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映画 サイレント・フォールアウト

2025年05月19日 12時20分57秒 | 社会・文化・政治・経済

1950~60年代に米国ネバダ州で実施された核実験による米大陸の放射能汚染を追ったドキュメンタリー映画。放射能汚染の実態を調べるため、女性たちが始めた「乳歯プロジェクト」を中心に取材し、研究者や被ばく者ら30人にインタビューを敢行。これまで多くのアメリカ人が知らなかった放射能汚染の現実を伝える。

予告編を見る:

監督 :

原題:Silent Fallout

2023年 /日本 /81分

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SILENT FALLOUT PROJECT 〜伊東英朗監督「サイレントフォールアウト」公式サイト
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静寂の中にある真実
60年前、女性たちと歯の抜けた子どもたちが、放射能から北米大陸から守った
5歳のエリックが電話を出ると「ジョン・ケネディだけどお母さんはいるかな?」という声が…
爆心地からわずか80キロ。ラスベガスは、キノコ雲ショーに沸いた
被曝を証明するため集まった乳歯は32万本に及んだ
ハチミツから他の食品に比べ100倍の放射性物質が検出された
 
■ 作品概要
1951年からアメリカ国内で始まった大気圏内核実験は100回。核実験によって北米大陸全域が放射能汚染。汚染したミルクを飲んだ全米の子どもたちが被曝。立ち上がった女性たちの行動が、ケネディ大統領を動かし、ついに大気圏内核実験が中止された。アメリカ国内で行われた828回の地下核実験が、そのまま地上で行われていたら…北米大陸は死のエリアになっていたかもしれない。
女性たちと歯の抜けた子どもたちが、放射能から北米大陸を救った奇跡の物語(事実)。
 
タイトル : SILENT FALLOUT
監督 : 伊東英朗
ナレーション : アレック・ボールドウィン(英語版)、加藤登紀子(日本語版)
公開日 : 2023年3月31日(日本) 2023年10月1日(アメリカ)
尺 : 73分
配給 : 自主上映形式
 
■ ストーリー
映画は、5章で構成。
 
第1章 【核実験による明らかな大陸汚染】
映画は、北西部ソルトレイクシティに住むメアリー・ディクソンの証言から始まる。さらに大気圏内核実験が100回行われたネバダ核実験場の風下地域、アメリカ政府が被曝の事実を認め補償しているセントジョージ、シーダーシティの被害者が、被曝の実態を語る。
 
第2章 【放射性汚染は、北米大陸全域に広がっていた】
1951年から62年にかけ、核実験ツーリズムで賑わったラスベガスからわずか80キロにあるネバダ核実験場を中心に、北米大陸全域に放射性物質が広がっていた。アメリカ原子力委員会は、被曝の実態を克明に記録。委員会は当初からすべてを知っていた。

第3章 【子どもたちを被曝から守りたい。女性たちが行動に出る】
舞台はセントルイス。核実験によって子どもたちが被曝している噂を聞いた女性たちが立ち上がる。子どもたちの被曝を証明すれば、核実験を止められるかもしれない。鍵となったのは「抜け落ちた子どもの歯」だった。セントルイスでは乳歯を提供したかつての子どもたちが証言する。医師であり母親でもあるルイーズ・ライスたちは、32万本の乳歯を収集。
 
第4章 【北米大陸を救った知られざるヒーローたち】
ある日、当時5歳だったルイーズ・ライスの息子、エリックは、電話をとった。受話器から聞こえたのは「ジョン・ケネディだけど、お母さんはいるかな?」女性たちが集めた乳歯は、子どもたちの被曝を証明。そのことを聞いたケネディ大統領によってアメリカ国内の大気圏内核実験は中止。アメリカ大陸は、放射能から救われた。
 
第5章 【現在も続く放射能汚染、そして世界で起こっている被曝事件】
地質学者ジェームズ・カスティ教授は、北米大陸の現代のハチミツに核実験由来の放射性物質が存在することを証明。さらに北米大陸の放射能汚染は、国内の核実験だけではなかったと語る。太平洋で行われた100回以上の核実験によって被曝した日本のマグロ船乗組員、そして、核実験でモルモットにされたイギリス軍兵士が、証言。
 
■ 監督・伊東英朗からのコメント
「『SILENT FALLOUT』は、核保有国アメリカの人たちに向けて作った映画です。アメリカ政府は、アメリカ国民が被曝していることを知りながら核実験を続けました。しかし、アメリカ国民は自らの命と引き換えに核兵器をもっていることを知らされていません。アメリカに住む人は、被曝者です。そのことを自覚し、被曝者として当事者意識をもたなければなりません。世界で起こっている被害は、遠い話ではないのです。
アメリカ政府は、核兵器によってアメリカを守ると言いますが、それはアメリカ国民の犠牲の上にあるのです。政府の言う「アメリカ」とは、一体何なのか? そのことを議論してほしい。自らの命と引き換えに核兵器をもっていることを知った上で、世界中の人が、改めて、核兵器の必要性を議論してほしいのです。それが僕の願いです。
 
■ 見どころ
長期にわたる取材:2004年春、事件に出会って20年、積み重ねた取材をもとに描かれる事実。
多くの証言者と機密文書:アメリカ、イギリス、日本を取材、被曝者、研究者による証言、そして長年に渡って収集した数千ページにわたる機密文書によって証明される事実。
国際的な評価:ハンプトン国際映画祭、セントルイス国際映画祭など、29に及ぶ国際映画祭で受賞、公式上映。
豪華なナレーション:英語版はアレック・ボールドウィン、日本語版は加藤登紀子が担当。

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SILENT FALLOUT

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SILENT FALLOUT

映画へのメッセージ
アレック・ボールドウィン

映画「SILENT FALLOUT」ナレーションをしてくれているハリウッド映画界で活躍する俳優アレック・ボールドウィンさんからメッセージが届きました。

「私は、1990年初頭から原子力発電所に反対する活動をしてきました。その活動は、常に、映画やテレビの知的なプレゼンテーションによって支えられています。『SILENT FALLOUT』は、最も重要な問題に光を当てることができる強力な映画制作の優れた例です。」

 

ジョセフ・マンガーノ

放射線・公衆衛生プロジェクト(Radiation and Public HealthProject)のエグゼクティブ・ディレクターで、『Radioactive Baby Teeth』の著者でもある、ジョセフ・マンガーノ氏よりメッセージをいただきました。

「静かなる放射性降下物:乳歯が語る」は、冷戦期の乳歯に蓄積された原爆実験の放射性降下物に関する歴史的研究を扱った初の映画です。この歯の研究結果はジョン・F・ケネディ大統領と米国上院に伝えられ、地上核実験禁止条約の成立を早めるのに役立ちました。この条約は多くの命を救いました。

この映画は、科学者と市民が協力して公共政策を強化する能力を描いています。この映画は歴史としてだけでなく、核実験の現在および将来の健康への脅威を認識する上でも重要です。米国、ロシア、中国の関係悪化により、各国は現在、実験再開に向けて実験施設を準備中です。これは数十年ぶりの実験となります。

 

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プロフィール

ドキュメンタリー映画監督/テレビディレクター 

 伊東英朗

1960年生まれ。幼稚園教諭から‘00年、テレビの世界に転じる。‘12年、‘15年、映画「X年後」シリーズを劇場公開。‘23年、映画「SILENT FALLOUT」を製作。国際ウラン映画祭(観客)、ハンプトン国際映画祭、セントルイス国際映画祭など、28の海外映画祭で評価。第71回芸術選奨 文部科学大臣賞、日本記者クラブ賞特別賞、ギャラクシー賞大賞、日本民間放送連盟賞最優秀賞などを受賞。著書に『放射線を浴びたX年後』(講談社)がある。

 


感想
放射能被害の広域、地球規模、長期化の恐ろしさを知りました。このような映画を日本の学校でも上映できるといいと思いました。


原発は日本の問題と思っていたけど、世界でも問題になっていること、苦しんでいる人がいることを知らず、原発の実験がこれほど行われていたとは知らなかった


ネバダやマーシャル諸島の汚染のことは何度か聞いていましたが、今回の映画で現実の深刻さを目の当たりにしてショックでした。アメリカでも日本でも多くの人に見てもらいたい説得力のある映画でした。


アメリカで被ばく問題と住民運動は全く知らなかった。知らないことが一番の問題だと感じた。


アメリカでも日本でも何の問題でも政府との闘いは長いなと思いました。
ソルトレイクシティの女性が死亡率の記事を集めていた場所を指して、「いっぱいあったのよ、でも憂鬱になってしまって」といった事を言ったのが印象的でした。子供の頃に周りにいた人たちがどんどん若くして亡くなって行く喪失感やなんで、という思いや色々つらい思いが積み重なって行ったんですね。


放射線のもたらすもの、を知らせる。このドキュメンタリー映像に感銘を受けました。知らない事のこわさ。
アメリカだけの問題ではない全人類に関わる事。あらためて考えさせられる事ばかりでした。
このような作品をありがとうございました。ショッキングな事ばかりですが自分事として考えていきたいです。

 

 

 

 

 


関係者が語る 私が見た公明党(下)

2025年05月17日 11時20分21秒 | 社会・文化・政治・経済

2020年11月13日

■ひとり親支援拡充■

困難抱える人 見逃さない情熱

公益財団法人「あすのば」代表理事 小河光治 氏

子どもの貧困の解決をめざし、「あすのば」は調査・提言や支援活動を続けています。公明党との関わりで最も印象に残っていることは、今年度から適用が始まった未婚のひとり親への寡婦(寡夫)控除です。

死別や離婚で、ひとり親となった家庭を対象とする所得税の優遇制度は当初、未婚は対象外でした。私たちは子どもの貧困を改善する観点から未婚も対象に加えるよう求めていました。

公明党が与党の税制調査会で粘り強く主張を続ける中、伝統的家族観を重視する自民党にも賛同が広がり、昨年末、未婚のひとり親へ適用が決まりました。「自分の存在を社会が認めてくれた」――。未婚のひとり親家庭の尊厳を守る結果となり喜び合いました。

手帳1ページ目 覚悟記した議員

公明党の議員からは「困難を抱えている人を救っていく」という熱い思いを感じます。交渉の矢面に立った国会議員は、自身の手帳の1ページ目に「未婚のひとり親税制」と書き、「今年こそ必ず決める」覚悟で臨んだと聞きました。そこまで本気で動いてくれていると、思わず目頭が熱くなったことを覚えています。

コロナ禍で経済的に困窮するひとり親家庭に1世帯5万円の臨時特別給付金が決定した時も、公明党の国会議員が丁寧に私たちの話を聞き、政府側と断続的な交渉をしてくれました。

各自治体の地方議員が未婚のひとり親の寡夫控除の「みなし適用」を広げてくれたように、良い事例を縦横に展開できるネットワークも公明党の魅力です。

分け隔てなく皆に光当てる 

私が強く感じている日本の課題は、支援の“崖”が多いことです。例えば「対象は住民税非課税世帯」といった区切りは典型的ですが、少しでも超えると支援から外れてしまう。支援対象となることで偏見や差別も生じやすくなります。崖を“スロープ”にするために一番いいのは全員に分け隔てなく光を当てることです。その意味で全国民への1人10万円の特別定額給付金は高く評価しています。

豊かとされる日本で、子どもの貧困率は7人に1人。自己責任論が根強く、困窮家庭への公的支援は十分とはいえません。しかし将来の日本を支えていくのは彼らです。

引き続き公明党には、どんな境遇の子どもであっても、社会全体で支える方向へ変革する先駆者であってもらいたい。勇敢に子どもたちの未来を切り開いてほしいと願っています。

■若年女性サポート■
他者の痛み“自分ごと”で行動

BONDプロジェクト代表 橘ジュン 氏

私たちは11年前から、貧困やDV(家庭内暴力)、性被害など、さまざまな原因で生きづらさを抱える10代、20代の女性を支える活動をしています。人生に絶望し、居場所を失って街をさまよう少女との出会いが活動の原点です。放っておけない、その一心で、手探りの状態から活動を始めて今に至ります。

4年前、公明党の地方議員を通じて初めて会った党の女性国会議員は、私たちの思いをすぐ理解してくれました。「目の前で困っている、その子を救いたいんですよね。一緒に考えましょう」と言ってくれたのです。他者の痛みを“自分ごと”として考え、分かってくれる人がいるのだと感動しました。

彼女変えた本気の言葉

現場の声を聴き、的確に考えてくれるリーダーが私たちには必要です。同情を寄せる人はたくさんいますが、公明党は行動に移します。政治の光が当たらない課題の実情を分かってくれているから、支援のあり方が大きく変わります。

家出した先で、友達の母親から売春を強要されていた未成年の女の子を保護した時のことです。彼女は最初、「嫌だけど、援助交際している」程度の説明しかできませんでした。よくよく話を聞くと、事態はもっと深刻でした。支援の現場では、当事者に直接会わなければ分からないことが多々あります。

