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SNSが選挙を左右する時代

2025年06月05日 09時39分09秒 | 社会・文化・政治・経済

独自分析“SNS時代”選挙はどう変わる?

初回放送日:2024年12月16日

東京都知事選や兵庫県知事選で注目を集めたSNS。衆議院選挙でもネット戦略に注力した政党が議席を増やすなど、ことしは「選挙とSNS」を考える大きな転換点になった。SNSはどこまで影響力を持ち、実際の投票行動にどう影響したのか?独自アンケートとSNS分析で実証的に検証する。また選挙の際の情報発信のあり方について様々な可能性と課題が指摘される中、SNS時代の選挙・メディア・民主主義のあり方を考える。

放送内容

目次
  • 投票の判断にどう影響?
  • 独自分析“SNS時代” 選挙はどう変わる?
  • “SNS時代”の選挙 メディアの報道は?
  • “SNS時代” これからの政治は? 社会は?

投票の判断にどう影響?

桑子 真帆キャスター: NHKの出口調査で、3割の人が投票する際にSNSや動画サイトを最も参考にしたという11月の兵庫県知事選挙ですが、実際にSNSの情報で投票先を変えたのかなど、投票の判断にどう影響したか詳しくは分かっていませんでした。そこで番組では、先週、3,000人あまりを対象に独自にインターネットのアンケート調査を行いました。

すると、投票で最も参考にしたのが、「SNS・動画サイト」だと答えた人の7割が「投票先を変えるに至った」、もしくは「投票先を決めていなかったが決める上で重要な要素になった」と回答しました。「テレビ」、「新聞」、「ラジオ」のマスメディアを最も参考にした人に比べると、投票の判断に強い影響を与えていたことがうかがえます。2024年の選挙で何が起きていたのでしょうか。

独自分析“SNS時代” 選挙はどう変わる?

兵庫県知事選挙が告示される、およそ1か月前。SNSに1本の動画が投稿されました。

会社員 藤原祐弥さん 「すごくおじぎがきれいな人だなと思いました。1人でよくこんなことをやるな」

動画を目にした会社員の藤原祐弥さんです。普段から政治への関心が高く、今回の選挙についても積極的に情報を集めていました。

藤原祐弥さん 「(斎藤氏に)すごくマイナスのイメージを持っていた。マスコミの報道、ニュース、新聞を見ていたので、パワハラ疑惑とかおねだりとかしてきたんだなと、正直、思っていました」

パワハラの疑いなどで告発された問題をきっかけに失職した斎藤元彦氏。

兵庫県 斎藤知事 「パワハラかどうかは私が判定するというよりも、百条委員会とか第三者委員会が判定するものだと思います」

事実関係について、百条委員会などで調査が続いています。

告示日。斎藤氏は、改革を前に進めたいと訴えました。

斎藤知事 「これまでの旧態依然の県政に戻すわけにはいかない。斎藤か斎藤以外か。私は絶対にそれには負けるわけにはいかないんです」


収益目的の「切り抜き動画」が拡散

2025年06月05日 09時31分26秒 | 社会・文化・政治・経済

収益目的の「切り抜き動画」に違法性は?──2024年主要選挙とメディア SNSの功罪→「選挙期間、広告収入を止めるのも一つ」

「収益目的で作られる切り抜き動画に違法性はないのか。

取材を受けるにあたり、総務省に確認したところ『公選法上は全くない』と明確に即答されました。

こうした行為に対して特段、処罰する規定がないのです。だから、適法です。

ただ、現行法ではそうだとしても、正直、問題を感じないわけにはいきません。

選挙制度の中で大きな穴が開いているという印象です」 公選法改正でネット上での選挙活動が解禁されたのは2013年。その時点では、動画の広告収入によって収益を上げることが想定されていなかった。

スマートフォンもまだ普及半ばで、SNSはテキストが中心。YouTubeなど動画メディアも現在ほど多くの人が見ていたわけではないし、TikTokなどはまだ存在もしていなかった。現在は選挙を「コンテンツ」として捉え、それを稼ぐ材料にする人が増えた。2013年の法改正時点で想定されていないことが起きている。

 

収益目的の「切り抜き動画」に違法性は?──2024年主要選挙とメディア #SNSの功罪

配信

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Yahoo!ニュース オリジナル 特集

「石丸氏から始めた」切り抜き動画作成者・Aさん

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SNS時代の選挙を再考する

2025年06月05日 09時18分10秒 | 社会・文化・政治・経済

独自分析“SNS時代”選挙はどう変わる?

初回放送日:2024年12月16日

東京都知事選や兵庫県知事選で注目を集めたSNS。衆議院選挙でもネット戦略に注力した政党が議席を増やすなど、ことしは「選挙とSNS」を考える大きな転換点になった。SNSはどこまで影響力を持ち、実際の投票行動にどう影響したのか?独自アンケートとSNS分析で実証的に検証する。また選挙の際の情報発信のあり方について様々な可能性と課題が指摘される中、SNS時代の選挙・メディア・民主主義のあり方を考える。

放送内容

目次
  • 投票の判断にどう影響?
  • 独自分析“SNS時代” 選挙はどう変わる?
  • “SNS時代”の選挙 メディアの報道は?
  • “SNS時代” これからの政治は? 社会は?

投票の判断にどう影響?

桑子 真帆キャスター: NHKの出口調査で、3割の人が投票する際にSNSや動画サイトを最も参考にしたという11月の兵庫県知事選挙ですが、実際にSNSの情報で投票先を変えたのかなど、投票の判断にどう影響したか詳しくは分かっていませんでした。そこで番組では、先週、3,000人あまりを対象に独自にインターネットのアンケート調査を行いました。

すると、投票で最も参考にしたのが、「SNS・動画サイト」だと答えた人の7割が「投票先を変えるに至った」、もしくは「投票先を決めていなかったが決める上で重要な要素になった」と回答しました。「テレビ」、「新聞」、「ラジオ」のマスメディアを最も参考にした人に比べると、投票の判断に強い影響を与えていたことがうかがえます。2024年の選挙で何が起きていたのでしょうか。

 

このエピソードの放送予定

都道府県(放送局):
東京都(首都圏局)
 
 

出演者・キャストほか

  •  
    出演
    牧原 出
    東京大学教授
  •  
    ゲスト
    米重 克洋
    JX通信社代表
  •  
    キャスター
    桑子 真帆
    アナウンサー
     
