＜考えても実行に至らない＞

取手駅西口にある女性トイレから７０代と思われる女性が出てきた。
両手に大きな薄汚れた白い布袋を二つ下げていた。
右手の布袋は重いのだろう、引きづっている。
サンダルの足が異様にどす黒かった。
衣服はベージュのロングワンピースで汚れているようであった。
「ホームレスなのかな？」と輪子は想いながらその女性の後ろ姿を目で追った。
女性は輪子が勤務する病院行きのバスのべンチに座るが、乗客が現れたので遠慮するように移動して、階段下の狭い空間に身を寄せるように座りこむ。
輪子は政府から支給された１０万円の給付金を確認するために、駅ビル１階の郵便局のＡＴＭへ向かうところであった。
「可哀そうに、ホームレスは１０万円が、貰えないのね」輪子は呟く。
輪子は＜１０万円の半分を女性に＞と考える。
でも、＜考えても実行に至らない＞何故か？
競輪女子への輪子の胸が高鳴る。
この日は、取手競輪場  常陸牛杯のガールズケイリンに地元の荒川ひかり選手（110期）が出ているので足を向けることに・・・