私は公明党の女性国会議員に、彼女から直接話を聞いてもらいました。女の子に「信頼できる大人が、あなたの話を聞いてくれる」と知ってほしかったからです。議員は親身になって耳を傾け、「あなたは悪くない」と優しく声を掛けてくれました。

その思いが伝わり、彼女も心を開いて自分の気持ちを話してくれました。その後、彼女は自らの判断で親元に戻ります。本気で話を聞いてくれた議員と出会い、決断できたのです。

求めた施策 国の事業に

私たちが取り組む若年女性への夜間見回り型の支援や、居場所の確保などは、公明党の尽力で国のモデル事業になりました。東京都の施策は都議会公明党がバッチリ後押ししてくれました。SNS(会員制交流サイト)を活用した国の自殺防止対策も推進しています。公明党の議員は自分の実績と言わないので、陰で頑張ってくれたことを、後で知ることが多いです。

公明党は議員同士の団結が固く、人との出会いを大切にし、必ず行動で応えてくれます。これって、すごく難しいことです。弱い立場の人のために、これからも力を貸してほしいです。


私が知る公明党

2025年05月17日 11時11分18秒 | 社会・文化・政治・経済

私が知る公明党=上 公明新聞2025/04/30 3面より

未分類 / 2025年4月30日

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私が知る公明党=上
公明新聞2025/04/30 3面より

 立党精神「大衆とともに」を貫く公明党は、人々のさまざまな悩みや課題に向き合い、その解決に力を尽くしてきました。各分野の関係者が見てきた公明党の議員像などを証言してもらいました。(上中下3回で随時連載)

■日本病院前救急診療医学会理事長 今明秀氏

■(ドクターヘリ)“夢”にも思えた全国配備が実現。命を救うため、公明は滅私奉公で働いてくれる

 医師らが搭乗し傷病者の元へ急行するドクターヘリは、救命率を大いに高めます。しかし、2001年度に日本で本格運航が始まった当時、導入自治体はまだ5県。「欧州では普及しているのに…」。救急医として焦りを感じていました。

 そんな中、公明党が03年の衆院選の政策で“ヘリの全国配備”を掲げたことを知り、非常に驚きました。ただ、自治体の財政負担の重さなど、多くの課題があり、まるで“夢”のような構想にも思えました。

 翌04年、私は青森県八戸市立市民病院の救命救急センター所長に就任し、県内にヘリ導入をめざす活動を始めました。そこで強い“追い風”になったのが、公明党が尽力して07年に制定された特別措置法でした。

 国の財政支援を強化する法律です。その制定前後から、公明党の国会議員は私と意見交換を重ねてくれ、地元県議も強力に応援してくれました。その結果、09年3月、同病院で県内初の運航事業を開始できました。

 他の都道府県でも、公明議員はヘリ導入を積極的に後押ししてくれました。公明党は、目標の達成に向け議員がチーム力を発揮できるのが素晴らしい。約20年かかりましたが、現在、全都道府県に57機配備され、“夢”が形になりました。

■大都市では「カー」も

 一方、大都市部などは着陸地点が限られ、ヘリの有効性が生かし切れません。医師が車両に乗るドクターカーの活用が有効で、その支援拡充へ公明議員が国を動かそうとしてくれています。命を救うという「公」のため、公明党は「滅私奉公」で働いてくれている印象を強く受けます。

■全国夜間中学校研究会事務局長 竹島章好氏

■(夜間中学)公明議員はよく現場に足を運び、生徒たちに寄り添い、熱心に応援してくれている

 2020年の国勢調査で国内には何らかの事情で義務教育を修了していない人は約90万人おり、このうち約9万人が小学校を卒業できていないことが分かっています。さまざまな理由で学校に通えなかった人や不登校になった人、母国で十分に教育を受けられなかった人たちに、学齢を超えても義務教育を保障するのが夜間中学です。夜間中学を経て高校、大学への進学や就職を果たしたり、学び直しに喜びを見いだす人は少なくありません。

 私たち夜間中学の教員でつくる全国夜間中学校研究会は、教育研究活動とともに、「全ての人に義務教育を」と全国への夜間中学の設置を求めてきました。

■62校までに倍増

 大きく環境が変わったのは16年。公明党を含む超党派の夜間中学等義務教育拡充議員連盟の尽力により、長年求めていた夜間中学の設置などを自治体の責務とする「教育機会確保法」(議員立法)が制定されたことでした。さらに21年1月、公明議員の国会質問に対して菅義偉首相(当時)が「今後5年間で全ての都道府県、政令市に夜間中学校が少なくとも一つ設置されることをめざす」と答弁。国や自治体の動きが加速し、15年に全国で31校だった夜間中学校数は現在、41都道府県・政令市62校までに倍増しました。ただ、いまだに夜間中学の存在や実情は社会で十分知られていません。

 超党派議連の中で公明議員はよく現場に足を運び、さまざまな人生を歩んできた生徒一人一人の声に耳を傾け、寄り添って熱心に応援してくれています。

 夜間中学の設置状況は地域差が大きく、全ての地域で学び直しができる状況ではありません。今後も基本的人権の「義務教育を受ける権利」の保障へ、さらなる議論を期待しています。

 

私が知る公明党

2025年05月17日 11時08分57秒 | 社会・文化・政治・経済

2025年5月8日

私が知る公明党(中)

 

各分野の関係者が見てきた公明党の議員像などの証言を掲載する「私が知る公明党」。今回は、「困窮者らの支援」と低出生体重児の発達を記録できる「リトルベビーハンドブック」についてです。

困窮者らの支援

■認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長 大西連氏
社会福祉の充実へ、現場の声聴き、力を尽くす公明が与党にいる心強さは圧倒的

「もやい」は20年ほど前から、生活に困窮する人、社会から孤立する人らの支援に取り組んでいます。公明党には地方議員も含めて、社会福祉や社会保障に関心が深い議員が多く、フットワークがとても軽い。現場に足を運ぶだけでなく、東京都庁下での食料品配布などボランティア活動にも参加してくれています。

公明党は私たちの声を聴きながら、「孤独・孤立」の問題に国として恒久的に取り組むための「対策推進法」や、食品を困窮者に届けるフードバンクの支援も掲げた「食品ロス削減推進法」などを実現してくれました。さまざまな政策課題について私たちの意見を聴き、政府につないでくれることも少なくありません。

そうした中で感じるのが、公明党が与党であることの大きさです。与党にいながら、自民党とは違う立ち位置にいて、社会福祉の充実といったリベラルな政策の実現に力を尽くし、われわれの活動と対極にあるような政策には“ブレーキ役”を果たす。現場の声をよく聴いて発信し、政府や自民党に働き掛ける。そんな公明党が与党にいる心強さは、圧倒的だと思います。国会議員に加えて、地域に地方議員がいて、互いにつながるネットワークがよく機能していることも、他党にない強みだと感じます。

■合意つくる“ハブ”役

超党派で政策課題に取り組もうとする際、公明議員が、合意をつくり、具体的に前進させる“ハブ(軸)”の役割を担ってくれることが多くあります。国内外で“分断”をあおるような風潮が強くなる中、“二項対立”に陥って政策決定が危ぶまれる状況も懸念されるときだからこそ、公明党には、困っている人の側に立ちながら、合意を形成していく役割を今後も担っていくことを期待しています。

リトルベビーハンドブック

■国際母子手帳委員会事務局長 板東あけみ氏
地域を越えた議員同士の強力な連携が作成の動きを全国へと広げる大きな力に

国際母子手帳委員会は「誰一人取り残さない」母子健康手帳の実現をめざし活動しています。日本では近年、医療の進歩などを背景に、500グラム未満で生まれても救命できるケースが60%を超えるまでになっています。昨年度末までの母子健康手帳では成長曲線の体重の最低が1000グラムで、それ以下の体重では傷つく母親もいました。なお、今年度からは成長曲線の体重の最低が0グラムとなりました。

私は当事者の母親と一緒に、各地の自治体に母子健康手帳を補填するリトルべビーハンドブック作成を働き掛けてきました。その際、党派のこだわりなく、子育て支援に熱心な議員を探していくと、結果的に公明議員に行き着くことが多かったというのが率直な実感です。

■全都道府県で運用

昨年度末には全都道府県で運用されるまでに広がりましたが、多くのところで公明議員が力を貸して下さいました。公明議員は私たちの思いをくみ取りながら一生懸命、議会で質問して、行政にも働き掛けて下さるので、頼りになります。何より特長と言えるのが、全国の公明議員同士の強力な連携です。ハンドブック作成の動きを全国に広げる大きな力になりました。

例えば、当事者団体のない和歌山県での作成をどうしようかと悩んでいたところ、奈良県の公明議員が和歌山の公明議員を紹介してくれ、突破口が開かれたということがありました。また、国会でも公明議員が地方での取り組みを踏まえて質問し、国庫補助による作成への支援に国が動くことになりました。

リトルベビーハンドブック作成は“ゴール”でなく、母親たちの悩みや課題を解決していく“出発点”です。すでに各地の公明議員も尽力し、授乳室でも搾乳しやすい環境づくりが各地で進み始めていますが、今後も公明党には安心の子育てのために力を貸していただきたいです。


コメの集荷競争

2025年05月17日 11時06分02秒 | 社会・文化・政治・経済

3年契約でコメ買い取る仕組みを導入 集荷力強化 全農いわて

<iframe class="video-player" src="https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20250512/movie/6040025569_20250512181854.html?movie=false" width="360" height="202" allowfullscreen="allowfullscreen"></iframe>

コメの価格高騰が続き業者の間で集荷競争が激しくなるなか、JA全農いわては集荷力の強化につなげようと、ことしから再来年までの3年契約で各地のJAを通じて農家からコメを買い取る新たな仕組みを導入しました。

従来、JAを通じて流通するコメは県内に7つある地域JAが5月末までに農家と契約を結び、秋以降、全農いわてを通じて卸売業者などに販売されます。

収穫期を前にした9月上旬に、農家に前払いで支払う金額を概算金として決めています。

しかし、価格高騰が続くなか、民間の業者との間で集荷競争が激しさを増しています。

そこで全農いわてが導入した新たな仕組みでは、農家の希望に応じて3年契約でコメを各地の地域JAが買い取り、それを全農いわてが買い取ってすべて卸売業者などに販売します。

3年間、同じ量と価格で契約します。

これによりJAの集荷力の強化を図るとしています。

買い取り金額は非公表ですが、全農いわては今月末までに価格を確定し、来月前半には契約数量をまとめる方針です。

この仕組みを取り入れるかどうかは各地域JAの判断に委ねるということですが、すでに一部は導入の方向で検討しています。

全農いわては、ことしのコメの概算金についても、前倒しして8月中には提示する方針です。


コメ価格の高騰をどう見る

2025年05月17日 11時00分44秒 | 社会・文化・政治・経済

コメの価格が決まる仕組み 実は複雑?特殊なメカニズムに迫る

コメの価格が下がりません。

備蓄米が放出されているにもかかわらず、スーパーで販売されたコメの価格は上昇を続けています。なぜこんなことになっているのか。いろいろな要因を聞いたけど、どうもふに落ちないという方も多いと思います。

複数の要因がからみあっているのですが、背景の1つにはコメの価格が決まる仕組みが複雑なことも指摘されています。コメをめぐる制度や歴史をひもとき、価格の硬直性を少し深掘りしてみます。
(国際部デスク 豊永博隆)

15週連続の値上がり!

政府の備蓄米は過去2回の入札で21万トンが落札され、3月下旬から流通が始まっています。

それでもコメの価格は下がりません。
全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は4月13日までの1週間で5キロあたり4217円(税込み)で、15週連続で値上がりしています。

農林水産省によりますと1回目の入札で落札された14万トンあまりのうち、3月30日までにJAグループなどの集荷業者が倉庫から引き取った量は4071トン。
卸売業者から小売業者や外食業者など、消費の現場に届いた量はあわせて461トン。

全体の0.3%にとどまりました。

これについて農林水産省は、「通常のコメに加えて、備蓄米も流通することになるため、トラックの手配や精米の作業の調整などにはどうしても一定の時間がかかる」としています。

過去2回の入札はJAが9割落札

また、これまで地域によっては備蓄米が行き渡らないなどの不満の声もあがっていました。
1回目と2回目の入札ではいずれもJA全農が9割以上を落札していたことが明らかになりました。

農林水産省が備蓄米が転売されて価格がつり上がることを防ごうと条件を厳しくしていたため、卸売業者から取り引き実績のない中小の卸売業者や小売業者にコメが行き渡りにくいという現状がありました。

このため、4月23日から始まった備蓄米の3回目の入札では農林水産省は卸売業者どうしの備蓄米の売買を認めることにしています。

「流通の目詰まり」が少しでも解消し、備蓄米がこれまで届いていなかった地域にも届けば消費者の安心感につながり、いくらか価格低下に寄与する可能性があります。

さまざまな理由 どうもふに落ちない?

