尚子は中学2年の時、担任の小谷玲子先生から勧められ日記を初めていたが、高校3年の時に兄の克弥に日記を読まれたことを契機に日記を止めた。
兄のつきまといに悩んでいた時期であった。
14歳の時、兄に襲われかかったこと、その後に兄が家出した事も日記に書いていた。
でも、そのことを記した日記の箇所は玲子先生には読まれたくなかったので,ホチキスで閉じた。
「尚子さん、先生に読まれたくない日記があるのは、とての残念に思います」玲子先生は、赤い文字で記していた。
月に1回、生徒たちは玲子先生との約束で日記を提出して、先生に読んでもらっていたのだ。
尚子は中学高校一貫教育の私立女子校に通学していたことで、男子との出会いがほとんでなかった。
21歳の時に和夫に好意を抱き、深い関係になってことが契機となって日記を再開する。
尚子は、海外を放浪した兄の足跡については知りたくもなかったが、家へ戻った兄は顎髭となり精悍な風貌で、一層不気味に思われた。
街中で兄と出会うことも増えて、尚子は最初は偶然だろう思った。
でも実際は兄につきまとわれていたのだ。
和夫との2度目の京都への旅の後、尚子の生理が止まってしまう。
生理はストレスのバロメーターともいわれているほどで、さまざまなことがストレスとなり、無月経をおこすこともよくあるが、尚子は妊娠したと思い込んだ。
「和夫のバカ!バカ!」と日記に記する。
和夫を<呪い殺したいたい>かつてなく激しい感情に見舞われる。
兄の克也はさいさん妹につきまとったことで、和夫の存在をも知ることとなる。
「妻子がいるくせに、尚子をもてあそんでいる」克也は怒り狂う。
「あいつを首にしてやる」克也は和夫の会社にも電話をかけて社長を呼び出す。
「社長さん、社員の不倫を許していいんですか!」唐突に詰問する。
「まず、あなたの名前を名乗りなさい」社長の大村寅雄は毅然と言う。
「三村和夫は、絶対に許せない男なんだ!」克也は捨て台詞で、鬼の形相となり公衆電話ボックスを飛び出す。
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