締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか 「先延ばし」と「前倒し」の心理学
安達 未来 (著)
【内容】
「先延ばしが悪、前倒しが善」、は現代社会の思い込み!――だれもが経験したことがある「先延ばし」や「前倒し」を、最新の心理学研究を用いて解明するのが本書の目的である。前倒しが礼賛されがちな“タイパ社会”において、諸悪の根源のように扱われがちな先延ばしであるが、実は考える時間を十分に取れる、クリエイティビティが促進されるなどの多くの長所がある。一方、先延ばしも前倒しも「やり過ぎ」は問題を引き起こす。本書では、自分の傾向を把握して“ちょうどいいタスクマネジメント”を身につける方法や、「先延ばし派」と「前倒し派」が協力して仕事や家庭を回すコツを伝授。「適時のタスクマネジメント術」で人生が変わる!
【目次】
序章:タスクマネジメントとは何か
1.現代の日常はマルチタスク
2.ToDoリストを作成する意味
3.タスクマネジメントに影響する要因
4.本書のねらい
1章:先延ばしとセルフコントロール
1.私たちはなぜ先延ばしをしてしまうのか
2.先延ばしとセルフコントロール
3.先延ばしを防ぐために
4.セルフコントロール喪失の予防
コラム① 先延ばしとADHD
2章:先延ばしは本当に悪いのか?
1.悪名高き先延ばし
2.先延ばしが創造性を高める
3.先延ばし研究からのパラダイムシフト
4.効率的なタスクマネジメントを考える
コラム②人は「役に立たないうえにつまらない」タスクを前倒しする
3章:前倒し概念の誕生
1.はじまりはバケツ運び実験
2.なぜ前倒しをするのか―CLEAR(認知的負荷軽減)仮説
3.前倒しへの注目
4.嫌いなタスクを最初にやるか、最後にやるか
5.前倒しは新しくない?
コラム③亀? 忍者? それとも浪費家?
4章:前倒しとセルフコントロール
1.前倒ししやすい人の特徴
2.前倒しとセルフコントロール
3.過剰な前倒しの弊害
コラム④「ビッグファイブ」質問紙をやってみよう!
5章:先延ばしと前倒しのルーツ
1.先延ばし傾向を測定する
2.先延ばしと前倒しのルーツ
3.先延ばしと前倒しの共通点と相違点
コラム⑤ ProcrastinationとPrecrastination―追われるな、追いかけろ!?
終章:ちょうどいい先延ばしと前倒しのみつけ方
1.先延ばしと前倒しのメリットとデメリット
2.適時のタスクマネジメント
3.新しい協働型ToDoリスト
「先延ばしが悪、前倒しが善」、は現代社会の思い込み!――だれもが経験したことがある「先延ばし」や「前倒し」を、最新の心理学研究を用いて解明するのが本書の目的である。前倒しが礼賛されがちな“タイパ社会”において、諸悪の根源のように扱われがちな先延ばしであるが、実は考える時間を十分に取れる、クリエイティビティが促進されるなどの多くの長所がある。一方、先延ばしも前倒しも「やり過ぎ」は問題を引き起こす。本書では、自分の傾向を把握して“ちょうどいいタスクマネジメント”を身につける方法や、「先延ばし派」と「前倒し派」が協力して仕事や家庭を回すコツを伝授。「適時のタスクマネジメント術」で人生が変わる!
【目次】
序章:タスクマネジメントとは何か
1.現代の日常はマルチタスク
2.ToDoリストを作成する意味
3.タスクマネジメントに影響する要因
4.本書のねらい
1章:先延ばしとセルフコントロール
1.私たちはなぜ先延ばしをしてしまうのか
2.先延ばしとセルフコントロール
3.先延ばしを防ぐために
4.セルフコントロール喪失の予防
コラム① 先延ばしとADHD
2章:先延ばしは本当に悪いのか?
1.悪名高き先延ばし
2.先延ばしが創造性を高める
3.先延ばし研究からのパラダイムシフト
4.効率的なタスクマネジメントを考える
コラム②人は「役に立たないうえにつまらない」タスクを前倒しする
3章:前倒し概念の誕生
1.はじまりはバケツ運び実験
2.なぜ前倒しをするのか―CLEAR(認知的負荷軽減)仮説
3.前倒しへの注目
4.嫌いなタスクを最初にやるか、最後にやるか
5.前倒しは新しくない?
コラム③亀? 忍者? それとも浪費家?
4章:前倒しとセルフコントロール
1.前倒ししやすい人の特徴
2.前倒しとセルフコントロール
3.過剰な前倒しの弊害
コラム④「ビッグファイブ」質問紙をやってみよう!
