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ドキュメント 強権の経済政策――官僚たちのアベノミクス2

2020年09月22日 08時57分29秒 | 社会・文化・政治・経済

ドキュメント 強権の経済政策

軽部 謙介 (著)

国家主導の賃上げや復興法人税の前倒し廃止、内閣人事局の発足、消費税引上げと見送りなどアベノミクスの展開では誰がどう動いていたのか。その際「官邸一強」という権力構造はどう影響したのか。政策誕生の舞台裏に迫った前作に続き、多数のキーマンへのインタビューや非公開資料をもとに、その内部の力学と変質の過程に迫る。

官邸官僚が主導する有様を描く

消費の拡大につながらなかった。
空虚な政権の本質を突いている。
「変節というのか、進化というのか」と問いかける。
安部内閣とその経済政策を振り返るうえで必読書である。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

軽部/謙介
ジャーナリスト・帝京大学経済学部教授。1955年東京都生まれ。1979年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。社会部、福岡支社、那覇支局、経済部、ワシントン特派員、経済部次長、ワシントン支局長、ニューヨーク総局長、編集局次長、解説委員長等を経て、2020年4月より現職。
著書『日米コメ交渉』(中公新書、農業ジャーナリスト賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
前作の『官僚たちのアベノミクス』と比べると、迫力に劣るというか、取材の踏み込みが足りなかったというのが正直なところだろうか。
本作も取材源を秘匿にしないと書けないような様々な証言を引きながら、安倍政権による賃上げ介入、消費増税延期、為替市場への介入などの各場面で起きていたことを描き出す。おそらく著者は記者として日本銀行や財務省に深く入り込んでいたようで、それらの組織側から見つめた安倍政権の挙動は類書にないぐらい克明に描けていると思うが、官邸側の動きは十分に追えていないという印象。この点、前作は政治家の動きも深く追えていたために迫力があったが、本作は官僚の動きを追うだけに終始してしまった感がある。

「この政権の経済政策は哲学とか社会構造の分析に基づくものなんかじゃない。いろいろ看板を付け替えるのは、政策が選挙戦略として使われているからなんだ。そう考えれば分かりやすい。」(本書172ページ)
これは「ある政府関係者」の言として紹介される一節だが、まさに選挙のための官邸による思い付き先行の政策に振り回され、そして、何となくかたちを作ることに汲々とする官僚の姿が描かれている。

そろそろ歴史的事実になりそうな事柄なので、こうして記録として残しておくことは意義深い。
 
 
1冊目に引き続き、2冊目も一日で読了。なるほどこういうことが舞台裏で起こっていたのかと、大変参考になりました。まあ、結局はアベノミクスの本質と課題は、以下に引用する幾つかの文章に尽きるのではと、強く感じました。

「日本だけ、物価の下落率以上に賃金が下がっている姿は異常である」(118頁)
「最賃を起点として全体が押し上げられるのではなく、最低賃金が引き上げられても全体が呼応しないため、低い賃金水準の割合が増えているわけだ。また賃金でも重要な指標となる実質賃金はほとんど上がっていない。」(169頁)
「この政権の経済政策は哲学とか社会構造の分析に基づくものなんかじゃない。いろいろ看板を付け替えるのは、政策が選挙戦略として使われているからなんだ。そう考えれば分かりやすい」(172頁、ある政府関係者の言)
「しかし、一つだけ確実なことがある。それはあれだけ「物価上昇率二%」にこだわっていたアベノミクスの生みの親である張本人、首相の安倍がすでに物価上昇に関心を失っているように見えることだ。・・・ これも変節というのか、進化というのか。変節であれば政治家ゆえに許されるのか。この点を大きな問題だとして取り上げる声は、あまり聞こえてこない。」(253~4頁)

何物も極めずに次から次へと駄策に飛びついて喰い散らかすだけの安倍の姿は、まるで出来の悪い受験生そのものである。それにしても、結局、成長から分配へと回帰してしまったかに見える政策動向や事後の分析・検証の欠如、「官邸一強」下で「ヒラメ」と化した役人たち(特に経産省系でしょうね)の卑屈さなど、本当に日本の先行きは暗いと思う。それにしても(決してその動きの全てを是認している訳ではありませんが)思わず財務省と日銀に親近感を覚えてしまった一書です。
 
 
この本は経済政策決定の舞台裏が良く分かる本です。特に「賃上げ介入」「消費税増税延期」について良く分かりました。筆者の本は「検証 経済失政」も読みましたが、内容がとても具体的で真に迫ってきます。これからもこの筆者の本を読みたいです。最後になりますが、素晴らしい本を出版してくれた出版社と筆者に深く感謝いたします。ありがとうございました。
 
 
安倍内閣の経済政策立案の内幕を描いており
気に入りました。
 
 
内容は平均を超えているが、著者のこれまでのバブル失政などの迫力満点の調査報道に触れてきたものには、今回の中身はアベノミクスの強権経済の中での日銀幹部を含む官僚たちの暗躍を浮かび上がらせるまで至っていない気がした。

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