それにしてもなぜコメの価格がこうも下がらないのか。

これまでさまざまな要因が指摘されてきました。
コメを投機的に売り渋りしているとか、転売目的の「転売ヤー」のせいだといった指摘、さらにはインバウンド需要が増加してお米をたくさん食べたからなどの説明もありました。

農林水産省が2024年産のコメの生産量について過大に算定していて、想定よりも収穫できていないおそれがあるとの指摘も出ています。

不安心理から消費者が少しずつ買いだめすることで足せばかなりの需要が発生し、結果としてコメの生産量が追いつかない事態になっているのではないかとの分析もあります。

「なるほどそういうことなのか」と思う理由もあれば「本当にそうなの?」という理由もあり、モヤモヤ感が残る消費者も多いと思います。

コメの価格が決まる仕組み

コメの価格が下がらない背景の1つとしてコメの価格が決まる仕組みが複雑なことも実は指摘されています。

ふだん口にするコメですが、価格がどう決まるのか、そのメカニズムを知る機会はあまりないかもしれません。

レタスの場合は…

それを理解する前に一般的な野菜を例に価格の決定メカニズムを説明します。

例えばレタスでみると、価格は基本的に中央卸売市場で決まります。
人気があるもの=需要があるもの、あるいは供給が少ないものは価格が上がり、需要が少ないもの、あるいは供給が多いものは価格が下がります。

これが市場の原理です。

市場は透明性があり、売る側と買う側がそれぞれ公平に「売りたい」「買いたい」と価格を入れて値段が決まっていきます。

そして市場での価格情報が生産者である農家にダイレクトに伝わります。

高く売れる商品は何か、安くなってしまう商品は何かを作り手は市場での価格を通じて理解するわけです。

特殊な決定メカニズム

ところがコメには特殊な価格決定メカニズムがあります。
1.スーパーなどで小売業者が消費者に示す価格
2.集荷業者と卸売業者とのあいだで決める価格(相対取引)
3.JAが農家に提示する概算金

1のスーパーなど小売業者が消費者に示す価格はほかの農産物や製品と変わりません。

ところが2と3はコメの特殊な価格決定メカニズムです。

2の集荷業者が卸売業者とのあいだで決めるコメの価格というのは相対取引といって、売り手と買い手が直接交渉して決まる価格です。

直接交渉なので市場でオープンに取引されているわけではありません。

農林水産省がJAグループなどの報告をまとめて取引月の翌月に発表しています。

後にならないと価格が分かりません。

JAが農家に一時的に支払う概算金

 
JAが農家に一時的に支払う概算金
さらに概算金という制度の存在があります。

これはコメの刈り取り前7月ごろから9月ごろにJAがコメ農家に対して提示し、支払う金額のことです。

一時金なので仮渡金と呼ばれた時期もあります。

その年の生産見通しや販売見込みなどをもとにJAが「ことしのコメの価格はこれぐらいになりそうですよ」と提示し、一時金として支払います。

コメは多くの産地で1年1作であり、年間を通じて販売するため、販売価格が異なります。

協同組合で公平性を重視するJAとしては、農家のあいだでばらつきが出るのは好ましくないため、すべてを販売したあとに精算して分配する仕組みになっているわけです。

この概算金は集荷業者が卸売業者に示す価格にも少なからず影響するので、JAグループがコメの価格決定に大きな影響力を持っていることが分かると思います。

コメの価格が決まるメカニズムは硬直的です。

そして需給をすぐに反映しない、いったん価格が上がると下がりにくいということは指摘できると思います。

コメの価格はかつて国が決めていた

コメは日本人にとって欠かせない主食だったことから戦後、コメの価格は国が決めていました。

「食糧管理法」、食管法とも呼ばれる法律のもと、政府が米価審議会に諮問し、その答申に基づいて決めるという仕組みでした。
コメの価格はかつて国が決めていた
米価審議会(1995年6月)
この法律は1995年に廃止され、コメについては民間流通が基本となりました。

民間流通とはいえ、上述したとおり、オープンな「市場」がなかったため、コメの価格決定メカニズムは改革が遅れました。

コメの先物取引もいったんは廃止

厳密にいうと小さな「市場」は過去存在し、今、また設立され始めてはいます。

1つはコメの先物取引です。
2011年から大阪にある「大阪堂島商品取引所」がコメの先物取引を試験的にスタートしました。

試験的ではない本格的な取り引きへの移行を国に申請しましたが、2021年7月、農林水産省は認可せず、その後、取引は2023年に廃止されました。

私はこの認可をめぐる攻防が激しかったころ、大阪放送局のデスクと、経済部に移り、農林水産省を担当するデスクをしていたので、当時の動きをよく覚えていますが、農業界に「コメの先物は投機的なマネーゲームだ」と批判する人がいたこと、農林水産省は内々、先物の本格的な取り引きへの移行を認める方向で動き出したものの、自民党への調整や説得がうまくできず、頓挫した経緯があります。

農林水産省は名称を変更した「堂島取引所」に2024年、コメの先物取引を認可し、8月からコメの先物取引が始まっています。

また、もう1つ、需要と供給に基づいてオープンな形で価格を決める、コメの現物市場である「みらい米市場」が2023年に開設されました。

ただ、どちらも取引の量はまだ少なく、コメの価格形成をリードするには至っていないのが現状です。

今、必要なことは?

 
今、必要なことは?
酷暑の影響によるコメの品質低下と、2024年夏の南海トラフ地震臨時情報の発表で買いだめの動きから始まったコメの価格上昇。

さまざまな要因が重なって今も価格が上がり続けていますが、視野を広げて歴史を振り返ると、コメの複雑な制度が存在することに気付かされます。

必要な制度や仕組みに理解は示しつつも、消費者のニーズを的確にとらえ、価格に反映させる安定した市場とその仕組みづくりが必要であることを今、再認識させられました。
国際部デスク
豊永博隆
1995年入局
経済部 アメリカ総局(ニューヨーク) おはBizキャスター
大阪局デスクを経て現職
国際経済分野を担当

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南三陸町にモアイ像

2025年05月17日 10時52分47秒 | 社会・文化・政治・経済

モアイ像が南三陸町にやってきた!

2013年5月25日、イースター島(チリ共和国)から南三陸町に世界初となる本物のモアイ像が贈られました。

南三陸町に贈られたモアイ像には黒曜石とサンゴで作られた目が入っておりますが、目の入ったモアイ像は世界に2体しかない非常に貴重なものです。

モアイ像と南三陸町はどんな関係性?

この問いの答えは1960年に遡ります。

以下、南三陸町の情報誌より引用


きっかけは、1960年5月24日未明に、遠い遠い海の向こうから押し寄せて来たチリ地震津波
旧志津川町内だけで、41名が犠牲となり、312戸の家屋が流失、倒壊 653戸、半壊 364戸、浸水 566戸の壊滅的な被害を受けた。

この津波の記憶を未来に伝えようと、30年後の1990年に国鳥コンドルの碑がチリから贈られ、1991年には南三陸町がふるさと創生事業の一環としてチリ人彫刻家に依頼して創ったイースター島のモアイが、志津川地区の松原公園に設置された。

東日本大震災で公園は被災したが、流出したモアイ像の頭部は発見され、志津川高校の敷地内に移設された。

 

日智経済委員会チリ国内委員会が、南三陸町に新たなモアイ像を贈ろうと、イースター島の長老会に協力を求めた。
93 歳の老彫刻家マヌエル・トゥキ氏は、皆に呼びかけた。

「海に破壊された日本の町に、人々が再びそこで生きていきたいと思えるようなマナ(霊力)を与えるモアイを、贈れないのか? 私は息子とともに、日本の人たちが必要としているモアイを彫る!」長老会は大きな拍手で包まれた。

イースター島の石を使い彫られたモアイ像が、島外に出たことはない。
しかし、かつて倒れてバラバラになっていたモアイ像を、日本人がもとの姿に建て直す支援をしたことがあったことから、イースター島初のプロジェクトが始まった。

こうして息子のベネディクト・トゥキ氏は、石材を切り出して、親戚の彫刻家たちとともにモアイを制作。南三陸町を訪れたトゥキ氏は、設置されたモアイに白珊瑚と黒曜石で作られた眼を入れた。

眼が入ったモアイは、世界に2体しかない。

南三陸町を訪れ、津波の惨禍を目の当たりにしたトゥキ氏の目に涙があふれた。
「眼を入れるとマナ (霊力)がモアイに宿る。南三陸の悲しみを取り払い復興を見守る存在になることを願っている」と彼は語った。

 

チリも南三陸町も、豊かな海から糧を得、その恩恵に感謝している。そして、長い歴史の中で、いとも簡単に人間の命や暮らしを奪う海の恐ろしさを熟知している。

地震を感じなくても、津波は地球の反対側から襲ってくることがある。双方の地は長い時間の中で大自然の災禍を体験し、人間がどう自然と共生すべきかを学んできた。

そして、どんな困難にぶつかったとしても、勇気を持って立ち向かう心意気を勝ちとってきた。

「モアイ」は、イースター島のラパヌイ語で「未来に生きる」という意味。

門外不出の大切なものを贈ってくれたチリ共和国とイースター島の人たち、そして高さ3メートル重さ2トンの巨大な像を、はるかな島から運び設置するために力を尽くしてくれた企業や多くの人たちの気持ちが、南三陸のモアイには込められている。

未来に生きる南三陸町の人々を、遠い未来まで勇気づけ、見守り続けることだろう。

 

 

南三陸町のモアイスポット

南三陸町には、イースター島から世界で初めて贈呈された本物のモアイ像を始め、モアイスポットがあります。南三陸町に足を運んだ際には、モアイスポットを制覇してみては!?

▶2025最新!南三陸町モアイスポットのまとめ記事はこちら

うみべの広場に立つ本物のモアイ像

イースター島から南三陸町に贈呈された本物のモアイ像と震災前からのモアイ像2体が、2023年7月「うみべの広場」に移設され、志津川湾を背に展示されております。

【所在地】
〒986-0743 宮城県本吉郡南三陸町志津川字南町68

館下橋の欄干に立つ2体のモアイ像

南三陸町の入谷地区(西部)にある館下橋の欄干に、2体のモアイ像が展示されております。

【所在地】
南三陸町入谷地区、国道398号線途中(入谷サン直売所付近)

志津川湾に浮かぶモアイ岩

 

 

 

 

 


 

 

 

 


分断を超える「文学」の力

2025年05月16日 10時53分41秒 | 社会・文化・政治・経済

ボストン大学 アニータ・パターソン教授

身近な<一人>こそ偉大な存在である―アメリカ・ルネサンスを代表するエマソンやソローの叫びは、仏法の思想にも通じている。

当時、エマソンを中心に「超絶主義」という新しい哲学・文学運動が起こり、彼らは人間生命に偉大な力が内在するという理念に着目していた。

悲嘆の中で、文学は人生にいかなる影響を与えるのか。アメリカ・ルネサンスの思想に、普遍的な自我の肯定があり、人間の精神を再生させる英知の源があり、人生の意味を教えてくれた。

それは、仏教の思想にも通じる。

他者に紛動されず、自己に忠実に主体的生きることだ。

それが、仏教の「大我」の生き方である。

エマソンは、社会の風潮に流されない人が偉大であると訴え、「汝自身を信頼せよ」という自己信頼を教えた。

一方、は、仏教の「大我」の生き方を通して、一人の人間が偉大な人格を備え、自己自身を仏法の指導者主体的に生きられることに言及した。

文学は人生の意味を見いだし、人間として再生する力を与えてくれた。

仏法の指導者は、大乗仏教の視点から、分断と対立の原因が思想や精神性の乱れにあると指摘した。

そうした状況を乗り越えるためには、人間自身の「内なる変革」が重要であり、生命の内奥に広がる<宇宙的大我>にいざなう翼こそ「文学の力」であると述べて。

さらに、それぞれの国が誇る文学に学び、感動を分かち合う内なる変革と平和を育む「心の対話」に連動すると強調した。

文学との触れ合いは、民族や文化、宗教などの違いを超えた<開かれた対話>であると表現した。

文学は、私たちを隔てる、さまざまな違いを乗り越えるのを助けてくれる。

文学と対話は、苦難の時こそ、価値を発揮する。

それは、人生の意味をもう一度生み出し、他者とのより良い関係を築き、自身の存在を高めてくれる。

そして、人生と社会に希望を感じることができれば、世界は私たちにとって、意味あるものとして輝き始める。

そうすれば、どんなに困難な状況に陥ったとしても、自分と他者のために貢献したいと思える一人一人に成長していけるはずだ。

今。世界には「希望」が欠けている。

人々は、民主主義への信頼を失っているように見える。

今日の世界では、独善的な「怒り」と「党派性」によって、異なる人同士が対話することが難しくなってます。

怒り、そして対話の欠如が、現代社会の至る所で深刻な影響を与えている。

「希望」とは決意である。

人間にとって最も重要な決意である。

希望はすべてを変革する。

希望こそ、理想を実現するための行動力の源泉である。

「夢」を失わないかぎり「希望」は生き続ける。

平和といっても、決して日常を離れたところにあるものではない。

一人ひとり現実の「生活」の中に、また「生命」と「人生」に、どう平和の種を植え、育てていくか。

ここに、永続的な平和への堅実な前進がある。


三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実

2025年05月15日 07時53分26秒 | 社会・文化・政治・経済

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

5月15日午前6~CSテレビのチャンネルNECOで観た。

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

CAST
  • 本人三島由紀夫
  • 本人芥正彦
  • 本人木村修
  • 本人橋爪大三郎
  • 本人篠原裕
  • 本人宮澤章友
  • 本人原昭弘
  • 本人椎根和
  • 本人清水寛
  • 本人小川邦雄
  • 本人平野啓一郎
  • 本人内田樹
  • 本人小熊英二
  • 本人瀬戸内寂聴
  • 本人東出昌大
ジャンル
  • ドキュメンタリー

