ガザ地区戦闘1年 死者は4万1000人超に いまも終結は見通せず

2024年10月07日 12時30分47秒 | その気になる言葉

パレスチナのガザ地区でイスラエルと、イスラム組織ハマスとの間で戦闘が始まって、7日で1年となります。

イスラエル軍はガザ地区の北部で再び地上作戦を始めるとともに、レバノンでの攻勢も強めるなど事態は悪化の一途をたどっています。

イスラエルとハマスの大規模な戦闘が始まってから7日で1年となるのを前に、イスラエル軍は6日、ハマスが戦闘能力を取り戻そうとしているなどとしてガザ地区北部のジャバリアで再び地上作戦を始めました。

ガザ地区の地元当局によりますと、ジャバリアでは子ども9人を含む17人が死亡したということです。

戦闘はレバノンにも拡大していてイスラエル軍は7日、レバノンの首都ベイルートにあるイスラム教シーア派組織、ヒズボラに関連する施設などに空爆を行ったと発表しました。

これについて、イスラエル軍の報道官は「目撃者によると現地では2次的な爆発が起きていてこれは標的だったヒズボラの倉庫に武器やミサイルが保管してあったことを示している」としています。

ロイター通信が、ベイルート南部の郊外を捉えた映像には、オレンジ色の巨大な炎が写り爆発のあと、炎とともに火花が激しく散り、煙が立ちのぼる様子も確認できます。

一方、イスラエルのメディアによりますと、レバノンからは6日、135発のロケット弾がイスラエル北部に向けて発射され10人がけがをしたということです。

中東ではイスラエルがイランによる先週の大規模なミサイル攻撃への対抗措置をとるとの懸念も高まっていて、戦闘の開始から1年がたついまも終結は見通せず、事態は悪化の一途をたどっています。

住民は国際社会の関心の低下を懸念

レバノンでの戦闘の激化など中東でのさらなる紛争の拡大が懸念されるなか、ガザ地区の住民からは国際社会の関心の低下を懸念する声も聞かれます。

南部ハンユニスで避難生活を続ける男性は「レバノン情勢に注目が集まり、私たちガザの住民のことはあまりニュースで取り上げられなくなっていると感じる」と話していました。

さらに、別の男性は「私たちは切実に停戦を求めている。すでに疲れ果て、もう限界を迎えている」と訴えていました

ガザ地区での戦闘 経緯

 
去年10月

パレスチナのガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は、去年10月7日のハマスの奇襲攻撃をきっかけに始まりました。

ハマスがイスラエルに対して大規模なロケット攻撃のほか越境攻撃を仕掛け、およそ1200人を殺害したほか、人質としておよそ250人をガザ地区に連れ去りました。

去年10月

これを受けてイスラエル軍はハマスの壊滅と人質の解放を掲げて、その日のうちにガザ地区での軍事作戦に乗り出します。

激しい空爆を行うとともにガザ地区を完全に封鎖して電力などの供給も止め、水や食料も不足する中、人道状況が急速に悪化していきます。

10月下旬にエジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、支援物資の搬入が始まる一方、イスラエル軍はガザ地区での地上作戦に踏み切ります。

11月にはハマスの重要な拠点になっているとして、地区最大の病院「シファ病院」に突入するなど作戦を拡大し、国際社会から人道危機への懸念が高まります。

11月下旬にカタールなどの仲介で戦闘の休止が実現し、7日間の休止期間に人質105人が解放され、イスラエル側も刑務所に収容していたパレスチナ人240人を釈放しました。

軍事作戦を再開したイスラエル軍はガザ地区の北部に続き、中部や南部で地上作戦を進め、避難者が集まる学校なども空爆の被害が相次ぎます。

イスラエル軍は、ことし5月には多くの住民が避難していた地区の最も南のラファで地上作戦を始め、エジプトの境界沿いに広がる緩衝地帯「フィラデルフィ回廊」を制圧し、支援物資の搬入の拠点となっていたラファ検問所も閉鎖されます。

こうした中、アメリカのバイデン大統領はガザ地区での停戦に向けて3段階からなる新たな提案を発表し、断続的に協議が続けられました。

しかし、イスラエル側が「フィラデルフィ回廊」などでの軍の駐留の継続を求めたのに対し、ハマス側は完全撤退を求め、協議は難航し、いまも停滞したままです。

イスラエル軍は、先月南部のラファを拠点としていたハマスの4つの大隊すべてを壊滅させたとするなど成果を強調していますが、停戦の見通しが立たない中、ガザ地区での犠牲者は4万人を超え、今も増え続けています。

中東での戦闘拡大 経緯

去年10月にガザ地区での戦闘が始まると、イランが主導し「抵抗の枢軸」と呼ばれる中東各地の武装組織のネットワークがハマスへの連帯を示し、イスラエルへの攻撃に乗り出します。

このうち、イスラエルの隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、ガザ地区での戦闘が始まった翌日に、イスラエル北部を砲撃し、以来、双方の間で攻撃の応酬が続きます。

また、イエメンの反政府勢力フーシ派はイスラエルに向けてミサイル攻撃などを行うとともにアジアとヨーロッパを結ぶ紅海周辺で船舶への攻撃を繰り返し、世界的な物流にも影響がでます。

このほか、イランが支援するイラクとシリアの民兵組織が駐留するアメリカ軍に対して無人機やロケット弾による攻撃を行うなどイスラエルと同盟関係にあるアメリカにも攻撃の矛先が向けられました。

これに対し、イスラエル軍はシリアにあるイランの軍事拠点などを相次いで空爆したと伝えられています。

ことし4月1日にはシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館が攻撃を受け、イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊の司令官らが殺害されました。

