輪子の競輪日記 快気祝い田中家へ変更

2018年12月10日 07時07分57秒 | 未来予測研究会の掲示板

知人に大声で武蔵さんが声をかけていた。
「オオイ、オオイ会長」
相手は特別観覧席の2階から3階へ向かう階段を上がってきた。
輪子と武蔵さんが座るソファーの席から約10㍍の距離。
競輪場内の喧騒を破るような武蔵さんの大声が相手に届き、二人が座る場所へ相手が歩んできた。
「久しぶりだな。肺はどうなった」
「無事、手術できた」
「そうか、良かったな。お祝いだ。牛角で御馳走する。12レースが終わったら2階で待っていろ」
「2階ですね」
「ああ、待っている」
「あの人は、何処からきているのですか」と輪子は聞いた。
「成田線の木下(きおろし)だ」
武蔵さんは、競輪歴が長いので、多くの顔見知りが居る。

「取手の会長も、姿を見せなくなったな」
武蔵さんは知人の全ての人に「おお、会長」と声をかける。
でも、取手の会長は、建設会社の会長。
「じいちゃん、競輪行って遊んできたら」と孫娘が2万円を渡すそうだ。
足腰が弱ってきた92歳の会長は、息子に社長を譲ってから競輪を初めて10年。
武蔵さんが、競輪の帰りに立ち寄る駅ビル5階の「田中屋」で会長は、ソバを食べ日本酒の八海山を飲んでから、タクシーに乗って帰って行く。
徒歩なら10分の自宅。
「おお、会長、今日は儲かったのか?」と武蔵さんが会長に声をかけると、「いや、今日もダメだ。3000円だけ残して今、酒飲んでいる」と目は伏し目がち。
輪子は武蔵さんから、田中屋で度々、御馳走になっている。
武蔵さんの末の娘さんが東京の大学病院で看護婦長をしていて、娘さんの同輩のように思い看護師の輪子を可愛がっている。
「輪ちゃん、お互い、トラ年だ。気が合うな。俺がもう少し若ければな」と冗談を言うが、本気ではない。
皮肉なもので、この日は日曜日なのに牛角は休みだった。
そこで、快気祝いが田中家へ変更。

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