©2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

美と共同体と東大闘争 (角川文庫) 文庫 – 2000/7/21

 
 

三島 由紀夫

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威。

1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。

主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

 

闘い

当時の闘うもの達の記録。DVDそのままの言霊の飛び交いが、スリリング。

 

記録として出すなら表現も当時のまま出すべき。

文庫化にあたっての編集部からの追記に「今日の人権擁護の見地に照らして不適切と思われる箇所は、著作権継承者の了解を得て、"(中略)"とした」旨が明記されているが、ドキュメンタリーとしては越権行為だと強く思った。
星5でなく4の理由はそれのみ。

内容についての感想は、「これは、討論でない以前に“v.s.”ですらない」。
冒頭p16での三島由紀夫の言葉にもあるように、「お互いに相手を理解しないことを前提としながら」言葉をぶつけ合った過程に過ぎないと感じた。

そこいらの映画やドラマを軽く凌駕しているっ!

「三島由紀夫VS東大全共闘」は、昭和44年の三島と学生の討論
会。右翼対左翼、ラジカル対リベラル、アバンゲール対アプレゲー
ルである。
その内容には多くの論評がある。田原総一朗は「反米と自立で一致
していた」と説く。(3月22日、朝日新聞)
討論で天皇についての意見は交わされたが、アメリカという言葉は
出てこない。それでも反米や反被植民思想からの自律という点に両
者が向いている事が読みとれる。
確実に言える事は50年経って日本人は退化したという事。ネット
やスマホの発達で「言葉」はあらゆる世界で飛び交っているが、果
たしてそれらは有効か。
百戦錬磨の三島由紀夫に二十代の若者が挑んだ。樺美智子の本気度
は、その日東大900番教室に居た団塊の世代に伝播していた。
三島も嗜む剣道には合議という制度がある。双方の疑わしき点を相
談して確認する。勝負ではあるが、制度の上で合議しようという意
志があった。三島は「熱情」と言った。
シナリオのないドラマは、そこいらの映画やドラマを軽く凌駕して
いた。

学生たちの名前が

学生たちの名前がアルファベットで表記されているのはなぜ?
映像作品をみていれば大体はわかるのだが。
内容は東大生が自分の今の心持ちをしっかりと受け止めてくれる大人に分かってほしかったんだと思う。
内容が相当脱線してもしっかり受け止めている三島由紀夫は素晴らしい!

 

東大全共闘の貴重な記録


断片的に上がっている物を見たに過ぎず、全体像を把握したく、読んでみることにしました。

確かに、一瞥しただけでは東大生が主張することはへりくつではありますが、しかし、彼らの主張やその考え方をひねり出した過程はまさしく”サイエンス”そのものであったと感じます。

自分はなぜ東大全共闘が三島をわざわざ呼びつけたのか、最初は不思議でたまりませんでした。
しかし読み進めて行くにつれて、彼らは自分たちの対局にいる三島のサイエンスと、自分たちが持っているサイエンスを戦わせて、三島を下すことで自分たちの主張が正しかったことを証明したかったのだと、この本を読んで理解することが出来ました。

学生からは、今の日本人がなくした何かを含んだ、熱い言葉が飛び出します。
その主張の理解が出来ないのは、自分に文化系の教養がない故だと理解していますが、お互いの主張をあのようなレベルでぶつけ合えた当時の学生には、ただ感心するばかりです。

日本人はディスカッションが苦手だと言われて久しいですが、彼らに関してはそれは嘘だと、感じることが出来ます。

彼らのしたことのすべては肯定しないけれども、少なくとも何も考えず単位取得マシーンと化した大学生よりかは、ずいぶんとまっとうな生き方をした物だと感じています。そして向こう見ずかもしれないけれども、自分たちの力で現状を変えようとする意思を行動に変えた。その行動は過激で、今ではテロリストと揶揄されるが、日本が変わるはずだと信じて立ち上がったその行動力は、何があっても認めたいと思います。

今は学生から思考力・行動力を奪う教育が横行しています。
この本を読めば、大学生が本当に身につけなければならない力とは何か、そしてなぜ当時の日本がアメリカのGDPの75%に迫るまでに躍進できたのか、理解することが出来ます。

極右、極左の違いこそあれ、全共闘と三島は同じ方向を見ていたのだと分かります。
彼らの行動があのような荒削りの力任せではなかったのなら、きっとただの事件で終わることなく、この国の大学制度や考え方を変えることが出来たのだろうと思います。

彼らの起こしたことをただの馬鹿騒ぎで終わらせるのはもったいない。そう考えさせられる本でした。

 

三島由紀夫 美と共同体と東大闘争


三島が全共闘と対峙しようとしたことに、彼の真摯さを感じる

読後の第一感想は、東大全共闘の頭デッカチで難しいことばかり言うことに辟易したことだ。

三島は、真摯に向き合いながらも内心は彼らを見下していたように思う。

自分は50代で、一応大学出で、今まで500冊くらいは読んできたと思うが、

東大全共闘の主張はさっぱりわからないし、なので心にも響かなかった。

時間とか空間とか、異常にこだわるし。

青二才の戯言にしか聞こえない。読む前は期待していたのだが。

賢い人は、難しい事を分かりやすく言い、愚かな人は、簡単なことを難しく言う、言葉を思い出した。

テレビのインタビューとかで、農作業のおばあさんが『わしゃ難しい事はいっちょんわからん』

と言ったりするのを目にすることがあるが、そちらの方が余程賢くて健全だと思えた。

三島の遺言的な言葉は『若きサムライ達へ』の方がより直接的だと思う。

 

三島とは何者だったのか

 この討論会の1年数か月後のある日の午後の地下鉄東西線の乗客を思い出す。ほとんどの乗客がその日の夕刊を手にしていたからだ。2・3人の紙面を覗いてみるとそこには三島の首がポロリと床に落ちていた。大学に行ってみると法大全共闘の学生が「三島由紀夫糾弾集会」を開いていた。1970年11月25日のことだった。
 さて、1969年5月13日、東大全共闘との討論会では「諸君の熱情は信じます。ほかのものは一切信じないとしても、これだけは信じる」と告げ、壇を後にした。

この時は、翌年の11月25日の事件を予感もできなかった。


 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 


夜のパン屋

2025年05月14日 08時41分03秒 | 社会・文化・政治・経済
 

夜にだけあらわれる、小さなクリーム色のワゴン。さまざまなパン屋さんで売れ残りそうなパンを集め、販売している「夜のパン屋さん」です。フードロスを減らしながら、雇用機会をも創出するための取り組みとして、料理家の枝元なほみさんがスタートしました。そんな枝元さんは、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表を務めるなど、「食」や「働き方」の社会課題に大きな関心を寄せているといいます。

「AIがどれだけ進歩したってかぼちゃひとつつくれないでしょ?」と微笑む枝元さんにとって、食べることの根幹とは何なのでしょうか? 夜のパン屋さんに込めた想いや、今後目指していきたい社会のかたち、そしてその先にある「気持ちの豊かさ」について伺います。

 

「施し」ではなく「仕事」を提供する、対等な仕組み

画像: 「施し」ではなく「仕事」を提供する、対等な仕組み
――まずは、枝元さんが社会問題への取り組みに携わりはじめたきっかけを伺いたいです。

枝元:ホームレス状態にあったり、生活に困窮している方たちの社会復帰を支援するため、雑誌の発行・路上販売をしている「ビッグイシュー」という団体の活動がきっかけでした。駅前などで「ビッグイシュー」という雑誌を掲げている人を、見たことありませんか? 20年ほど前、日本でのビッグイシューの取り組みが始まったころにたまたま新聞でその紹介を読み、活動に共感して、料理の連載記事を担当させてもらうようになったんです。以降ずっと、団体のさまざまな取り組みに関わっています。
※The BigIssue Japan…市民が市民自身で仕事、「働く場」をつくる試み。生活困窮者の救済(チャリティ)ではなく、仕事を提供し自立を応援する事業。原型は1991年にロンドンで生まれた。

――枝元さんも、ビッグイシューが主に携わる「貧困」や「雇用」の問題について思うところがあったということですか。

枝元:そうですね。雇用にまつわる課題意識は、自分の日常でも感じることがあったんです。

たとえば、テレビのお仕事でギャラがとても安かったとき。「料理を仕事として認めていただけていない気がします」と正直に伝えたら「“交通費”という名目ならギャラが増やせる」と言われたんです。それじゃ結局、“料理の仕事”の価値は低いままですよね。公共施設での料理教室の講師を担当したときもギャラは安くって、だけど「せっかく頼んでくれたのだから一肌脱ごう」と思って伺ったら、会場がやけに立派で……ガラス張りのエレベーターや大きな噴水のあるロビーを見て憤りを感じました。

対して私は、たくさんの食材を買い込み、自分でタクシーで運び、すっかり赤字でした。労働に対して使われないお金の存在に、やるせなくなりました。日本社会は、人がどんな思いで仕事をしているか、そこにどんな価値があるかをきちんと理解していないんじゃないかしら、と感じていたんです。

そうした中で、私にとってはビッグイシューの取り組みはとてもすっきりしていて、わかりやすいものでした。困っている人に施しをするのではなく、仕事をつくって、賃金を得る機会を提供する。雑誌価格の450円を、半分は販売した方に、半分は雑誌制作費に回すというのも明快です。そのとてもわかりやすくてフラットな関係を応援したいし、自分も輪の中に入りたいと思いました。
※2025年3月現在、500円となっています。

 

雇用創出とフードロスに向き合う「夜のパン屋さん」

画像: ▲取材当時使用されていたワゴン。2025年3月現在は別の車で活動されています。

▲取材当時使用されていたワゴン。2025年3月現在は別の車で活動されています。

――2009年に立ち上げられた認定NPO法人ビッグイシュー基金では、理事に就任し、その後共同代表に。2020年には、フードトラックでパンを販売する「夜のパン屋さん」のプロジェクトを始められましたね。これはどのような取り組みですか?

枝元:さまざまなパン屋さんから、営業時間内に売りきれなさそうなパンをお預かりし、ほぼ値段を下げることなく販売するお店。同時にピックアップや販売などの雇用を生みだしています。
パンの売値はパン屋さんご自身に決めていただき、その半値から60%の価格でおろしていただいており、その差額でギャラを生み出すというサイクルです。ロスになるかもしれないパンを救出する気軽な窓口にもなっています。

立ち上げのきっかけは、ビッグイシュー基金で「衣食住」にまつわる新たなプロジェクトを考えていたとき、ある篤志家さんから「循環する使い方をしてください」と寄付を託されたこと。
北海道・帯広で6店舗を展開するパン屋の「満寿屋」さんが、各店舗で売れ残った商品を本店に集め、夜に販売しているというお話もヒントになりました。東京ならたくさんのパン屋さんがあるし、さまざまなお店でロスになるかもしれないパンを集めて、いい仕組みがつくれるかもしれないと思いたんです。

――まさに「食」にまつわる、循環するプロジェクトですね。

枝元:たとえばね、パンを焼くのは簡単じゃないし向き不向きもあります。職人さんをイチから育てるっていうのは大変なことです。けれど、集めて売る仕組みなら、私たちみんなで挑戦できるんじゃないかなって思いました。

オープンは2020年10月16日。世界食糧デーであり、本来なら東京オリンピックが終わってみんなが少し気落ちしているであろうタイミングを狙っていました。

画像: 雇用創出とフードロスに向き合う「夜のパン屋さん」
――思い描いた仕組みを実現するには、多くのパン屋さんの協力も必要ですよね。そのあたりの相談や準備は、スムーズでしたか?