    “SNS偽情報”“2馬力”対策にハードルも…都議選・参院選控え与野党が議論© テレビ朝日

    SNS上での嘘の情報や、誹謗中傷など、選挙の公正性をめぐって浮かび上がっている課題について、4日、与野党で議論が交わされました。

    【画像】“SNS偽情報”“2馬力”対策にハードルも…都議選・参院選控え与野党が議論

    自民党 逢沢一郎衆院議員

    「SNS上に誹謗中傷の類、あるいは真偽不明の明らかな偽情報、かなり多い。有権者が大きな影響を受けている。結果、健全・公正であるべき選挙がゆがめられている」

    東京都議選に参院選、大きな選挙が目前に控えるなかで、与野党は何らかの手を打ちたい考えです。しかし、4日の議論では「何をもって偽情報と判断するのか」といった指摘も上がり、結論は出ませんでした。

    こちらは、立候補の届け出にあたり、自らの当選を目的とすると宣誓させる案に、与野党とも前向きな考えを示しました。ただし、一連の対策には、公職選挙法の再改正などが必要。

    この協議会で、何らかの結論が示されても、都議選や参院選に法的拘束力を持った対応は、間に合わない見通しです。

    ◆今国会で改正されたのが、“選挙ポスター”に関する規定です。他人の名誉を傷つけることや、わいせつ画像や広告の記載を禁止し、候補者の氏名を見やすく表示することが義務付けられました。

    一方で、SNS対策や、自らの当選ではなく、ほかの候補者の当選を目的として立候補するいわゆる“2馬力選挙”は、付則にとどまり、具体的な措置は、今後の検討課題とされていました。

    これらについて、与野党7党で協議が行われました。

    選挙期間中に、SNS上で偽の情報がまん延する事態を受け、個人の名誉を傷つける投稿があった場合、政党や候補者から申し出があれば、事業者による“即日削除”を可能にします。

    “2馬力選挙”については、立候補の届け出をする際に、「自らの当選を目的とする」ことを宣誓させます。以上のことが議論され、引き続き、協議が行われます。

    ◆公職選挙法に詳しい日本大学法学部の安野修右准教授に聞きました。

    安野准教授は、SNS対策について「例えば、警察やSNS事業者が一定の裁量権を行使して、投稿の削除が可能になれば、濫用されるリスクも生じる。表現の自由に含まれる言論と、誹謗中傷の垣根には曖昧なものもあり、実効性をどう確保するのか課題がある」といいます。

    2馬力選挙については「“宣誓”に効果はないとは言わないが、お守りのようなものに過ぎない。例えば、『自身の当選よりも、重要な政策上の課題を訴えたい』という立候補まで禁止できるかは疑問」と指摘しています。

     

ネットの憎悪増幅と連鎖の本質

2025年06月04日 17時40分18秒 | 社会・文化・政治・経済

ネット上にはなぜ「毒」が蔓延するのか:背景に潜む「マノスフィア」と「インセル」を考える

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石田雅彦科学ジャーナリスト
 
ネット上からリアル世界へ波及する誹謗中傷が、大きな社会問題になっている。
最近の研究から、こうした言動の背後にあるネット利用者の心理を考える。

 

マノスフィアとインセル

 

 英国の少年が犯罪を犯してしまい、その動機にSNSでのコミュニケーションやイジメがあっという動画配信サイトの作品『アドレセンス』(Netflix)が話題だ。全シーンがワンカットで撮影され、その手法にも驚かされるが、若い世代に広がるネットやSNSの影響はすでに看過できないほど深刻なことを思い知らされる。

 

 もちろん中にはスポーツや勉強に集中する人もいるだろうが、古今東西、思春期の男性の頭の中は、異性やセックスのことでいっぱいだ。彼らは自らの外見にこだわり、相手に好かれようとし、コミュニケーションに挑んで特に失敗する。

 

 こうした思春期男性の言動も古来から変わらないが、強い影響をおよぼしているのがネットやSNSでの言動だ。特にジェンダー平等が進む英語圏では、男性の権利復権の動きであるマノスフィア(Manosphere)の考え方がネット上で反響しつつ、反動的により過激な主張になり、いわゆるトキシック・マスキュリニティ(Toxic Masculinty、有害な男性性)として無視できない社会的病理にもなっている(※1)。

 

 また、冒頭で紹介した動画には少年に投げかけられるスティグマ的な言葉として「インセル(Incel、Involuntary Celibateの略)」が出てくるが、これはネット上で性的なアイデンティティをこじらせた「非自発的独身者(不本意にパートナーを望めないと思い込んでいる人)」集団を指す。そして、マノスフィアはインセルを多く含み、異性へ憎悪をつおらせた挙げ句、しばしば事件性のある過激な行動を起こしかねない存在とされている(※2)。

 

 こうしたネットやSNSでのマノスフィアの考え方は、政治の世界でも影響力を増し、2024年の米抗大統領選挙でのトランプ再選を実現させた原動力の一つとされている。そして、こうした動きは、男性の権利復権や反フェミニズム、反LGBTQから範囲を広げ、ミソジニー(女性蔑視)なインセルを包含しつつ、ヘイトクライムなどの差別意識、極右イデオロギー、エセ科学、陰謀論、フェイク・ニュースなどと結びつき、社会的弱者への攻撃やポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)に対する過度な反応などへ波及していく(※3)。

 

政治や社会へ大きな影響が

 

 ネット上の情報に強く影響を受けるのは、思春期や英語圏の男性だけではない。日本でもSNSなどでいわゆる「犬笛」(暗喩や暗示、示唆や教唆)で呼びかけられたユーザー(老若男女を問わず)が攻撃対象である個人へ誹謗中傷を繰り返し、リアル世界でも非通知の迷惑電話や相手宅周辺の徘徊などにおよぶような違法行為が国会でも問題視されるようになっている。

 

 ネットやSNSなどでこうした「毒」を含んだ言動が拡散する背景には、知名度や影響力のある発信者への信奉と狂信、ミソジニー(女性蔑視)やヘイトクライムなどの差別意識がある(※4)。発信者の情報に正当性があると信じ込み、時として社会的な弱者叩きやポリティカル・コレクトネスへの反感がない交ぜとなってプラットフォーム上で共振し、拡散し、中には暴力的言動を実行してしまうユーザーが出てくる。

 

 そして最後に忘れてはならないのが、こうしたプラットフォームを駆動するスポンサー企業の存在だ。ネット上の情報の多くはアフィリエイトのような広告収入を得ることを目的にし、例えばYouTubeで視聴回数を稼いで収益化させることがフェイク・ニュースや「毒」を含んだ情報を拡散するための一種の動機になっている(※5)。

