「新聞はまず毎朝、死亡欄から見る」

2019年06月10日 16時48分55秒 | 創作欄

2011年12 月31日 (土曜日)

あと、何年生きられるだろうか?

徹は、毎年、12月の末日が迫ると想ってみた。
昔、徹が勤めた会社の社長が、「新聞はまず、毎朝、死亡欄から見る」と言っていた。
社長は徹より、7歳年上である。
死亡欄にまず目がいくと言う経営者に、30歳代の徹は侮蔑の目を向けた。
「後ろ向きで、性格が暗いから社員が定着にないのだな」
酒を飲むと後輩に対して、経営者批判をした。
その後輩の一人は遅刻が重なって突然、社長から解雇された。
「彼は、とても優秀ですよ。取引先の方たちからも、可愛がられています。戦力として欠かせません。解雇を撤回してください」
徹は社長に率直な気持ちを伝えた。
「遅刻し過ぎだ。もういいよ。だめな奴はだめなのだ!」
社長が自分で雇ってのだから、解雇の決断も自分がするのは必然。
徹は口をつぐんだ。
社長は生真面目な人間であるが、狭量でもあった。
「影でとやかく言うな。文句があるなら俺を説得してみろ」
誰にも文句を言わないトップの強引さのなかで、徹は言うべきことを言ってきた。
「こんな会社、いつでも辞めてやる」
腹のなかの気持ちである。
それから10年が経過して、リストラ解雇されると徹の気持ちは、大きく変化していた。

そして、皮肉にも徹は新聞の死亡欄が気になる年代となっていた。

数少ない親友たちが50歳代で逝くことが重なったことも、影響した


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