枝元:もうね、本当に大変でした! 売れ残ったパンを買い取らせてくださるお店が、なかなか見つからなかったんです。企画書と名刺と自分の著書を持って、毎日いろんなパン屋さんを回ったけれど、企画を説明しても店主さんからは「考えとくわ」って言われて、そのまま撃沈。
私ね、営業マンが仕事の終わったあとに「ビールでも飲まなきゃやってらんねぇよ!」っていう気持ちがそのときとってもよくわかりました!

そんな撃沈続きだったから、最初に承諾してもらえたときには涙が流れました。そうやって地道に提携先を増やしてきて、いまは約20店舗が協力してくださっています。夜のパン屋さん自体も田町駅前からはじまって、飯田橋、神楽坂と3店舗に増えました。
※2025年3月現在、田町、神楽坂、大手町、三軒茶屋の4店舗で営業。飯田橋はクローズしています。

――店舗が増えれば、雇用も自然と増えていく。いい流れですね。

枝元:でも、必要なのは1店舗につき販売が3人、ピックアップが数人程度……ビッグイシューの販売みたいに、まだ多くの人に働いてもらうことはできません。提携しているパン屋さんに売れ残りが出なかった日は、ピックアップに行くはずだった人の仕事がなくなります。コロナが落ち着いてお客様が戻ってきたのか、近ごろはとくにそういう日が増えました。最近は原材料費の高騰によって廃業なさるお店もあったりして……運営を安定させるのは難しいなと感じています。

 

“夜パン”は非効率なお店。でもきっと、これからの本流になる

画像1: “夜パン”は非効率なお店。でもきっと、これからの本流になる
――ただ、料理家の枝元さんが、フードロスと絡めながら雇用創出に取り組むということには大きな意義があるように思えます。ご自身ではどのように考えていましたか?

枝元:料理の仕事を数十年続けてきた私ですが、もう「早い・安い・うまい・見た目がいい」みたいなことばっかり追求する時代じゃないよなぁって。未来を生きる子どもたちにちゃんとした「食」と「食の仕組み」を手渡せるように行動しなくちゃと思うようになったんです。

――「食の全般に関わること」とは、とても大きなテーマです。

枝元:私は、食べることに対してラディカル(根源的)でいたかったんです。食べることの原点って、毎日見栄えのする料理をつくることじゃなくて、人を飢えさせないっていうこと。誰もが飢えずに食べられる仕組みづくりのひとつとして、夜のパン屋さんを思いつきました。

さまざまな格差がこれだけ広がっているなかで、そこに目を向けないまま、社会がこれまでのように右肩上がりの成長を続けていくのはもう難しいでしょって思います。急坂のような発展を続けるために、斜面をギリギリで登っていく人とずり落ちてしまう人に分かれるんじゃなくて、社会をフラットな輪っか状にすればいい。みんながぐるぐる循環するような仕組みに移行していくべき時期が来ている、と思うんです。

画像2: “夜パン”は非効率なお店。でもきっと、これからの本流になる
――夜のパン屋さんは、まさにその仕組みを体現していますね。売上を最大化するためにぎりぎりまで各店にパンを残し、売れなかったときに捨ててしまうのではなく、残ったパンを循環させることで、雇用やお金も回していく……。

枝元:そうなんです! いちパン屋さんとしては超弱小もいいところなんだけど、これから本流になっていく仕組みだと鼻息荒く思っています。だって、1袋500円のパンを各250~300円で10袋買い取って、全部売り切っても5000円。売上の2500円をスタッフで分けたら、何も残りません。全然儲からない(苦笑)。でもこれだけ多くのメディアに取材をしていただけるのは、みんな心のどこかで“利益だけを追求するんじゃない、こんな仕組みがいまの世の中に必要だ”って思っているからかもしれませんよね。

ただ、いまのままではビジネスとして成立しないし、私も生活のためにもお給料をいただきたいから(笑)、やり方は改良していかなくちゃいけませんね。

だけど「いま良しとされている“効率的”な価値観」からずり落ちている感じが、最高で最強だなとも思うんです。効率が悪いからこそ、得られるものがあるんですよね。

「私たち、めんどくさいことやっているでしょー! でもねー、それが最強なのよー!」って胸を張ってるみたいな。

――立ち上げから2年が経ち、いま、どのような手ごたえを感じていらっしゃいますか?
画像3: “夜パン”は非効率なお店。でもきっと、これからの本流になる

枝元:じわじわとお客様の認知が上がっていて、取り組みを説明しなくても「テレビで見たわよ」「知ってるよ」と、やさしいお声をかけていただけるようになりました。パン屋さんのいいところは、お互いに頭であれこれ難しく考えなくても「おいしそうね」「おいしいんですよ」という会話で、やわらかくつながっていけるところ。これは、食べ物が真ん中にあるからこその“温かさ”だと思います。

夜のパン屋さんでレスキューしたパンは、この2年間で6万個を超えました。数字で聞くと、案外大きな成果を出せているなとうれしくなります。だけど、それだけじゃない。関わる人たちがみんなお店を自分事ととらえ、いきいきと働いてくれるようにもなっていて……そういう言葉にならない価値にも明かりをともしていけることこそ、夜のパン屋さんの意義です。だから数字にとらわれすぎず、自分たちや周りのやさしい変化に目を向けていきたいと思っています。

 

「シェア」や「利他」の精神で、できることを一歩ずつ

画像1: 「シェア」や「利他」の精神で、できることを一歩ずつ
――2022年末には、築150年の古民家にて「夜パンカフェ ※」もオープンされました。どうしてカフェ業態にチャレンジされたのでしょうか?

※夜パンカフェ…隔月第二土曜日開催し、カフェの他に、夜のパン屋さんやマルシェなども出店。“次に来る誰かの” 食事代などを先払いできる「お福わけ券」というしくみを用意するなど、金銭的に余裕がない人でも利用しやすいように工夫されているカフェ(2025年4月修正)

枝元:きっかけは、夜のパン屋さんにシングルマザーのスタッフがいたことです。彼女は3人の子どもがいるから、夜働くのは難しい。そして、私たちがときどきポップアップカフェを開催している古民家は、彼女にとって通いやすい位置にある……だったら昼間、そこでお店をやったらいいんじゃないかと考えました。

夜のパン屋さんでは初期投資をかけないためにフードトラックを選んだけれど、カフェは私たちの取り組みに賛同してくださる企業がサポートしてくださって、実現にこぎつけたんです。

――パン屋さんには、食べ物を扱うからこその温かさがありました。カフェには、それに加えてどんな良さがありますか?

枝元:カフェは、誰でもゆったりとした時間を過ごしてもらえる空間です。パン屋さんでは買ってくださる方の接客が中心になってしまうけれど、カフェの縁側なら、どなたにでも座っていただける。ひらかれた空間だから、私自身も訪れるたびに「ここならずっといられる」「ずっといていい場所だ」と感じます。とっても素敵な場所なんですよ。

空間づくりへの想いは、「ビッグイシュー」で関わったイベント「大人食堂」などが原体験になっています。日払いの仕事がなくなって困っている方に食事を提供するのですが、あるとき厨房が本当に忙しく、お渡しするおにぎりを握る暇もないことがありました。でも、炊飯器をあけたら、もわんと立ちのぼった湯気の向こうにうれしそうなみんなの顔が見えて。おにぎりをつくるのが大変だったら、そうやって炊き立てのごはんをわかちあうだけでいいんですよね。食事をいっしょに楽しんだり、おしゃべりをしたり、ちょっとずつしかないおいしいものを分け合ったり、それでいい。そういう「シェア」や「利他」の精神が、夜パンカフェにもあるんです。

――次に来る誰かの食事代を先払いしておく「お福わけ券」といった制度もあるんですよね。まさに、シェアや利他の精神です。
画像2: 「シェア」や「利他」の精神で、できることを一歩ずつ

枝元:路上生活者支援に取り組む、つくろい東京ファンドさんが、「カフェ潮の路」でされていた仕組みに教わりました。お金や余裕があるかないかって時の運だから、なきゃないで仕方ない。だから、夜パンカフェはお金がなくても平気でいられる場にしたいと思っているのですが、やっぱり引け目を感じてしまう方が多いので、お福わけ券が活躍してくれます。凛とした佇まいで「お金はありません。この券でお願いします」と言ってきてくれるお客様を見たとき、まさに夜パンカフェではこういうことがやりたかったんだと、うれしくなりました。

――最後に、これからやりたいことや目標を聞かせてください。

枝元:私はビッグイシュー基金の共同代表ですが、与えられている役割は「考えすぎずに好き勝手言う係」だと思っています。だから、夜のパン屋さんをはじめるときにも「これはビジネスとして成り立つのか」「どう実現すればいいか」の具体的な部分はあまり考えていなかったし、だいたい見切り発車なんですね。でもこのままで、これからも困っている人の助けになるさまざまなことに取り組んでいきたい。活動をはじめてから何年も経つのに雇用や貧困、フードロスといった社会の課題は本当に解決に向かっているとはいいがたいけれど……それでも、ちょっとずつは変わっていると感じられるから、ネガティブにならないように。しぶとくいこうと思っています。

 
画像: 「夜のパン屋さん」の原点にある想い。考案者の枝元なほみさんが提唱する、循環する社会をつくる「第一歩」
枝元なほみ

横浜市生まれ。劇団の役者兼料理主任、無国籍レストランのシェフなどを経て、料理研究家としてテレビや雑誌などで活躍を続ける。一方で、農業支援活動団体である「チームむかご」を立ち上げたり、NPO法人「ビッグイシュー基金」の共同代表を務め、雑誌「ビッグイシュー日本版」では連載も。2020年に「夜のパン屋さん」をスタートする。著書は、『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)など多数。

取材・執筆:菅原 さくら
編集:山口 真央
写真:梶 礼哉


引きこもり146万人

2025年05月14日 08時23分57秒 | 社会・文化・政治・経済

「ひきこもり」推計146万人 主な理由“コロナ流行”内閣府調査

外出をほとんどしない状態が長期間続くいわゆる「ひきこもり」の人は、15歳から64歳までの年齢層の2%余りにあたる推計146万人に上ることが、内閣府が去年11月に行ったアンケート調査でわかりました。ひきこもりになった主な理由の1つとして、およそ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげ、コロナ禍での社会環境の変化が背景にあることをうかがわせる結果となりました。

内閣府は、いわゆる「ひきこもり」の実態を把握するため、去年11月、全国の10歳から69歳の合わせて3万人を対象にアンケート調査を行い、1万3769人から回答を得ました。

このうち「生産年齢人口」にあたる15歳から64歳までの年齢層では、広い意味で「ひきこもり」と定義している「趣味の用事のときだけ外出する」や「自室からほとんど出ない」などの状態が6か月以上続いている人は、2%余りで、推計でおよそ146万人に上るとしています。

年齢層別に見ますと、15歳から39歳の子ども・若者層では、7年前に公表された調査の1.57%から2.05%に、40歳から64歳の中高年層では、4年前に公表された調査の1.45%から2.02%に増えていました。

また、ひきこもりになった主な理由の1つとして、およそ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげ、コロナ禍での社会環境の変化が背景にあることがをうかがわせる結果となりました。

40歳から64歳まで 女性が半数を上回る

これまで内閣府では、子ども・若者層と、中高年層で別々に調査を行ってきましたが、今回は対象の年齢や人数を大幅に拡大して同時に調べる調査となり、さまざまな「ひきこもり」の実態が浮き彫りになっています。

このうち性別では、4年前に公表された40歳から64歳までの調査では男性が4分の3以上を占めていましたが、今回の調査では、同じ40歳から64歳まででは、女性が52.3%と半数を上回り、15歳から39歳でも45.1%となっていました。

これまで主に男性の問題と受けとめられることも多かった「ひきこもり」が、女性に広く存在していることを示す結果となっています。

また、安心できる「今の居場所」を尋ねる質問では、15歳から39歳の「ひきこもり」の人は、そうでない人に比べて、家庭や学校、それに職場などのリアルな場を居場所と思う割合が低く、その一方でSNSなどのインターネット空間を居場所と捉える割合が高くなっていました。

このほか、「どのような人や場所なら相談したいと思うか」を尋ねた質問では、「誰にも相談したくない」と答えた「ひきこもり」の人は、15歳から39歳で22.9%、40歳から64歳で23.3%に上りました。

その上で、その理由を尋ねたところ、「相談しても解決できないと思うから」と答える人がいずれの年齢層でも半数を超えて最も多く、相談や支援のあり方に課題があることをうかがわせる結果となっています。