5章:先延ばしと前倒しのルーツ
1.先延ばし傾向を測定する
2.先延ばしと前倒しのルーツ
3.先延ばしと前倒しの共通点と相違点
コラム⑤ ProcrastinationとPrecrastination―追われるな、追いかけろ!?
終章:ちょうどいい先延ばしと前倒しのみつけ方
1.先延ばしと前倒しのメリットとデメリット
2.適時のタスクマネジメント
3.新しい協働型ToDoリスト
出版社より


商品の説明
著者について
1986年生まれ。2009年、広島大学総合科学部卒業。2014年、広島大学大学院総合科学研究科博士課程後期修了。博士(学術)。専門は社会心理学、教育心理学。大手前大学助教、講師等を経て、2021年より大阪電気通信大学准教授。セルフコントロールや学習支援を中心に、理論的・実践的な研究を行う。著書に『生徒指導・進路指導 (よくわかる!教職エクササイズ4)』(共編著、ミネルヴァ書房)がある。近年ではタスクマネジメントを視野に入れたセルフコントロールの研究も積極的に行っている。
・一見すると煽りが強いタイトルだが、中身は極めてまともな心理学の入門書
・日常の何気ない自身の行動を科学的に捉え直すきっかけになる(かも)
・このテーマで多様な人と論争してみたくなる内容
以下、雑感
どの節も心理学の知見に裏付けされた記述がびっしりで、新書にしては密度が濃い。
普段当たり前に感じていた自身の行動の原因や意味を、改めて考えさせられた。
日常の当たり前のことを、いかに表面的にしかとらえていなかったか、ハッとさせられるところも多くあった。
同時に、当たり前のことを科学的に見ることに慣れていない者には、自身の中の偏見や思い込みがいかに強固で、それがいかに学びの妨げになっているかを気づかせてくれる内容でもあったと思う。
序章・1章は、先延ばしに関する研究の詳細な説明や、基本的な対処方法について、やや丁寧すぎるくらいの記述があり、著者の心理学という学問に対する真摯さが随所に感じられる。
本著にある先延ばし研究の核心は、第2章にあったと思う。私はここだけ読んでも、買って損しない、と感じた。
特に目を引いたのが、好きなものと嫌いなものの食べる順番についての研究である。個人のセルフコントロールの高さ云々では説明できないこと、好きなものを最後まで残しておく人は、そうでない人よりネガティブな結果に対する感受性が高いという結論は、誰も気に留めない日常の行動の疑問に答えるという意味でも、非常に興味深い内容だった。
2章には著書のタイトルにある「なぜつまらないか」という問いについて、いくつかの根拠が記述されている。実のところ、この問い自体を直接的には検証してはいない(と見受けられる)。あくまでこのタイトル名は、著者のこれまでの研究を踏まえての率直な「本音」なのだろう(もしくは出版社側の戦略?)。だが、個人的には、この問い自体はある程度正しいと思う。特に、誰もやったことがない、答えがわかっていない課題(仕事)であれば、時間がかかるのは当たり前であるから、なおさらだろう。それが実際の仕事に期限が設定される理由の一つである。他方、設定される課題が、答えや結果がすでに分かっている課題や、提出者の訓練・学習の強度が高いルーチンワークであるならば、提出や完了が早くなるのは自然なことだろう。話は変わるが、私はそのような課題を本質的に「つまらない」と思っていて、著書で紹介されている研究をもとに考察するなら、課題が簡単で、面白みがない課題であれば、なおさら「つまらない」課題であるため、早く出そうが、遅く出そうが、中身は結局「つまらない」のではないか、とも思ってしまった。そう考えると、課題の難易度や質、さらには課題をこなす者の特徴・性質によって、その結論は変わると言えるかもしれない。
本著のテーマ(問い)は、分析の対象が日常のあらゆる行動に当てはまるものだからこそ、それに納得できるかどうかで論争になりやすいと思う(レビューのばらつきがまさにそれを体現している)。読者によっては、この論争的な問いに多少の好き嫌いがあるだろうが、この著書の根底には心理学という学問がある。人の行動を科学的に知りたい、考えてみたいと思う読者にぜひ薦めたい1冊である(ただし、読み通すにはかなりの根気が必要)。
ちなみに、第3章、第4章では「前倒し」について触れられているが、私が調べた限り「前倒し行動」について触れている日本での書籍は今のところ著書だけなので、「前倒し研究」の最先端に触れられるという意味でも一読の価値があると思う。
・日常の何気ない自身の行動を科学的に捉え直すきっかけになる(かも)
・このテーマで多様な人と論争してみたくなる内容
以下、雑感
どの節も心理学の知見に裏付けされた記述がびっしりで、新書にしては密度が濃い。