 

 以上をまとめると、ネット上に「毒」を含んだ情報が拡散し、リアル世界へ暴力的な言動が波及する背景には、ジェンダー平等の流れによる男性の疎外感情があり、政治や社会へ大きな影響をおよぼし始めている。特に、思春期世代への影響は無視できないものとなっていて、スポンサー企業への規制、ネットやSNSなどの年齢制限を含む対策の議論が必要だろう。

※1-1:Mike C. Parent, et al., "Social Media Behavior, Toxic Masculinity, and Depression" Psychology of Men & Masculinities, Vol.20(3), 277-287, April, 2018

※1-2:Carol Harrington, et al., "What is "Toxic Masculinity" and Why Does it Matter?" Men and Masculinity, Vol.24, Issue2, 17, July, 2020

※1-3:Simon Copland, "Weak Men and the Feminisation of Society: Locating the Ideological Glue between the Manosphere and the Far-Right" Global Perspectives on Anti-Feminism, Edinburgh University Press, 2023

※1-4:Phillip L. Hammack, Adiana M. Manago, "The Psychology of Sexual and Gender Diversity in the 21st Century: Social Technologies and Stories of Authenticity" American Psychologist, Vol.80(3), 375-388, April, 2025

※2-1:Roberta Liggett O'Mallery, et al., "An Exploration of the Involuntary Celibate (Incel) Subculture Online" Jounral of Interpersonal Violence, Vol.37, Issue7-8, 24, September, 2020

※2-2:Matteo Botto, Lucas Gottzen, "Swallowing and spitting out the red pill: young men, vulnerability, and radicalization pathways in the manosphere" Journal of Gender Studies, Vol.33, Issue5, 23, September, 2023

※2-3:David S. Smith, et al., "“Even though I’m not an incel, I’m still an involuntary celibate”: A journey in and out of inceldom" The Communication Review, Vol.28, Issue1, 24 July, 2024

※3:Mariel J. Barnes, Sabrina M. Karim, "The Manosphere and Politics" Comparative Political Studies, doi.org/10.1177/00104140241312095, 17, January, 2025

※4:Raquel Recuero, "The Platformization of Violence: Toward a Concept of Discursive Toxicity on Social Media" Social Media + Society, doi.org/10.1177/20563051231224264, 20 January, 2024

※5:Wajeeh Ahmad, et al., "The Role of Advertisers and Platforms in Monetizing Misinformation: Descriptive and Experimental Evidence" National Bureau of Economic Research, Working Paper 32187, March, 2024

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科学ジャーナリスト

法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。

禁煙・受動喫煙防止活動を推進する神奈川会議常任理事。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。


憎悪の感情

2025年06月04日 17時33分05秒 | 社会・文化・政治・経済
憎しみは心の奥深くで長い間燃え続け、時に自分や他者の人生を蝕んでしまうことがある。 しかし、憎しみとは一体どのような感情なのだろうか。
今回の記事では、憎しみと関連する心と脳の仕組みについて考えてみたい。
憎しみと良く似た感情に怒りがあるが、アリストテレスは、その著書、『弁論術』でその違いについて論じている(戸塚, 1992 年)。
以下はそれをまとめたものである。

憎しみ脳科学:そのメカニズムと対処法 - Lab BRAINS

憎しみの心理学

憎しみと良く似た感情に怒りがあるが、アリストテレスは、その著書、『弁論術』でその違いについて論じている(戸塚, 1992年)。以下はそれをまとめたものである。

このように並べてみると、憎しみのほうがより扱いにくい感情であることが分かる。怒りは自分が直接関わった相手だけに向けられるのに対して、憎しみは顔も名も知らぬ幅広い人に向けられる。そして、怒りは時間が経てば和らぐことがあるが、憎しみは相手を抹消するまで消え去ることがない。

また、憎しみと似た感情として、復讐心や屈辱感、軽蔑感などもある。アムステルダム大学の心理学者、フィッシャー教授はこれらの感情を以下の図に示す図にまとめている。

Fischerら, 2018年、figure 1を参考に筆者作成

 

それぞれの感情の目的については、怒りは標的を変化させること、軽蔑は社会的に除外すること、屈辱感は自己防衛的に身を引くこと、復讐は苦しみの均衡を回復すること、そして憎しみは標的を破壊することと論じられている(Fischerら, 2018年)。また図を見てもらえば分かるように、憎しみは他のネガティブな感情を包含する広範な感情であることも示されている。

進化論的観点からは、憎しみにはグループの生存を高める意味があったと言われている。限られた資源をめぐって他グループと争っている状況下で、憎しみを利用して相手を殲滅できる方が有利だったからである(Zhu, 2022年)。つまり憎しみとは、過酷な環境下で生き残るための適応的な感情だった可能性もある。

 

 

憎しみの脳科学:脳内ネットワークと非人間化

セミール・ゼキ博士は、美と脳の関係を探る神経美学で知られているが、憎しみと脳の関係についても研究も行っている(ZekiとRomaya, 2008年)。実験では、被験者に憎い人物や中立的な人物の顔を見せ、その時の脳活動を測定している。加えて、被験者に憎しみの程度についても回答させ、憎しみと脳活動の関連を調べている。

ZekiとRomaya, 2008年, Figure 1. 顔の一例

 

結果として、憎しみが強いほど、島皮質や運動前野、内側前頭回、被殻といった脳領域の活動が高まることが示されている。

ZekiとRomaya, 2008年, Figure 5.