池上理事「自分事と受け止めて」

内閣府が4年ぶりに行った「ひきこもり」の実態調査について、「ひきこもり」の人の家族などで作る「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の池上正樹理事は、「50人に1人がひきこもり状態と推計されたが、実態はもっと多いと思っている。コロナ禍の影響が初めてデータで示されたが、もともと生きづらさを感じていた人たちが、より一層、精神的に不安定になったと考えられるほか、弱い立場にいる人が雇用を切られるなどして諦めてしまったことなどが考えられる」と述べました。

また、男性だけでなく、女性にも「ひきこもり」の問題が広がっていることについて「日本の伝統的な価値観の中で、女性は夢や希望を追い求めようとしても、家事や育児などで男性よりも高いハードルを課せられて、諦めてきた人が多くいる。そうした人たちが自分の状況を認識し、存在が顕在化してきたのではないか」という認識を示しました。

さらに「相談しても解決できない」と考える「ひきこもり」の人が半数を超えていることについて、「解決型の支援や個人を社会に適用させる支援のあり方に限界があると感じている。一人ひとりに寄り添って信頼関係を作り、悩み事を聞くなかで、社会につながるきっかけを作る支援が求められている。自宅以外に安心して声を上げられる場をネット空間などにいかに作っていくかが大事になっている」と述べたうえで、「ひきこもりは遠い世界の問題ではなく、自分や家族もなるかもしれない自分事と受け止めてほしい」と訴えました。

宗教の役割・意義

2025年05月13日 14時38分07秒 | 社会・文化・政治・経済

〈インタビュー〉 現代社会における宗教の役割2022年12月2日

  • 東京工業大学教授 弓山達也さん

 あらためて宗教の存在意義が問われる昨今の状況と、今後の展望について、弓山達也氏に話を聞いた。(「第三文明」12月号から)
 

1963年、奈良市生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。大正大学大学院文学研究科宗教学専攻博士課程満期退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、大正大学人間学部教授を経て、2015年から現職。専門は宗教社会学。現代世界の宗教性・霊性について研究する傍らで、財団法人やNPOの活動を通じ、学生と市民をつなぐネットワークを模索している。著書に『天啓のゆくえ』(日本地域社会研究所)、共著に『平成論「生きづらさ」の30年を考える』など多数。
1963年、奈良市生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。大正大学大学院文学研究科宗教学専攻博士課程満期退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、大正大学人間学部教授を経て、2015年から現職。専門は宗教社会学。現代世界の宗教性・霊性について研究する傍らで、財団法人やNPOの活動を通じ、学生と市民をつなぐネットワークを模索している。著書に『天啓のゆくえ』(日本地域社会研究所)、共著に『平成論「生きづらさ」の30年を考える』など多数。
現れてくる宗教的なもの

 旧統一教会の問題については、かつてのオウム真理教の問題との類似性が指摘されています。宗教団体の反社会性という点では同じですが、少なくともアカデミズム(学術界)の受け止め方はずいぶん違っているように思います。

 オウムの事件が起きたとき、アカデミズムの人々は宗教団体であるがゆえに起きた出来事だと捉えました。だからこそ、宗教に関するさまざまな議論が巻き起こったわけです。
 他方、今般の旧統一教会の問題は、お布施の強要という会員に対する抑圧・収奪の体制や、自民党議員と教団との関係性ばかりが指摘され、宗教的な側面はほとんどクローズアップされていません。それにもかかわらず、世間には「宗教=危険」という漠然とした印象が蔓延しています。

 明らかに一線を越えている旧統一教会が、社会的な非難や指弾を受けるのは当然です。
 しかし、その一例をもって宗教全般が危険だと捉えたり、宗教団体の政治参加を問題視したりというのは、社会にとって極めて危うい議論です。旧統一教会の問題を契機に社会から宗教を排除しようとする空気感がありますが、宗教が存在しない社会というのは、図書館や書店、映画館といった施設がない地域のようなもので、文化的に貧しいと言わざるを得ません。

 興味深い現象があります。それは、仮に社会から宗教コミュニティーがなくなったり、宗教を排除したりしたとしても、結局のところは“宗教的なもの”が現れてくるという現象です。私はこれまで東日本大震災の被災地に定期的に足を運んできました。少なくない被災地域では、未曽有の災害によって宗教コミュニティーが失われてしまったものの、時間がたち、地元住民や移住者、ボランティアの人たちによる新たなコミュニティーが成立してくると、「祭をやろう」という話が出てくるのです。

 こんなケースもあります。地域から疎外された水俣病事件の被害者らは、かつては「神や仏などあるものか」と思っていました。それがやがて「本願の会」という患者団体ができ、その活動のなかで野仏をつくったりしているのです。東日本大震災の被災地にしろ、水俣にしろ、宗教団体をつくったり、宗教的なスローガンを掲げたりはしていないものの、救いを求めるなかで結果的に宗教的な表現形態を取っているのです。

 他方、共産主義もまた“宗教的なもの”の一つです。
 善悪の階級闘争の末にプロレタリア独裁を目指すという思想については、多くの宗教学者が宗教的な構造だと指摘しています。共産主義の特徴の一つに、人類の歴史や世界を意味づけ、維持したり変革したりすることがあります。これは長らく宗教が担ってきた役割であり、そうした宗教の枠組みからどのように自由になるかという問題意識から生まれたのが共産主義なのです。

 裏を返せば、宗教の側は共産主義から学習すべき点があると言えます。ユートピアを目指しながらも、結局は人々を抑圧する国家をつくってしまった共産主義。それと同じことが宗教においても起き得るということです。その一例が、旧統一教会の問題です。

教団に所属することの重要性

 私は宗教には本来的に三つの役割があると考えています。
 第一に、人々をつなぎ合わせ社会を統合すること。第二に、人々に善悪の基準や倫理観を与えること。第三に、人々に意味や価値、使命感を与えることです。

 近代以前はこの三つの役割を宗教が果たすことによって、人類の文化が育まれてきました。それが近代以降には、教育や医療、福祉、政治などの専門化が進み、宗教が担ってきた役割が分散します。唯一、代替不可能だったのは死の問題です。死に直面したときにその意味を見いだしたり、苦しみを和らげたり、死後について思いを巡らしたりといったことだけは、今なお宗教の重要な役割となっています。

 専門化は一面では人々の生活を豊かにしましたが、一方で宗教との距離が開いてしまったために多くの人々は生活や人生に意味を見いだせなくなってしまいました。とはいえ、先述したように宗教がなくなろうとも“宗教的なもの”は再び現れてくるという見方もあります。
 かつての私は、どちらかといえば後者の考え方を持っており、宗教教団はなくなったとしても、人々は宗教的に生きていけると思っていました。ちょうど15年ほど前に、占いやパワースポットなどのスピリチュアリティのブームが起きた頃のことです。

 しかし、今では考えを改めています。この15年間の研究のなかで、教団の重要性に気がつきました。定量的な共同調査を行ってみたところ、教団に属さずにスピリチュアルな生き方をしている人々のなかには、幸福度が低かったり、他者と共生していく志向性が弱かったりするケースが多いことが明らかになったのです。

 あるいは、終末期の患者に対する宗教者によるスピリチュアル・ケアを見ていると、宗教者が醸し出す力や背後にある教団の力、そのさらに背後にある神仏の働きを感じることが少なくありません。病院に来る宗教者は、服装などの見た目は一般の人と何ら変わりません。患者との対話の内容も、基本は傾聴に徹して何か特別なことを言っているわけではない。それでも、患者は癒やされるのです。

 同じようなことは、創価学会の座談会に参加したときにも体験しました。法衣を着ているわけではない市井の人々にもかかわらず、会員の方々が語る言葉には、不思議と信仰を持たない人とは明らかに違う何かがあるのです。安定的で独善に陥らない信仰のためには、やはり教団に所属するということが大切なのだと思います。

宗教が持つ両側面

 今や世界中の津々浦々に創価学会の会館が存在しています。10年以上前に東京・巣鴨にある戸田記念講堂で絵本の展覧会が開催された折には、私も娘と一緒に足を運びました。今後はますます地域の文化施設としての役割を担っていただきたいと思っています。
 地域に開かれた会館という点では、東日本大震災がその可能性を示してくれた部分があります。岩手県・宮城県・福島県の沿岸部の会館は、会員のみならず地域の人々にとって一時的な避難場所となったのです。

 創価学会が支持する公明党は、連立与党としての経験が20年を超え、多くの地方議会でも重要な立場にあります。その点、創価学会には一宗教団体という枠には収まらない社会的な責任が生じていると言えます。セキュリティーの問題などはあるにせよ、学会の会館が地域の人々を主役にする場として機能すれば、学会にとっても地域にとっても良いはずです。

 宗教団体として、これまで以上に社会に開いていくためには、宗教間の対話も大切です。創価学会のような圧倒的な規模の宗教団体ともなれば、すでに他教団とは比較にならないほど社会的なつながりを持っています。
 ゆえに、これまでは他宗教と歩調を合わせなくともやってこられた。ただ、これからの宗教教団は今まで以上に社会的責任を求められます。圧倒的な規模を誇るのであればなおさら、宗教界の横綱として宗教間の対話を先導してもらいたいと思っています。
 オウム真理教や旧統一教会に象徴されるように、宗教は常に危険性をはらんでいます。しかし同時に、宗教には人々を豊かにさせる面もある。

 先の共同調査では、宗教に心寄せる度合いが高い人ほど主観的な幸福度が高く、図書館や美術館、音楽のコンサートなどに行く頻度も多いということがわかりました。教団に属せば、定期的な集まりやお布施もある。それを負担だと見る人もいるかもしれません。
 しかし、それらのことを補ってあまりある喜びや豊かな人間関係を得られるのです。ゆえに、危険性だけを取り上げて恐れるのではなく、危険性を熟知した上で関わっていくこと。すなわち宗教リテラシーが大切なのです。

 人々の宗教リテラシーを高めるためには、宗教文化教育が必要不可欠です。日本の教育現場では宗教そのものがタブー視されていますが、私は小中学校でも宗教の基本的なことは教えられるし、教えるべきだと思っています。
 宗教戦争を起こすのも宗教だし、この国を代表する美術作品を生み出してきたのも宗教です。
 今後は、そうした宗教が持つ両側面を語っていくことが重要だと思います。

 

 

 

 

 


コメ価格「評価する水準にない」 農相

2025年05月13日 12時50分23秒 | 社会・文化・政治・経済

備蓄米の流通加速へ


5/13(火) 11:01配信 共同通信


 江藤拓農相は13日の閣議後記者会見で、コメの店頭価格が18週ぶりに値下がりに転じたことを歓迎した上で「消費者の方々が大いに評価する水準にはない」と述べ、備蓄米の流通を加速させる考えを示した。
なおも前年同期に比べ約2倍の高値圏で推移しているためだ。  
今月に予定する備蓄米の4回目の入札については、時期や数量に言及しなかった。  
2回目までの入札で大半を落札した全国農業協同組合連合会(JA全農)の出荷は8日までに32%(6万3千トン)にとどまっており、農林水産省は流通拡大に向け条件緩和を検討している。政府が同量のコメを原則1年以内に買い戻す条件が入札参加のハードルになっているとの指摘がある。
 林芳正官房長官は13日の記者会見で「上昇した価格を落ち着かせることができるようにしっかりと対応策を検討したい」と語った。  
農水省は12日、全国のスーパーで4月28日~5月4日に販売されたコメ5キロ当たりの平均価格は前週比19円安の4214円だったと発表した。


女性差別撤廃条例批准から40年

2025年05月13日 12時13分01秒 | 社会・文化・政治・経済

〈社会・文化〉 女性差別撤廃条約批准から40年 勧告が映し出す日本の課題 清水奈名子2025年5月13日

1985 年の批准から約 40 年、我が国は、女子差別撤廃条約を一つの重要な拠り 所とし、法律上の及び実質的な差別の撤廃を目指して、男女共同参画のための取 組を進めてきました

女性に対するあらゆる差別の撤廃及び男女共同参画社会 の早期の実現に向けて、今後も女子差別撤廃委員会とともに歩みを進めていき ます。

 
日本の女性政策を審査する国連女性差別撤廃委員会の会合(スイス・ジュネーブ、2024年10月)=共同
日本の女性政策を審査する国連女性差別撤廃委員会の会合(スイス・ジュネーブ、2024年10月)=共同

 2025年は、日本が女性差別撤廃条約を批准してから40年の節目に当たる年である。40年が経過した現在、日本における女性の権利をめぐる問題状況は改善したと言える…

 