普段当たり前に感じていた自身の行動の原因や意味を、改めて考えさせられた。
日常の当たり前のことを、いかに表面的にしかとらえていなかったか、ハッとさせられるところも多くあった。
同時に、当たり前のことを科学的に見ることに慣れていない者には、自身の中の偏見や思い込みがいかに強固で、それがいかに学びの妨げになっているかを気づかせてくれる内容でもあったと思う。
序章・1章は、先延ばしに関する研究の詳細な説明や、基本的な対処方法について、やや丁寧すぎるくらいの記述があり、著者の心理学という学問に対する真摯さが随所に感じられる。
本著にある先延ばし研究の核心は、第2章にあったと思う。私はここだけ読んでも、買って損しない、と感じた。
特に目を引いたのが、好きなものと嫌いなものの食べる順番についての研究である。個人のセルフコントロールの高さ云々では説明できないこと、好きなものを最後まで残しておく人は、そうでない人よりネガティブな結果に対する感受性が高いという結論は、誰も気に留めない日常の行動の疑問に答えるという意味でも、非常に興味深い内容だった。
2章には著書のタイトルにある「なぜつまらないか」という問いについて、いくつかの根拠が記述されている。実のところ、この問い自体を直接的には検証してはいない(と見受けられる)。あくまでこのタイトル名は、著者のこれまでの研究を踏まえての率直な「本音」なのだろう(もしくは出版社側の戦略?)。だが、個人的には、この問い自体はある程度正しいと思う。特に、誰もやったことがない、答えがわかっていない課題(仕事)であれば、時間がかかるのは当たり前であるから、なおさらだろう。それが実際の仕事に期限が設定される理由の一つである。他方、設定される課題が、答えや結果がすでに分かっている課題や、提出者の訓練・学習の強度が高いルーチンワークであるならば、提出や完了が早くなるのは自然なことだろう。話は変わるが、私はそのような課題を本質的に「つまらない」と思っていて、著書で紹介されている研究をもとに考察するなら、課題が簡単で、面白みがない課題であれば、なおさら「つまらない」課題であるため、早く出そうが、遅く出そうが、中身は結局「つまらない」のではないか、とも思ってしまった。そう考えると、課題の難易度や質、さらには課題をこなす者の特徴・性質によって、その結論は変わると言えるかもしれない。
本著のテーマ(問い)は、分析の対象が日常のあらゆる行動に当てはまるものだからこそ、それに納得できるかどうかで論争になりやすいと思う(レビューのばらつきがまさにそれを体現している)。読者によっては、この論争的な問いに多少の好き嫌いがあるだろうが、この著書の根底には心理学という学問がある。人の行動を科学的に知りたい、考えてみたいと思う読者にぜひ薦めたい1冊である(ただし、読み通すにはかなりの根気が必要)。
ちなみに、第3章、第4章では「前倒し」について触れられているが、私が調べた限り「前倒し行動」について触れている日本での書籍は今のところ著書だけなので、「前倒し研究」の最先端に触れられるという意味でも一読の価値があると思う。
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2025年5月12日に日本でレビュー済みフォーマット: 新書タスクマネジメントの観点から先延ばしと前倒しを捉え、それぞれの特徴や長所および短所を、セルフコントロールという言葉を切り口に解説します。
なぜ先延ばしや前倒しが生じるのかというメカニズムや、先延ばししやすい人、前倒ししやすい人の特徴などを、これまでの研究や日常生活での例をもとにわかりやすく説明しています。
<先延ばししやすい人の特徴>
パーソナリティ
・完璧主義「絶対にいいものにしなくては!」
・衝動性「誘惑には弱いんだよなぁ」
・現在志向「明日のことより、今日の楽しさ!」
心理プロセス
・自信の低さ「うまくできないかも・・・」
・不安、抑うつ「失敗したらどうしよう」
・課題からの回避「まだやらなくてもいいや」
<前倒ししやすい人の特徴>
パーソナリティ
・誠実性「締め切りより早くやろう!」
・我慢強さ「やるべきタスクを優先!」
・未来志向「今日の楽しさより、明日の快適さ!」
心理プロセス
・自動的な反応、即時的な情報処理「とりあえずさっさととりかかるぞ!」
・認知的負荷の軽減「やらなくちゃいけないタスクを消去!」
・将来をふまえた意思決定「目標を決めて計画的に」
先延ばしというのは絶対に悪いことなのか? すべてのことを前倒して早く片付けることは本当に良いことばかりなのか?
人の日常に、そして社会に身近なものとして根付いている先延ばしと前倒しについて考えます。
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