 

ちなみに島皮質は、美味しい、悲しいなどの情動的な知覚に関わる領域である。また運動前野や内側前頭回は、走ろう、投げようなど、運動の準備に関わる領域である。そして被殻は脳の奥深くにあって、嫌悪感や運動のコントロールに関わる領域である。総じてこれらの脳領域の活動の高まりは、憎い相手への攻撃衝動と嫌悪感の高まりを反映しているのではないかと論じられている(ZekiとRomaya, 2008年)。

さらに、これらの脳領域の繋がりが、うつ病で弱まることを示した研究もある。この研究ではうつ病患者の脳内ネットワークを調べているが、憎しみと関連する脳領域の繋がりが弱くなっているというのだ(Taoら, 2013年)。このような変化は、うつ病で憎しみが弱まることと関連しているのではないかと論じられている。

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また憎しみと関連の深い心理メカニズムとして、「非人間化」がある。これは文字通り、相手を人間以外の存在へと認知する傾向を指す。非人間化された相手への攻撃を正当化しやすくする効果があると考えられている。ある研究では、被験者に人種や職業などのカテゴリーを提示し、非人間性や類似性などの評価をさせる実験を行った。すると、非人間的な評価と相関して、下前頭回の活動が高まることが明らかになった(Bruneauら, 2018年)。

Bruneauら, 2018年, Figure3を参考に筆者作成

 

下前頭回は、言語処理や概念形成などの高次脳機能に関与している。したがってこの結果は、非人間化が単なる感情的反応ではなく、むしろ言語や概念に基づいた理性的プロセスであることを示唆している。「あいつは人間ではない」という理性に欠けた判断は、逆説的に高度な認知機能を必要としているのかもしれない。

 

 

憎しみを和らげる方法

それではこの根深い憎しみを緩和する方法はあるだろうか。関連文献を調査してみたが、憎しみそのものを直接的に「治療」する研究報告はほとんどないことが分かった。これは抑うつや不安障害などに関する膨大な研究報告数と対照的である。ただし、アートセラピーが憎しみの緩和にある程度寄与しうることを示唆する報告はある。創作活動を通じて自己理解が促され、対象へのまなざしが多面的になることで、憎しみが和らぐ可能性があるというのだ。しかし他方で、根深くアイデンティティと結びついた憎しみを完全に払拭するのは容易でないとの指摘もある。この点では依存症の治療と同様の困難さがあるという(Simiら, 2017年)。また進化心理学の観点からは、憎しみが生存可能性を高める適応策として獲得された、ある意味「正常な」感情であるという指摘もある。憎しみが「正常」なものであるなら、それを「治療」することも難しい。やはり憎しみは扱いが難しいのかなとも思ってしまう。

 

 

まとめ

では、ここまでの内容をまとめてみよう。

 

  • 憎しみの目的は相手を抹消することである。
  • 憎しみの原因は、相手が「何をしたか」ではなく、「何であるか」である。
  • 憎しみには高次の脳領域が関わっている。
  • 憎しみを「治療」する方法は確立されていない。

 

限られた資源を奪い合う時代であれば憎しみにも効用があったのかもしれない。しかし21世紀に生きる現在、憎しみは効用よりも弊害のほうが大きい。憎しみは理性の誤作動のようなものかもしれない。誤作動そのものを止めることは難しいが、それを自覚することはできる。私達の脳は不完全である。その不完全さを理解した上で、より善い生を歩んでいきたい。

 

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著者紹介:シュガー先生(佐藤 洋平・さとう ようへい)

博士(医学)、オフィスワンダリングマインド代表
筑波大学にて国際政治学を学んだのち、飲食業勤務を経て、理学療法士として臨床・教育業務に携わる。人間と脳への興味が高じ、大学院へ進学、コミュニケーションに関わる脳活動の研究を行う。2012年より脳科学に関するリサーチ・コンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表として活動。研究者から上場企業を対象に学術支援業務を行う。研究知のシェアリングサービスA-Co-Laboにてパートナー研究者としても活動中。
日本最大級の脳科学ブログ「人間とはなにか? 脳科学 心理学 たまに哲学」では、脳科学に関する情報を広く提供している。

【主な活動場所】X(旧Twitter)はこちら

このライターの記事一覧

 

 

【参考文献】

Bruneau, E., Jacoby, N., Kteily, N., & Saxe, R. (2018). Denying humanity: The distinct neural correlates of blatant dehumanization. Journal of Experimental Psychology: General, 147(7), 1078–1093.
https://doi.org/10.1037/xge0000417

Fischer, A., Halperin, E., Canetti, D., & Jasini, A. (2018). Why we hate. Emotion Review, 10(4), 309-320.
https://doi.org/10.1177/1754073917751229


都議会公明党 5つの実現力

2025年06月04日 09時46分47秒 | 社会・文化・政治・経済

だから都議会公明党/東京に必要な5つの実現力

未分類 / 2025年5月13日

5月13日(火)

本日は明後日に控えた福生市議会臨時会の打ち合わせ。
臨時会では議会人事の改選がありますので、私が副議長職を務めるのもあとわずかです。

明日も近隣自治体の正副議長が来庁するとのことで対応があります。最後までしっかりと職責を果たしていきます。

さて、告示まで1カ月となりました東京都議会議員選挙に関連して、都議会公明党の実績や目指す政策を本日公明新聞の記事をシェアします。

だから都議会公明党/東京に必要な5つの実現力 公明新聞 2025年5月13日付

この60年、過半数を占める政党・会派がない東京都議会で、公明党は20議席以上を確保し、他会派も巻き込みながら、政策を提案・実現してきました。この力は東京の発展、都民生活の向上へこれからも必要です。そんな都議会公明党の実現力を5つの観点からまとめました。

■現場の声聴き家計と暮らし支える

区市町議らと連携して現場の声を聴き、物価高で苦しい家計と暮らしを支える施策を実現。「シルバーパス」販売額の4割引き下げが実りました。「学生パス」導入もめざします。「東京アプリ」登録者への7000円相当のポイント付与が決定。1万円への増額をめざします。

全国をリードする子育て支援

都と粘り強く交渉し、全国をリードする子育て支援を次々と実現。公立小中学校の給食費無償化は、自治体への補助を拡充させて全域で。高校授業料の実質無償化は昨年度から公私ともに所得制限なしに。教材費などの無償化も進め、教育負担が「かからない」東京をめざします。

便利で住みやすい都市を築く

便利で住みやすい東京の構築を推進し、都市総合力で世界3位に。バリアフリー化や日暮里・舎人ライナーと多摩モノレール整備、女性専用車両などを実現し、玉川上水の清流復活や江戸城外濠の水質改善も前進。「開かずの踏切」解消や首都高料金所撤廃をさらに進めます。

災害や病気などから命と健康守る

都民の命と健康を守る体制を拡充。豪雨時に川の水を貯留する地下調節池の整備が進み、避難所環境の改善へ学校体育館のエアコン設置、トイレカーなど購入へ自治体の支援も。がん「陽子線治療」の都立病院への導入決定、帯状疱疹・肺炎球菌ワクチンの費用助成などをリード。

ムダなくし財源生む行財政改革

財政危機の打開へ行財政改革をリード。民間に準じた「新公会計制度」を全国に先駆けて導入させ、1兆円の“隠れ借金”解消のほか、「事業評価」による約1兆円のムダを削減(昨年度までの18年間)。今年度も、事業見直しなどが進み、1303億円の財源が生まれました。