女子差別撤廃条約
第9回日本政府報告代表団長 冒頭ステートメント
【冒頭の挨拶】
女子差別撤廃委員会委員の皆様、本日、第9回日本政府報告に対する審査のた
めにお集まりいただき、誠にありがとうございます。世界中の女性に対する差別
の撤廃のため、日々精力的に活動されている女子差別撤廃委員会の活動に敬意
を表します。
また、委員会では秋月弘子委員が副委員長として活躍なさっており、我が国と
しても大変誇りに思っております。日本から本審査のためにお越しいただいた
市民社会の皆様にも日々の多大なる貢献に感謝をお伝えします。
1985 年の批准から約 40 年、我が国は、女子差別撤廃条約を一つの重要な拠り
所とし、法律上の及び実質的な差別の撤廃を目指して、男女共同参画のための取
組を進めてきました。女性に対するあらゆる差別の撤廃及び男女共同参画社会
の早期の実現に向けて、今後も女子差別撤廃委員会とともに歩みを進めていき
ます。
【男女共同参画行政の推進体制】
まず、我が国の男女共同参画行政の基礎について説明いたします。
ご存じのとおり、男女共同参画はほとんどすべての政策領域に関わると言っ
ても過言ではございません。そのため日本政府においては、女性に対する暴力、
雇用差別、政策・方針決定過程への女性の参画といった個別の政策課題について
各省庁において分担して取り組みつつ、各省庁の施策の統一を図るための総合
調整や基本計画の作成・推進などは内閣府が担うなど、全省庁的な推進体制を取
っています。
また、内閣府に置かれ、関係する大臣と有識者からなる男女共同参画会議にお
いて、男女共同参画基本計画について議論するとともに、関連する事項について
の調査審議、基本計画等の施策の実施状況の監視等を行っています。そして、内
閣に置かれ総理大臣を含む全ての国務大臣によって構成される男女共同参画推
進本部及びすべての女性が輝く社会づくり本部では、基本計画の達成に向けた
具体的な施策のパッケージを、「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨
太の方針)」として毎年策定しています。
さらに、国内本部機構の強化の観点から、独立行政法人国立女性教育会館につ
いて、文部科学省から内閣府に主管を移管したうえで、男女共同参画に関する新
たな中核的組織として機能強化・整備することを検討していることもお伝えで
きます。
2

【前回最終見解フォローアップ事項の進捗】
続いて、「第7回及び第8回報告に対する女子差別撤廃委員会最終見解」での
委員会からの勧告のうち、特にフォローアップを求められていた事項について、
第9回報告以降の進捗について報告します。
勧告 13(a)のうち、結婚開始年齢については民法改正案を国会に提出したこと
を、「最終見解に対する日本政府コメント」にて報告していましたが、当該改正
案は 2018 年6月に成立し、2022 年4月から施行されています。
また、女性の再婚禁止期間の廃止については、第9回報告にてその在り方を検
討する必要があると述べていたところ、2022 年 12 月にその全ての廃止を含む改
正民法が成立、2024 年4月に施行されました。
さらに、結婚に際する旧姓の維持の選択という点については、婚姻後も仕事を
続ける女性が大半となっていることなどを背景に、婚姻前の氏を引き続き使え
ないことが婚姻後の生活の支障になっているとの声がある一方、家族が同氏と
なることで夫婦・家族の一体感が生まれ、子の利益に資するとの声などもあり、
国民の間に様々な意見があります。政府としては、選択的夫婦別氏制度の導入は、
社会全体における家族の在り方に関係する重要な問題であり、幅広い国民の理
解を得る必要があると考えています。この考えの下、第5次基本計画において国
民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、
更なる検討を進めることとしています。
同時に政府として、婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることの
ないよう、旧姓の通称としての使用拡大に向けて取り組んできたところであり、
現在までに例えば、マイナンバーカード、パスポート、不動産登記等において旧
姓併記が可能となっています。また、内閣府のホームページにて各種国家資格、
免許等における旧姓使用の現状等について公表するなど周知を図っています。
勧告 21(d)(e)については、外国人やルーツが外国であること、アイヌの人々
であること、部落差別に関すること等を理由とした社会的困難を抱えている場
合、固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見を背景に、更に複合的な困難
を抱えることがあると認識しています。第5次基本計画においてもこの観点を
前提に、差別は許されないとの理念を盛り込んだ、ヘイトスピーチ解消法、部落
差別解消推進法、アイヌ施策推進法に基づいた施策に取り組んでいるほか、人権
教育・啓発を総合的かつ計画的に推進するための「人権教育・啓発に関する基本
計画」においても、女性、部落差別、アイヌの人々、外国人を人権課題として掲
げ、各種人権教育・啓発を推進しております。
なお、この「人権教育・啓発に関する基本計画」については、社会情勢の変化
や国際的潮流の動向を踏まえつつ、既存の人権課題とともに、新たな人権課題に
3
適切に対応した効果的な人権教育・人権啓発活動を推進することができるよう、
現在、内容の見直しを進めていることを付言します。
ここからは、第9回報告以降の我が国における女性差別撤廃に係る進捗につ
いて説明いたします。
【女性に対する暴力】
まず、女性に対する暴力の根絶に向けて大きな前進がありました。
第9回報告のとおり、勧告 23(a)(b)(c)に関わり、2017 年の刑法の改正によっ
て、強姦罪の対象を拡張し、罪名を強制性交等罪に変更、法定刑の引上げ、監護
者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設、性犯罪の非親告罪化を行いました。
今回の報告では、更なる刑法の改正についてお伝えすることができます。2023
年の改正により、強制性交等罪を不同意性交等罪、強制わいせつ罪を不同意わい
せつ罪と改め、これらの要件を明確化しました。また、「婚姻関係の有無にかか
わらず」これらの罪が成立することを条文上明確にしたことを強調致します。加
えて、①いわゆる性交同意年齢の 13 歳未満から 16 歳未満への引き上げ、②わ
いせつ目的での 16 歳未満の者への面会要求等の犯罪化、③性犯罪の公訴時効期
間の延長も実現しました。
さらに、この3年間だけでも、いわゆる撮影罪を新設する法律(性的姿態撮影
等処罰法)、従事者の性犯罪の事実を確認する仕組みを含め、学校設置者等及び
民間教育保育等事業者による児童対象性暴力の防止のための措置について定め
た法律(こども性暴力防止法)、性行為映像制作物への出演による被害の防止を
図る法律(AV出演被害防止・救済法)をはじめとする多くの法律が新たに成立
したことは、性暴力の根絶に向けた日本政府の着実な努力を示すものです。
配偶者やパートナー間の暴力の防止に向けた進展もありました。既に述べた
不同意性交等罪等が配偶者間においても成立することの明確化に加え、2023 年
の関連法の改正により、身体的な暴力だけでなく、精神面での危害を加える非身
体的な行為の場合にも、裁判所が接近等の禁止を命ずる命令を発令できるよう
にしました。こうした裁判所が発令する保護命令は、同性パートナー間の暴力に
も適用されてきたことの周知も進めています。
日本国政府の努力は、法整備だけではありません。女性に対する暴力、ジェン
ダーに基づく暴力を根絶するための政策を推進してきました。例えば、全閣僚で
構成する本部において毎年策定する「女性活躍・男女共同参画の重点方針」の中
で、性犯罪・性暴力への対策、パートナー間の暴力、ストーカー、セクシュアル
ハラスメントへの対策をアップデートし、関係府省が取組を進めてきました。
これらの暴力の被害者への支援も強化しています。2022 年、暴力被害を含む
困難な問題を抱える女性たちが最適な支援を受けられるよう、その発見、相談、
4
心身の健康の回復や自立して生活するための援助等の多様な支援の包括的な提
供を定めた新たな法律(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)が成立
し、被害者支援の枠組みに法的根拠を与えたことを紹介させていただきます。
勧告 25 については、第9回報告では 2019 年成立の旧優生保護法一時金支給
法に基づき、強制不妊手術等を受けた障害を持つ方たちに対し 320 万円の一時
金を支給していることを報告していました。その後も対応を進め、2024 年5月
末現在で、累計 1,110 件(内女性は 801 人)が受給者として認定されています。
さらに旧優生保護法の規定に基づいて不妊手術を受けた方々等が、国に対し、国
家賠償法に基づく損害賠償などを請求した訴訟について、2024 年7月には最高
裁判所は、旧優生保護法の不妊手術について定めた規定が違憲である旨の判決
を言い渡しました。この判決を踏まえ、総理大臣が、原告団等との面会において、
同法を執行してきた立場として、政府を代表して謝罪を表明しています。さらに、
2024 年9月 30 日に、原告団・弁護団・支援団体との間で、旧優生保護法問題の
全面的な解決を目指す「基本合意書」を締結しました。本合意書をもとに、恒久
対策等の施策の具体化などのため、継続的・定期的な協議の場を開催していく予
定です。なお、旧優生保護法に関する新たな補償の仕組みについては、超党派議
員連盟で議論いただいた結果、2024 年 10 月 8 日に、「旧優生保護法に基づく優
生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案」が国会で可
決・成立しました。政府としては、本法案が制定されるに至った経緯や趣旨も十
分に踏まえ、補償金等の支給を着実に行っていきます。
また、勧告 27 については、2005 年、国際組織犯罪防止条約及び同条約の補足
議定書である人身取引議定書を締結することにつき国会で承認され、2017 年、
国際組織犯罪防止条約の締結に必要な国内担保法が成立・施行されたことに伴
い、我が国は、同条約と共に同議定書を締結しています。
【政治的及び公的活動への参画】
続いて、政治的及び公的活動への参画に係る進捗についてご報告申し上げま
す。前回審査では勧告 31(a)(b)(c)において、指導的地位への女性の参画に関し
て勧告を受けております。これに関してはすでに第9回報告でも一部は報告し
ていますが、2021 年6月に政治分野における男女共同参画推進法が改正され、
政治分野における男女共同参画の推進に取り組む関係機関が明示されたほか、
政党その他の政治団体の取組の促進が図られるとともに、国・地方公共団体の責
務等の強化や、新たにセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント等へ
の対応が義務的施策に追加される等の国・地方公共団体の施策の強化が図られ
ました。政府においては、同法の趣旨に沿って、候補者に占める女性の割合が高
まるよう、第5次基本計画に基づき、衆議院議員及び参議院議員の候補者に占め
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る女性の割合を 2025 年までに 35%とすることを努力目標として念頭に置きな
がら、政党に対し、自主的な取組の実施を要請しています。さらに、その取組状
況の調査も実施し、各政党が候補者に占める女性の割合について目標を定めて
いることなどを把握しております。
また、行政分野や司法分野など公的活動においても、女性の参画拡大を目指し、
様々な取組を行っております。例えば、女性活躍推進法では、国及び地方公共団
体に対し、それぞれの機関における女性の活躍状況の把握・分析とともに、その
結果を踏まえた目標設定、目標達成に向けた取組を内容とする行動計画の策定、
女性の活躍状況に関する情報公表等を義務付けています。さらに、公表内容につ
いては、一覧性・検索性を確保したウェブサイトの整備を通じて「見える化」を
図っております。これらの取組を通じて、第5次基本計画で定めた行政分野・司
法分野における女性参画に関する成果目標達成に向けて一歩一歩、着実に前進
しています。
【結婚・家族関係】
続いて、結婚・家族関係に係る進捗についてご報告申し上げます。前回審査で
は勧告 49(a)(b)(c)において、夫婦間の財産分与、親権、養育権、養育費の支払
い等について勧告を受けておりました。第9回報告では、関連法令の改正により、
離婚した者が債務者である元配偶者の財産に関する情報を第三者から取得する
ことができる手続きを新設したことを報告しております。これにより、養育費の
支払いが滞っている場合における債務者の財産に対する強制執行の実効性が高
まりました。
その後、希望する全てのひとり親世帯が養育費を受領できるようにすること
が重要との認識の下、2031 年に、全体の受領率(養育費の取決めの有無にかか
わらない受領率)を 40%とし、養育費の取決めをしている場合の受領率を 70%
とすること、2023 年4月に政府目標として策定・公表しております。
さらに、2024 年5月の民法改正により、父母間での取決めがなくとも子と同
居する親が別居する親に一定額の養育費を請求できる「法定養育費制度」が創設
されたほか、養育費や財産分与の算定の基礎となる情報収集のための手続きが
拡充されました。また、この改正では、父母の離婚等に直面する子の利益を確保
するため、子の養育に関する父母の責務を明確化するとともに、親権に関する規
定を見直しました。これにより、離婚した際に父母双方を親権者と指定すること
ができるようになりました。この改正では、子への虐待やDVへの懸念に対応し、
それらのおそれがあるケースなどでは必ず単独親権とすることが国会でも繰り
返し確認されております。
【雇用】
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続いて、雇用に係る進捗についてご報告申し上げます。まず、勧告 35(a)に関
わって、女性活躍推進法に基づく関連制度を改正し、常時雇用する労働者が 301
人以上の事業主に対し、「男女の賃金の差異」の公表を義務付けました。これを
通じて、各企業が男女間賃金差異の原因を分析することにより自社の女性活躍
の現状を点検し、賃金差異の縮小に向けた取組につなげることを期待していま
す。政府としても各企業における男女間賃金差異の要因分析・改善に向けたコン
サルティングの実施、賃金格差要因分析ツールの活用促進など、企業の支援に取
り組んでいます。
なお、国及び地方公共団体に対しても、更なる女性活躍推進に向け、2022 年
に全ての機関に対して女性活躍推進法に基づく「男女の給与の差異」の公表を義
務付け、毎年、各機関において職員の男女間給与差異の情報を公表することとな
りました。公表内容については、内閣府においてフォローアップを行い、一覧性・
検索性を確保したウェブサイトの整備を通じて「見える化」を図っております。
男女の給与の差異は、差異の数値だけではなく、差異の要因等の把握・分析が重
要であることから、各機関における差異の要因分析等の取組が促進されるよう
支援していくこととしています。
また、勧告 35(b)に関わって、2021 年6月に育児・介護休業法を改正し、原則
子が 1 歳になるまで取得可能な通常の育児休業とは別に、子の出生後8週間以
内に4週間まで分割して2回取得可能な「産後パパ育休」制度を創設いたしまし
た。同改正では男女労働者の育児休業の取得状況の公表を、常時雇用する労働者
が 1000 人超の事業主に義務付けましたが、2024 年6月に同法を再改正し、公表
義務の対象を常時雇用する労働者が 300 人超の事業主に拡大しています。さら
に、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニー
ズを把握した上で、テレワークや短時間勤務など柔軟な働き方を実現するため
の措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることも義務付けていま
す。加えて、同じく 2024 年6月に雇用保険法を改正し、通常、子の出生後 180
日間は休業前賃金の 67%、180 日以後は 50%となっている育児休業給付につい
て、子の出生直後の一定期間内に両親がともに 14 日以上育児休業を取得した場
合、28 日間は休業前賃金の 80%を支給することとしました。この給付は非課税
の取り扱いとなっており、また、育児休業期間中の社会保険料の支払いは免除さ
れることから、これにより最大 28 日間は、手取りで休業前賃金の 10 割の給付
を実現することになります。
【最後に】
以上で、女性差別の完全撤廃と男女共同参画社会の確立を目指したさまざま
な取り組みを実施することで、委員会の前回の対日勧告と一般勧告に対応する
行動をとってきたことについての説明を終わります。議長、最後のご挨拶の前に、
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まず在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の尾池特命全権大使から、「女性・平
和・安全保障」アジェンダを推進するための日本の取り組みについて、最新の情
報をご提供いただきたいと思います。
【尾池厚之大使より】
議長、女性差別撤廃条約の原則に沿った外交政策の柱として、「女性、平和、
安全保障」の視点を推進する日本の最近の取り組みをご紹介できることを光栄
に思います。日本は3次にわたり国家行動計画を策定し、外務省はWPSタスク
フォースを、防衛省はWPS推進本部を立ち上げ、国内の横断的な調整にも取り
組んでいます。また、アジア、アフリカ、中南米など世界各地で 57 件の支援事
業を実施しているところです。引き続き、女性の参画及びリーダーシップを増進
し、平和で安定した国際社会に貢献するとのコミットメントの証として、WPS
25 周年となる来年には、WPSの世界最大のネットワークであるフォーカル・
ポイント・ネットワークの共同議長に就任し、国際的なWPSアジェンダの推進
により大きな責任を担っていく所存です。ありがとうございました。最後に代表
団長にご挨拶をお願いしたいと思います。
【代表団長より】
今、尾池大使から説明のあった WPS アジェンダの推進に対する日本のコミッ
トメントは、女性差別撤廃に向けた私たちの行動の重要な側面です。再び日本全
体の取組に目を向けますと、我々は実現した成果を誇りに思うと同時に、解決す
べき問題が数多く残されていることも認識しております。例えば、政府による男
女共同参画に関する世論調査でも社会全体における男女の地位の平等感につい
て十分な結果が得られておりません。この背景には、長年にわたり人々の中に形
成された固定的な性別役割分担意識や性差に関する偏見・固定観念、無意識の思
い込み(アンコンシャス・バイアス)があるものと考えています。その解消は一
朝一夕にはいきませんが、これからも粘り強く、取組を続けてまいります。
委員の皆様の意見を頂戴できる本機会は有難く、政府としても、誠意を持って
回答を行う用意があります。本日お集まりいただいた委員と市民社会のみなさ
まに改めて感謝するとともに、女性に対するあらゆる差別を撤廃していくとい
う皆様との共通のゴールに向けて、今後も引き続きご協力いただけたら大変心
強く思います。
有り難うございました。
以上


