太平洋戦争末期、女学生たちは秘密の兵器を製造するため、東京宝塚劇場に集められ…。
意図せぬまま戦争の当事者とされていく少女たちの青春を、膨大な資料や取材を基に描き出す。
『文學界』連載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
日露戦争30周年に日本が沸いた春、その女の子たちは小学校に上がった。
できたばかりの東京宝塚劇場の、華やかな少女歌劇団の公演に、彼女たちは夢中になった。
彼女たちはウールのフリル付きの大きすぎるワンピースを着る、市電の走る大通りをスキップでわたる、家族でクリスマスのお祝いをする。
しかし、少しずつ、でも確実に聞こえ始めたのは戦争の足音。
冬のある日、軍服に軍刀と銃を持った兵隊が学校にやってきて、反乱軍が街を占拠したことを告げる。
やがて、戦争が始まり、彼女たちの生活は少しずつ変わっていく。
来るはずのオリンピックは来ず、憧れていた制服は国民服に取ってかわられ、夏休みには勤労奉仕をすることになった。
それでも毎年、春は来て、彼女たちはひとつ大人になる。
ある時、彼女たちは東京宝塚劇場に集められる。
いや、ここはもはや劇場ではない、中外火工品株式会社日比谷第一工場だ。
彼女たちは今日からここで、「ふ」、すなわち風船爆の製造に従事する……。
膨大な記録や取材から掬い上げた無数の「彼女たちの声」を、ポエティックな長篇に織り上げた意欲作。
戦後はもうすぐ80年になる。
この小説の「わたし」たちは96・7歳となる。
「女の子たち」の戦争を小説として描いのである。
【商品解説】
著者紹介
小林 エリカ
- 略歴
- 〈小林エリカ〉東京都生まれ。著書に「マダム・キュリーと朝食を」など。
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