日本は戦争に負けた根本的原因

2025年06月03日 10時11分18秒 | 社会・文化・政治・経済

資源と技術の不足、そして体制内部の崩壊


根本的原因、それは資源と技術の不足、そして体制内部の崩壊である。
日本は元々資源に乏しい国であったから、常に国外に資源を依存していた。 アジアにおける勢力拡大も、この資源の獲得が目的の一つであった。
南部仏印進駐後アメリカに資源をストップされてからは、鉄に材料になるものはすべて兵器にまわし、時には寺の鐘、ついには敵の爆弾まで利用するまでに至った。
 
他の国々への高圧的な態度と、自国民への人権侵害。
尊厳の軽視という点で表裏一体といわれるが、当時の日本はそんな状態にあったのである。
思想の統制と軍部の横暴と人権弾圧。
国家権力の先鋭組織の特別警察は、平和主義者を投獄し、死に至らせもした。
 
日本人 の美徳 とは:日本人の美徳という言葉には、私たちが大切にしている価値観や行動の基準が含まれています。
日本には、思いやりや礼儀、勤勉さ、誠実さ、忍耐といった美徳があります。
例えば、思いやりは他の人を大切にし、助け合う心を意味します。
礼儀は、相手に対して敬意を持って接することです。
勤勉さは、一生懸命に働いたり、勉強したりすることによって、目標を達成しようとする姿勢を表します。
それらの美徳が、国家権力によって完全なまで崩壊したのである

東京都 水道基本料金の無償化

2025年06月02日 10時17分20秒 | 社会・文化・政治・経済
東京都 の 小池百合子 知事は20日、今年6月か7月からの4カ月間、都内すべての一般家庭の水道基本料金を無償にすると発表した。
都によると、対象は約800万件で、都道府県単位での無償化は初めて。
光熱水費の負担を軽減することで、エアコンの利用を控えて 熱中症 にかかる人を減らす狙いがあるとしている。 都内の水道の「基本料金」は、各住宅の給水管の口径に応じて860~1460円と定められている。

不登校の児童数が過去最多に

2025年06月02日 10時13分39秒 | 社会・文化・政治・経済

不登校の小中学生 過去最多34万人余に 11年連続で増加 文科省

不登校の状態にある小中学生は昨年度、34万人余りにのぼり、11年連続で増加して過去最多となったことが文部科学省の調査でわかりました。

目次

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小学生 10年前の“5倍” 中学生は“2.2倍”に増加

 

文部科学省のまとめによりますと、昨年度、全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の状態にある子どもは、34万6482人で、前の年度と比べて4万7000人余り、率にして15%多く、11年連続で増加して過去最多となりました。

このうち、小学生が13万370人で10年前の5倍に、中学生が21万6112人で10年前の2.2倍に、それぞれ増えています。

このほか高校生も3年連続で増えて6万8770人でした。

不登校の状況 いじめの件数は

 

不登校の状況としては「学校生活に対してやる気が出ない」が32.2%と最も多く、次いで「不安・抑うつ」が23.1%、「生活リズムの不調」が23%などとなっています。

また、認知されたいじめの件数は、小学校が58万8930件、中学校が12万2703件、高校が1万7611件、特別支援学校が3324件のあわせて73万2568件で、前の年度よりも5万件余り増えて過去最多となりました。

いじめによる自殺や不登校などの「重大事態」と認定された件数も380件余り増えて過去最多の1306件となり、4割近くは「重大事態」と把握するまで学校側がいじめとして認知していなかったということです。

一方、自殺した児童や生徒はあわせて397人で、過去3番目に多くなっています。

文科省 “不登校の要因を的確に把握 きめ細かな支援必要”

 

不登校の子どもの増加について文部科学省は、「子どもの状況に応じた教育が必要だという保護者の意識の変化も背景にあると考えられる。不登校の要因を的確に把握し、きめ細かな支援が必要だ」とした上で、いじめについては学校側が組織的な対応ができず、重大事態になった例もあるとして、いじめの早期の発見や対応を促していきたいとしています。

専門家「学校に行かないこと “よくない” という意識に変化」

 

不登校やいじめの問題に詳しい上越教育大学いじめ・生徒指導研究センターの高橋知己センター長は、今回の調査結果について「不登校の子どもが5万人近く増加したことは衝撃をもって受け止めている。ただ、学校に行かないことがよくないという従来の意識に変化が出ている」と指摘します。

その背景として「フリースクールなどが社会的に認知されて、子どもがストレスを抱えたまま通学するよりも、自分が学びやすい場所で学ぶことが可能だということが広く認識されてきている」としたうえで、「学ぶ場が整った環境であれば、学校教育に限らなくてもいいのではないかと保護者が気づき始めている」と分析しています。

さらに、コロナ禍を経て広まったオンライン授業の影響もあげた上で「学校でやるべきことは何かを考え直す時期ではないか」と話しています。

その上で、高橋センター長は不登校の状態にある子どもたちの受け皿の確保や経済的支援が必要だと指摘し、「家庭の経済格差によって、子どもの選択肢が狭められないようにしなければならない。柔軟なカリキュラムが特別に認められている『学びの多様化学校』の整備を進めるとともに、民間のフリースクールに通う場合の経済的な支援などを考えていく必要がある」と話しています。


都議会公明党 重点政策を発表

2025年06月02日 10時09分28秒 | 社会・文化・政治・経済

公明党 公約発表 東京都議選(6月22日)「家計応援計画」を重点政策に掲げる

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年5月30日 19時11分

来月22日に投開票が行われる東京都議会議員選挙について、公明党はきょう、公約を発表しました。

都議会公明党 東村邦浩 幹事長
「現下の東京の状況を踏まえた『家計応援計画』を、今回、都議選に向けて発表させていただきたい」

都議会公明党は「家計応援計画」を重点政策に掲げ、中小企業に対する設備投資の補助率を大幅アップさせて賃上げを推進し、現役世帯の平均年収を5年間で200万円増やすことを目指すなどとしています。

教育負担の軽減策としては、教材費や修学旅行費の無償化を目指すことや、小学生から大学生までがバスなどに低額で乗車できる「学生パス」を導入することなどを掲げています。