コメの価格が決まる仕組み 実は複雑?特殊なメカニズムに迫る

2025年05月12日 12時31分21秒 | 社会・文化・政治・経済

コメの価格が下がりません。

備蓄米が放出されているにもかかわらず、スーパーで販売されたコメの価格は上昇を続けています。なぜこんなことになっているのか。いろいろな要因を聞いたけど、どうもふに落ちないという方も多いと思います。

複数の要因がからみあっているのですが、背景の1つにはコメの価格が決まる仕組みが複雑なことも指摘されています。コメをめぐる制度や歴史をひもとき、価格の硬直性を少し深掘りしてみます。
(国際部デスク 豊永博隆)

15週連続の値上がり!

政府の備蓄米は過去2回の入札で21万トンが落札され、3月下旬から流通が始まっています。

それでもコメの価格は下がりません。
全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は4月13日までの1週間で5キロあたり4217円(税込み)で、15週連続で値上がりしています。

農林水産省によりますと1回目の入札で落札された14万トンあまりのうち、3月30日までにJAグループなどの集荷業者が倉庫から引き取った量は4071トン。
卸売業者から小売業者や外食業者など、消費の現場に届いた量はあわせて461トン。

全体の0.3%にとどまりました。

これについて農林水産省は、「通常のコメに加えて、備蓄米も流通することになるため、トラックの手配や精米の作業の調整などにはどうしても一定の時間がかかる」としています。

過去2回の入札はJAが9割落札

また、これまで地域によっては備蓄米が行き渡らないなどの不満の声もあがっていました。
1回目と2回目の入札ではいずれもJA全農が9割以上を落札していたことが明らかになりました。

農林水産省が備蓄米が転売されて価格がつり上がることを防ごうと条件を厳しくしていたため、卸売業者から取り引き実績のない中小の卸売業者や小売業者にコメが行き渡りにくいという現状がありました。

このため、4月23日から始まった備蓄米の3回目の入札では農林水産省は卸売業者どうしの備蓄米の売買を認めることにしています。

「流通の目詰まり」が少しでも解消し、備蓄米がこれまで届いていなかった地域にも届けば消費者の安心感につながり、いくらか価格低下に寄与する可能性があります。

さまざまな理由 どうもふに落ちない?

それにしてもなぜコメの価格がこうも下がらないのか。

これまでさまざまな要因が指摘されてきました。
コメを投機的に売り渋りしているとか、転売目的の「転売ヤー」のせいだといった指摘、さらにはインバウンド需要が増加してお米をたくさん食べたからなどの説明もありました。

農林水産省が2024年産のコメの生産量について過大に算定していて、想定よりも収穫できていないおそれがあるとの指摘も出ています。

不安心理から消費者が少しずつ買いだめすることで足せばかなりの需要が発生し、結果としてコメの生産量が追いつかない事態になっているのではないかとの分析もあります。

「なるほどそういうことなのか」と思う理由もあれば「本当にそうなの?」という理由もあり、モヤモヤ感が残る消費者も多いと思います。

コメの価格が決まる仕組み

コメの価格が下がらない背景の1つとしてコメの価格が決まる仕組みが複雑なことも実は指摘されています。

ふだん口にするコメですが、価格がどう決まるのか、そのメカニズムを知る機会はあまりないかもしれません。

レタスの場合は…

それを理解する前に一般的な野菜を例に価格の決定メカニズムを説明します。

例えばレタスでみると、価格は基本的に中央卸売市場で決まります。
人気があるもの=需要があるもの、あるいは供給が少ないものは価格が上がり、需要が少ないもの、あるいは供給が多いものは価格が下がります。

これが市場の原理です。

市場は透明性があり、売る側と買う側がそれぞれ公平に「売りたい」「買いたい」と価格を入れて値段が決まっていきます。

そして市場での価格情報が生産者である農家にダイレクトに伝わります。

高く売れる商品は何か、安くなってしまう商品は何かを作り手は市場での価格を通じて理解するわけです。

特殊な決定メカニズム

ところがコメには特殊な価格決定メカニズムがあります。
1.スーパーなどで小売業者が消費者に示す価格
2.集荷業者と卸売業者とのあいだで決める価格(相対取引)
3.JAが農家に提示する概算金

1のスーパーなど小売業者が消費者に示す価格はほかの農産物や製品と変わりません。

ところが2と3はコメの特殊な価格決定メカニズムです。

2の集荷業者が卸売業者とのあいだで決めるコメの価格というのは相対取引といって、売り手と買い手が直接交渉して決まる価格です。

直接交渉なので市場でオープンに取引されているわけではありません。

農林水産省がJAグループなどの報告をまとめて取引月の翌月に発表しています。

後にならないと価格が分かりません。

JAが農家に一時的に支払う概算金

 
JAが農家に一時的に支払う概算金
さらに概算金という制度の存在があります。

これはコメの刈り取り前7月ごろから9月ごろにJAがコメ農家に対して提示し、支払う金額のことです。

一時金なので仮渡金と呼ばれた時期もあります。

その年の生産見通しや販売見込みなどをもとにJAが「ことしのコメの価格はこれぐらいになりそうですよ」と提示し、一時金として支払います。

コメは多くの産地で1年1作であり、年間を通じて販売するため、販売価格が異なります。

協同組合で公平性を重視するJAとしては、農家のあいだでばらつきが出るのは好ましくないため、すべてを販売したあとに精算して分配する仕組みになっているわけです。

この概算金は集荷業者が卸売業者に示す価格にも少なからず影響するので、JAグループがコメの価格決定に大きな影響力を持っていることが分かると思います。

コメの価格が決まるメカニズムは硬直的です。

そして需給をすぐに反映しない、いったん価格が上がると下がりにくいということは指摘できると思います。

コメの価格はかつて国が決めていた

コメは日本人にとって欠かせない主食だったことから戦後、コメの価格は国が決めていました。

「食糧管理法」、食管法とも呼ばれる法律のもと、政府が米価審議会に諮問し、その答申に基づいて決めるという仕組みでした。
コメの価格はかつて国が決めていた
米価審議会(1995年6月)
この法律は1995年に廃止され、コメについては民間流通が基本となりました。

民間流通とはいえ、上述したとおり、オープンな「市場」がなかったため、コメの価格決定メカニズムは改革が遅れました。

コメの先物取引もいったんは廃止

厳密にいうと小さな「市場」は過去存在し、今、また設立され始めてはいます。

1つはコメの先物取引です。
2011年から大阪にある「大阪堂島商品取引所」がコメの先物取引を試験的にスタートしました。

試験的ではない本格的な取り引きへの移行を国に申請しましたが、2021年7月、農林水産省は認可せず、その後、取引は2023年に廃止されました。

私はこの認可をめぐる攻防が激しかったころ、大阪放送局のデスクと、経済部に移り、農林水産省を担当するデスクをしていたので、当時の動きをよく覚えていますが、農業界に「コメの先物は投機的なマネーゲームだ」と批判する人がいたこと、農林水産省は内々、先物の本格的な取り引きへの移行を認める方向で動き出したものの、自民党への調整や説得がうまくできず、頓挫した経緯があります。

農林水産省は名称を変更した「堂島取引所」に2024年、コメの先物取引を認可し、8月からコメの先物取引が始まっています。

また、もう1つ、需要と供給に基づいてオープンな形で価格を決める、コメの現物市場である「みらい米市場」が2023年に開設されました。

ただ、どちらも取引の量はまだ少なく、コメの価格形成をリードするには至っていないのが現状です。

今、必要なことは?

 
今、必要なことは?
酷暑の影響によるコメの品質低下と、2024年夏の南海トラフ地震臨時情報の発表で買いだめの動きから始まったコメの価格上昇。

さまざまな要因が重なって今も価格が上がり続けていますが、視野を広げて歴史を振り返ると、コメの複雑な制度が存在することに気付かされます。

必要な制度や仕組みに理解は示しつつも、消費者のニーズを的確にとらえ、価格に反映させる安定した市場とその仕組みづくりが必要であることを今、再認識させられました。
国際部デスク
豊永博隆
1995年入局
経済部 アメリカ総局(ニューヨーク) おはBizキャスター
大阪局デスクを経て現職
国際経済分野を担当