11/13(金) 16:12配信
MBSニュース
新型コロナウイルスで収入が減った事業者などを支援する『持続化給付金』。受け取る資格のない人が不正受給したとして逮捕者が相次ぐ中、警察に自首したという女性が犯行の実態を証言しました。給付金を巡っては新たな手口も横行しています。
自首した女性の証言「100万円受け取れる話がある」
11月11日、持続化給付金を不正に受け取ったとして韓国籍の男(24)と男子大学生ら5人が逮捕された。男らは2020年6月、大学生が飲食店を経営しているというウソの申請を行い、給付金100万円をだまし取った疑いがもたれている。大阪府警には11月11日までに持続化給付金の不正受給を巡る相談や情報提供が279件寄せられているが、氷山の一角にすぎないとみられている。
香織さんが証言した不正受給の手口
11月9日の深夜、1人の女性が取材班のインタビューに応じた。大阪府内に住む23歳の香織さん(仮名)は、小さな子どもがいるシングルマザー。この日、警察に自首したという。
(香織さん)
「申し訳ないでは済まないんですけど、償っても償いきれないし。母親やのに何してるんやろうと思って。(逮捕されて)自分がおらんくなったら周りに迷惑かけるし。子どもが一番かわいそうなので。」
香織さんは2020年7月に持続化給付金100万円を国から不正に受け取ってしまったという。一体、どのようにして不正受給したのか?
「知り合いに『みんなが100万円受け取れる話がある』と言われて、その時は給付金の話は知らなかったし、『みんなもらえるし知り合いの税理士の人が手続きを全部してくれるから』と言われて。身分証を出して、100万円が振り込まれていた。(Q100万円はどういう名目で?)コロナのあれでみんなが100万円もらえるって言って。」
香織さんによると不正受給の手口はこうだ。地元の友人から「コロナで給付金がもらえる。知り合いの税理士が手続きをしてくれる」と持ち掛けられた。香織さんは友人に▼住民票▼保険証のコピー▼通帳のコピーを渡し、1か月後には国から100万円が振り込まれた。その後、税理士の手数料として50万円を友人に支払ったというのだ。
(香織さん)
「税理士の人がやってくれると言うから、それくらいの手数料はあるのかなと思って、違和感とか何も考えずに、50万円かと思って。(Q税理士との面識はあった?)全くないです。全く知らないです。徐々に時間が経って分かったのが、いや犯罪みたいな。ニュースになっているのを見かけるようになってから気づきました。」
「ほんまに後悔しかなかった」給付金返還の申し出7000件以上
MBSニュース
2020年7月以降、大学生や主婦などが持続化給付金をだまし取った疑いで逮捕されるケースが相次いでいる。そもそも持続化給付金は、新型コロナウイルスの影響で2019年より売り上げが半減した中小企業に200万円・個人事業主に100万円が国から支給されるもので、2019年の収入が分かる確定申告の控えや2020年の売り上げデータなどがあれば、オンラインで申請ができる。
逮捕された容疑者らは、迅速に支給するために簡素化された手続きを悪用し、学生らが虚偽の確定申告書を提出する手口を指南するなどしていたという。その一方で、ニュースを見た不正受給者らが相次いで「返還したい」と名乗り出る事態も起きている。その件数は7000件以上に上っていて、取材した香織さんもその1人だ。
(不正受給を自首した香織さん)
「ほんまに後悔しかなかった。警察を見ただけで、うわ捕まるんちゃうか、バレたんちゃうかな、とか。びくびくする感じがずっと続いていて。(警察に)行くまではずっと怖かったんですけど。警察の方も1時間くらい話をして『後日連絡するから電話出てね』と、優しく対応してくださったんで、行ってよかったなと思いました。」
中村国際刑事法律事務所 漆原俊貴弁護士
コロナ禍で収入が減るなどして安易な気持ちで詐欺に加担してしまう実態。こうしたケースは少なくないという。
(中村国際刑事法律事務所 漆原俊貴弁護士)
「申請するまでは、きちんと調べもしないで申請して、お金が入った後に報道を見て、詳しく調べ始めて、どんどん不安になる人が多いです。自首すると減刑できますし、自分で行っているので逮捕されるおそれも低下する。」
詐欺を“指南する男”が話す「不正受給の手口」とは?
「返済不要の資金調達」と書かれていたアカウント
発覚しているだけで8億円近い被害が出ている持続化給付金詐欺。不正の入口となっているのがSNSだ。ツイッターで“持続化給付金”と検索すると…。
(ツイッターで検索 一部抜粋)
『持続化給付金の申請をしていない人であればどんな方でも100万円を受けとることができます!!』
誰でも持続化給付金を受け取れる、などと書かれた書き込みが多い。取材班は「返済不要の資金調達」と書かれていたアカウントに接触。電話をかけてみた。すると、山田と名乗る男が電話に出た。
(山田と名乗る男)「もしもし、お疲れ様です。山田です。」
(記者)「未成年でも大丈夫なんですか?」
(山田と名乗る男)「できるんですよ。正直、2歳でもできます。」
山田と名乗る男は不正受給の手口を話し始めた。
(山田と名乗る男)
「本来なら、その状態で受給すると不正受給に当たるじゃないですか。不正受給になったら、お客様の逮捕のリスクが伴うじゃないですか。不正受給に当たらないようなスキームを組んでいるんですよ。着金後の資金洗浄から、本当に事業をやっているというところまでするんです。」
山田と名乗る男は、すぐに確定申告書を偽造するためのフォーマットを送ってきた。
山田と名乗る男が話すお金の流れ
話によると、不正に申請して100万円が口座に入金された後、一旦、売り上げとして計上して山田の口座に入金。手数料10万円を引いた90万円を山田から手渡しで受け取ることで、口座上でも事業を行っているかのように見せかけるという。
(山田と名乗る男)「来年度の2月に個人事業主としての事業を廃業するというところまでやるんです。やっているように見せるって感じです。」
(記者)「実質は不正受給ということですよね?」
(山田と名乗る男)「でも、国からの見え方としては、個人事業主として受け取っている、というふうになっているんですよ。」
こうした手口で犯罪行為を隠せるとは到底思えないが、逮捕者が相次ぐ中、単純に書類を偽造するだけではなく、“事業主を装う”という新たな手口も横行している。警察は今後も持続化給付金詐欺に対して厳正に対処していく方針だ。
(11月12日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)
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