また、物価高対策のほか、個人住宅向けの防犯機器の購入費補助の上乗せなども公約に盛り込まれています。


「誰から聞いたんや?聞いた者、全部名前言え」 兵庫・元県民局長のプライバシー情報

2025年05月31日 21時37分53秒 | 社会・文化・政治・経済

漏えい問題を検証 斎藤知事の指示は?【報道特集】

配信

TBS NEWS DIG Powered by JNN

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差別を恐れ、半世紀言い出せなかった―医師と司法が新潟水俣病だと認めて

2025年05月31日 21時27分48秒 | 社会・文化・政治・経済

行政は患者と認めない 「公式確認」から60年、2度の「政治解決」経ても見えない被害全容

配信

 
手足のしびれなどの症状を話す皆川栄一さん=2025年4月、新潟県阿賀町

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【関連記事】


令和のコメ騒動、根本的な原因を問う

2025年05月31日 08時26分33秒 | 社会・文化・政治・経済

 

山下 一仁
上席研究員(特任)

国民への奉仕を忘れた農林水産省

コメが不足している。昨年産のコメが猛暑による被害を受け精米にする際の歩留まりが低下していることや、インバウンドなどにより消費が増加していることが原因に挙げられている。

より根本的な問題は、減反政策によって、予想される需要ギリギリの生産しかしていないことにある。このため、わずかな需給の変動によって、今回のような事態を招く。

平成のコメ騒動も減反政策がなければ回避できた。減反を廃止すれば食料自給率も60%以上に上がる。

しかし、納税者が農家に補助金を出して消費者が高い米価を払うという減反は止められない。農林水産省が既得権者のためだけの行政を行っているからだ。

指摘されている原因とされていない原因

コメの値段が上がっている。棚からコメが消えたスーパーもある。

その一方で、農林水産省はコメの需給は逼迫していないという。

コメの流通業界は、猛暑の影響で2023年産米の1等米の比率が減少したと説明している。1等とか2等とかいうコメの等級は、一定量のコメの中に、粒のそろったコメ(整粒)の比率が高いか低いか、白濁した粒など被害を受けた粒の比率がどのくらいなのか、などで決定される。

イネの穂が出る頃に高温が続くと、コメの内部に亀裂が生じてしまう「胴割れ粒」や、でんぷんの形成が悪く白く濁ったように見える「乳白粒」などが生じる。

この割合が多いと精米歩留まりが低下する。こうしたコメを流通段階で取り除いたため、消費者への供給量が少なくなったというのだ。

需要面ではインバウンドによるコメの消費増がある。

しかし、毎月3百万人の旅行者が日本に7日間滞在して日本人並みにコメを食べたとしても、消費量の0.5%増に過ぎない。他にも、国際的な小麦価格の高騰でパンの値段が上昇し、相対的に安くなったコメの消費が増加したとか、南海トラフ地震への恐怖から消費者がコメの備蓄のため、買いに走っているのだとかという説明がなされている。

確かに、最近のコメ不足がこれらの要素によって引き起こされたことは事実だろう。しかし、これらはコメの全体需給の大きな部分を占めるものではない。足し上げても5%にもならない。

本質的な問題は、こうしたわずかな生産や消費の変動がコメの価格や需給に大きな影響を与えていることである。

指摘されていない事実がある。23年産米の作況指数は平年作以上の101だった。しかし、これは、コメの生産量が前年より多かったことを意味しない。

作況指数というのは一定の面積当たりの収量(「単収」という)の良しあしだからである。コメの作付面積が減少していれば、作況指数100でも、生産量は前年を下回る。

JA農協と農林水産省は、コメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)、つまり作付面積の減少を進めてきた。

23年産のコメ生産量は、作況指数101にもかかわらず前年の670万トンから9万トン減少した。猛暑による影響をうんぬんする前に、23年産のコメ供給量は減反で減少していたのだ。

余裕のない生産を行わせる理由

しかも、これは過剰による米価低下を回避するための余裕のない生産計画である。平成のコメ騒動は冷夏が原因と言われているが、根本的な原因は減反である。

当時の潜在的な生産量1400万トンを減反で1000万トンに減らしていた。それが不作で783万トンに減少した。

しかし、通常年に1400万トン生産して400万トン輸出していれば、冷夏でも1000万トンの生産・消費は可能だった。今は水田の4割を減反して生産量を650万トン程度に抑えている。同じく補助金を出しながら、欧州連合(EU)は過剰農産物を輸出で処理した。

EUなら平成のコメ騒動は起きなかった。

なぜ、農林水産省は余裕のない生産を行わせるのだろうか? それは、食料の需要と供給の特性と関係がある。

胃袋は一定なので、毎日の消費量に限界がある。テレビの価格が半分になると、もう1台買おうという気になるかもしれないが、コメの値段が高くても低くても消費量はそれほど変わらない。

消費量が大きく動かないので、キャベツの生産が増え、それを市場でさばこうとすると、価格を大幅に下げなければならない。

「豊作貧乏」である。逆に、長雨などで不作になると、どうしても一定量は食べなければならないので、価格は高騰し、売上高は増加する。

このように、食料の需要の特性から、供給がわずかに増えたり減ったりするだけで価格は大きく変動する(これを、経済学では食料の需要は「非弾力的」だと言う)。

他方で、食料を供給するのは農業である。特に、コメなどの穀物は温帯では基本的に年に一作である。今回のインバウンド消費の増加のように、需要が増えたからといって生産を急に増やせない。

4月以降、インバウンドによる消費の増加が分かったとしても、既に今年産のコメの作付けは終わっている。生産が対応できるのは来年産で、収穫できるのは来年9月以降である。

つまり、消費の増加に生産が対応するのに、1年以上かかってしまうのである。

農業による食料供給の特性からも、需要がわずかに増えたり減ったりするだけで、価格は大きく変動する(短期的には、食料の供給は完全に「非弾力的」である)。

これまで需要は減少する一方だったので、毎年需要が10万トン減るという前提の需給計画を作ってきた。

需要が非弾力的なので、わずかな供給の増加によって米価は大きく下がる。これを避けるためには、できる限り生産を抑制する必要があった。

今回のように需要が増加する事態は想定外だった。今回は猛暑で1等米の比率が減少し、コメの流通業者が割れたコメや被害を受けたコメなどを流通から排除した。

インバウンドなどで消費も増えた。これらはコメ全体の需給からすればわずかだったにもかかわらず、米価は上昇した。

JA農協と農林水産省の大罪

減反は今も続いている。減反廃止は安倍内閣のフェイクニュースである。

14年に農林水産省、自民党農林族、JA農協は、国から都道府県などを通じて生産者まで通知してきたコメの生産目標数量を廃止する一方、減反政策のコアである補助金は大幅に拡充した。