そのおよそ2週間後に、イランは報復として、イスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を発射し、初めての直接攻撃に踏み切りました。

その6日後にはイラン中部の空軍基地の付近で爆発があり、イスラエルの対抗措置とみられましたが、被害は限定的でそれ以上の攻撃の応酬には発展しませんでした。

しかし、ことし7月にイランの首都テヘランを訪れていたハマスのハニーヤ最高幹部が殺害され、イランはイスラエルによる攻撃だとして報復を宣言します。

先月27日にはレバノンの首都ベイルート近郊でヒズボラの最高指導者ナスララ師がイスラエル軍の空爆によって殺害され、緊張がさらに高まります。

イスラエル軍がレバノン南部への地上侵攻に踏み切った今月1日、イランはヒズボラのナスララ師の殺害などの報復としてイスラエルに対し180発以上の弾道ミサイルによる大規模攻撃を行いました。

イスラエルは対抗措置をとる構えで、中東での紛争の拡大が懸念されています。

OCHA“ガザ地区 戦闘開始以降4万1689人死亡 子どもが3割近く”

OCHA=国連人道問題調整事務所が2日に発表したところによりますと、去年10月に戦闘が始まって以降、ガザ地区では4万1689人が死亡しました。

このうち、子どもは1万1355人で全体の3割近くを占めています。

また、およそ210万の人口の9割におよぶおよそ190万人が避難を余儀なくされているほか、食料不足が深刻化する中、飢きんに直面している人は人口の4分の1近くのおよそ49万5000人に上っているということです。

国連やNGOなどの支援関係者も犠牲になっていて、去年10月以降、ガザ地区で280人以上が死亡し、その多くはUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のスタッフだとしています。

報道関係者の犠牲者も増え続けていて、報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO、CPJ=ジャーナリスト保護委員会は4日、ガザ地区の戦闘に関連して死亡した報道関係者は少なくとも128人に上っているとしています。

イスラエル軍はヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区でも攻撃を行っていて、OCHAによりますと、先月末までのおよそ1年間に678人のパレスチナ人が死亡しました。

一方、イスラエル側では1200人以上が亡くなったということです。

【被害の状況】

 

ガザ地区では激しい戦闘で学校や病院も大きな被害を受けています。

学校・教育

OCHA=国連人道問題調整事務所の4日の発表によりますと、9月上旬までにガザ地区にある564の学校の87%にあたる493校が戦闘の被害を受け、このうち71校が建物を完全に破壊されたとしています。

教育を受けられなくなった子どもの数はおよそ62万5000人にのぼり、OCHAは「子どもたちの学ぶ権利が脅かされている」と訴えています。

病院・医療

また、WHO=世界保健機関によりますと、ガザ地区にある36の病院のうち半数以上が機能しておらず、17の病院が一部の運営を続けている状況だということです。

現地で支援活動にあたっている国境なき医師団が3日、発表した声明によりますと、これまでに14の医療施設から医療スタッフや患者などが避難を余儀なくされ、そのたびに何千人もの人々が治療を受けられなくなったとしています。

支援の状況

ガザ地区では食料や飲み水の不足が深刻で、飢餓のリスクが差し迫った課題となっていますが長期化する戦闘により人道支援が届きにくい状況が続いています。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は2日、10万トン以上の食料が搬入されずにガザ地区の外に留め置かれていると指摘しました。

食料支援を受けることができなかった人の数は9月140万人以上にのぼったとして、ラザリーニ事務局長は「ガザでは飢餓が繰り返し広がっている。これは完全に人災だ。冬が近づき、天候が悪化する中で人道物資が不足すれば、苦しむ人々がさらに増えるだろう」と訴えています。

林官房長官「停戦に向けた取り組み 強く求めていく」

 

林官房長官は7日午前の記者会見で「日本は一貫してハマスなどによるテロ攻撃を断固として非難し、すべての人質の即時解放を求めている。戦闘が長期化する中、ガザ地区で危機的な人道状況が続き、多数の民間人が犠牲になり、イスラエルとパレスチナ双方の市民の安全が脅威にさらされていることを深刻に懸念している」と述べました。

その上で「イスラエルを含むすべての当事者に対し国際法を順守するよう求めるとともに、停戦の実現に向けた着実な取り組みを改めて強く求めていく。G7や国連安全保障理事会の一員として、中長期的な地域の平和と安定の確立に向けて外交努力を重ねる。ガザ地区への人道支援を継続し今後訪れる復旧・復興段階でも役割を果たす決意だ」と述べました。

米 ハリス副大統領「圧力かけること やめるつもりはない」

アメリカのCBSテレビは6日、7日に放送予定のハリス副大統領へのインタビューの内容の一部を公開しました。

この中で司会者が、バイデン政権がヒズボラとの停戦を求めたにも関わらずイスラエルがレバノンに侵攻したことなどに触れた上で「アメリカはネタニヤフ首相に対し何の影響力もないのか」とただしました。

これに対しハリス氏は「ハマス、ヒズボラ、それにイランからの脅威を考えると、イスラエルが自衛するために私たちができるかぎりのことをするのは 間違いなく必要なことだ」と述べイスラエルを支持する姿勢を改めて示しました。

その上で「外交面ではイスラエルの指導者たちに人道支援や戦争の終結などの必要性を訴えて働きかけている。イスラエル、それにアラブの指導者らに圧力をかけることをやめるつもりはない」と述べ、外交的な働きかけを通じて緊張緩和を進めたい考えを示しました。

アメリカでは11月に大統領選挙を控え、中東情勢の混乱を収束できていないとして、バイデン政権に対する批判が強まっています。


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