・クリスティアン」か「ヨハン・クリストフ・フリードリヒ」のどちらかである。しかしながらバッハ旅行を楽しみたいバッハファン(私もその一人であるが)には便利な1冊ではある。
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