これを政権浮揚に使おうとした安倍晋三首相は「40年間誰も出来なかった減反廃止を行う」と大見えを張った。面白いことに、07年に安倍首相自身全く同じ見直しをして撤回していたのである。しかし、当時は誰も減反廃止とは言わなかった。廃止ではなかったからだ。

減反を見直した農林水産省などの当事者は「廃止ではない」と明白に否定していた。減反の本質は補助金で生産(供給)を減少させて米価を市場で決まる水準より高くすることである。減反廃止が本当なら、米価は暴落する。

環太平洋連携協定(TPP)参加どころではない。農業界は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、永田町はむしろ旗で埋め尽くされる。もちろん、そんなことは起きなかった。

減反は水田面積の4割に及ぶ。減反は生産を抑える政策で、コメの面積当たり収量(単収)を増加させる品種改良は国や都道府県の研究者にとってタブーとなった。

単収とは生産性に他ならない。減反開始時には日本と同じ水準だった米カリフォルニアのコメ単収は、今は日本の1.6倍。情けないことに、1960年ごろは日本の半分しかなかった中国にも追い抜かれてしまった。

水田面積全てにカリフォルニア米ほどの単収のコメを作付けすれば、長期的には1700万〜1900万トンのコメを生産することができる。

単収が増やせない短期でも、900万トン程度のコメは生産できる。輸出を行わないで国内だけでこれを処理しようとすると、米価は暴落する。

このため50年以上にわたる減反政策でコメ生産を減少させ、米価を維持してきたのだ。

これほどの期間と規模で減反をしている国は世界に類を見ない。60年から世界のコメ生産は3.5倍に増加しているのに、日本は補助金を付けて4割も減らした。

減反はJA農協発展の基礎である。米価を高く維持したので、コストの高い零細な兼業農家が滞留した。

彼らは農業所得の4倍以上に上る兼業収入(サラリーマン収入)をJAバンクに預金した。また、農業に関心を失ったこれらの農家が農地を宅地などに転用・売却して得た膨大な利益もJAバンクに預金され、JAは預金量100兆円を超す「メガバンク」に発展した。

減反で米価を上げて兼業農家を維持したことと、JAが銀行業と他の事業を兼業できる日本で唯一の法人であることが絶妙に絡み合って、JAの発展をもたらした。

米価が下がるとコメ生産が維持できなくなるのではないかと指摘される。しかし、コメ生産を維持するために、コメの生産量を減少させる(減反である)というのは矛盾していないか。

また、米国やEUは農家の所得を保護するために、かなり前から、高い価格ではなく直接支払いという政府からの交付金に転換している。

よく私は「欧米では農業保護のやり方を高い価格ではなく財政からの直接支払いという方法に転換したのに、なぜ日本ではできないのですか?」という質問を受ける。

農家にとっては、価格でも直接支払いでも同じだ。なぜ、日本の農政は高米価に固執するのか。それは、欧米にはなくて、日本にあるものがあるからである。

米国やEUにも農家の利益を代弁する政治団体はある。しかし、これらの団体とJA農協が決定的に違うのは、JA農協それ自体が経済活動も行っていることにある。このような組織に政治活動を行わせれば、農家の利益より自らの経済活動の利益を実現しようとする。その手段として使われたのが、高米価・減反政策である。

米価を下げても主業農家に直接支払いをすれば、主業農家だけでなくこれに農地を貸して地代収入を得る兼業農家も利益を得る。

サラリーマンの兼業農家に所得補償(直接支払い)は必要ない。しかし、農協には直接支払いが交付されない。

価格低下で販売手数料収入は減少するし、零細兼業農家が農業をやめて組合員でなくなれば、JAバンクの預金も減少する。農家戸数が減少するため農協は政治的にも基盤を失う。

なぜ農林水産省は対策を講じないのか

コメは一年一作である。9月ごろに収穫したものを倉庫で保管し、翌年の収穫時までならして販売・消費するのが基本である。最近になってスーパーの店頭からコメが消えているのは、今の時期が次の収穫前の端境期になっているからである。

しかし、昨年産米が高温障害を受けていたことは1年前に分かっていたのに、100万トンのコメを備蓄している政府(農林水産省)もコメを農家から集荷して卸売業者に販売するJA農協も、なぜ今まで対応してこなかったのだろうか。

数年前からJA農協と農林水産省は、農家にもっと生産を減らすように指導してきた。コメの全農と卸売業者との取引価格(相対取引価格)は、60キログラム当たり、2021年産1万2804円から、22年産1万3844円、23年産1万5306円(7月は1万5626円)となり、この2年間で20%も上昇した。

10年ぶりの高米価である。さらに、今年(24年)産の早期米(他の産地よりも早く出荷されるコメ)の概算金(JA農協が農家に支払う仮払金)の価格は、鹿児島県産コシヒカリで1万9200円と前年産より6000円高い。農林水産省としてはシナリオ通り米価を上昇させて満足しているのだ。

だから、農林水産大臣は、7月19日の記者会見で、「私自身は、需給が引き締まっているということで、特段、これによってさまざまな対応をするというような状況にはないと思っています」と述べているのである。

米価の上昇はJA農協と農林水産省にとって成果以外の何物でもない。

コメが不足したからといって、備蓄米を放出すれば、供給が増えて米価は元の水準に戻ってしまう。

コメ不足は解消されるか

農林水産大臣は、8月2日の記者会見で、「収穫の早い産地は、今月には新米が出回り始め、9月からは主産地の出荷も始まります。消費者の皆様方におかれましては、安心していただき、普段通りにお米をお買い求めいただきたいと思います」と述べている。

これを受けて、9月になれば新米(24年産米)が供給されるので、コメ不足は解消されるという報道も見られる。

しかし、そうだろうか。基準年を一昨年の9月から昨年の8月までとして、これに対する生産と需要の変化を見よう。昨年の9月から今年の8月までの期間の供給主体となる作年(23年)産のコメは減反により前年産より9万トン少なかった。

これに猛暑による精米歩留まりの減少が20万トンであったとすると、供給量は基準年に対し29万トン少なくなる。消費(昨年の7月から今年の6月まで)について農林水産省は、インバウンドなどで11万トン増加しているとしている。

以上から、コメの不足量は40万トンとなる。これを今年産の早期米で早食いすれば、40万トンの不足は次の期(今年の9月から来年の8月まで)に持ち越されることになる。

では、次の期のコメの需給はどうなのだろうか。この期間の供給の主体となる今年産もコメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)をしているとすれば、その供給量は基準年に供給された22年産に比べ20万トン少ない650万トンとなるはずである。

しかし、農林水産省は669万トンになるという見通しを公表している。その根拠は明らかではないが、農林水産省の見通しが正しいとすれば、基準年に比べ供給量は1万トンの減少となる。

インバウンドなどの需要が今年と同様であるとしても、基準年比では11万トン増である。つまり、今年産米が農林水産省の見通し通りだったとしても、基準年より12万トンの不足(減反を予定通り行っているとすれば31万トンの不足)がある。

これに今年産米を先食いした40万トンの不足が加わる。減反を考慮しなくても次の期の不足は52万トンとなる。

さらに、今年産のコメが猛暑の影響を受けるかどうかは、これからである。胴割れ米などが起きるのは穂が出てから10日間高温にさらされていたかどうかである。

今年も昨年並みの高温だった。

また、台風の影響により、イネの倒伏や日照不足による不十分な登熟が起きる可能性がある。今年も昨年と同様の被害を受けているとすれば、不足は72万トンとなる。

1等米の比率は年々低下しているので、これだけでは済まないかもしれない。

以上の不足分52万〜72万トンを次期に早食いするとすれば、不足はその次の時期に持ち越される。永遠に不足が続く。

減反を止めれば、この問題は解消できる。1700万トン生産して1000万トン輸出していれば、国内の需給が増減したとしても輸出量を調整すればよいだけである。国内でコメ不足は起きない。

コメの輸出が増えている。今ではカリフォルニア米との価格差はほとんどなくなり、日本米の方が安くなる時もある。減反を廃止すれば価格はさらに低下し、輸出は増える。

国内の消費以上に生産して輸出すれば、その作物の食料自給率は100%を超える。上記の場合、コメの自給率は243%となり、全体の食料自給率は60%以上に上がる。

最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産と輸出である。平時にはコメを輸出し、輸入途絶という危機時には輸出に回していたコメを食べるのである。平時の輸出は、財政負担の必要がない無償の備蓄の役割を果たす。

1700万トンあれば、危機時に必要量を確保できる。

しかし、減反は廃止できない。

農林水産省が目を向けるのはJA農協であって国民ではないからだ。

農林水産省は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とする日本国憲法第15条第2項に違反している。コメ不足を解消する最善の政策は農林水産省の廃止かもしれない。

 

『金融財政ビジネス』2024年9月9日号に掲載

 

2024年10月28日掲載

 


コメ問題の本質

2025年05月31日 08時18分41秒 | 社会・文化・政治・経済

鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日

 
備蓄米放出が発表されたが、コメ価格はさらに上昇している。コメの「不足感」が極めて大きいと言わざるを得ず、「コメ供給は不足していない。流通に問題が生じているだけ」との説明は、いよいよ無理が出てきた。

21万トンは「消えた」のではなくて、大手の集荷業者に集まらず、他に流れたのが21万トンあるということで、「誰かが隠している」と同義ではない。飲食業界などがコメ調達の懸念から農家からの直接買い付けを増やしていることなども大きいのではないか。

大手の集荷業者が集荷できなかった分を補充することによってコメが届くのは大手スーパーなどの流通ルートであり、町の米屋さんなどには行きわたらないとの見方がある。また、放出後、原則として1年以内に同じ量を買い戻すとしているので、結局、流通量は変わらないことが織り込まれる可能性もある。

流通悪玉論は本末転倒だ。「買いだめ」が起こっているとしても、市場関係者が「不足感」を感じているからビジネスチャンスとして様々な動きが出るのであって、それを誘発した原因はコメが足りていないことにある。

その根底には、実質的に続けられてきた生産抑制政策と「畑地化」による水田潰し政策と時給が10円しかないような農家の疲弊に、暑さの影響(低品質米の増加など)も加わって主食米供給が減りすぎていることがある。

全国の現場の声を聞くと、2024年産米が豊作だったという作況指数に疑問がある。そもそも、①それほど収穫できていない、かつ、②低品質なコメが増えて、玄米から精米にしたときの歩留まり率が落ちている、との見方が多い。白いコメ、割れたコメ、カメムシ斑点米なども多いという。精米歩留まり率は、9割くらいが8割近くに落ちているとの情報もある。

米価が上がったといっても農家からすると30年前の価格に戻っただけで、やっと一息付けるかという程度で、すでに疲弊している現場の生産が一気に増えるのは難しいと流通業界も見込んでいる。水田を潰して現場農家の疲弊を放置する政策が続けば、趨勢的に「コメ不足」は続く。

「農協がコメ価格を吊り上げている」との見解も実態と乖離している。農協は今コメが集まらず困っている。共販で、概算金18,000円/60kg、あとで5,000円追加払いの見込みでも、農家は22,000円とかで即買いに来る業者に売ってしまいがちになる。

根底にあるのは、農家が赤字でやめていくのを放置して、減反要請を続け、田んぼを潰せば一時金(手切れ金)だけ払うからもうやめなさい、と誘導して、農村現場を苦しめてきたツケである。農業予算を削りたい財政当局の強い意志がある。

需要が減るから生産も減らし続けていくという政策を続けたら「負のスパイラル」で、日本の稲作とコメ業界は縮小していくだけである。日本農業の根幹と日本人の主食が失われ、一時的に輸入に頼っても、それが滞れば日本人は飢える。

生産調整から需要創出へ切り替えなくてはいけない。日本の水田をフル活用すれば、今の700万トンから1,300万トンにコメ生産を増やせる。コメ需要はないというのは間違い。備蓄が消費量の1.5 か月分では少なすぎる。備蓄は安全保障上の需要だ。小麦やとうもろこしの輸入が減るリスクも高まっている中、コメのパンや麺、飼料米を増やすのは安全保障上のコメ需要で、貧困層増大の下でのフードバンクや子ども食堂を通じたコメ支援も必要だ。備蓄とそれらを合わせたらコメ需要は膨大にある。

コメは余っているのに流通に支障が生じたから備蓄米を「活用」するのであって、足りないから「放出」するのではないと、つまらぬメンツにこだわり続けていたら事態は悪化するだけだ。備蓄米の放出ルールも明確化すべきだ。放出基準価格を2万円にし、買戻基準価格を15,000円としたら、その範囲内に米価が収まるように調整が働く。明確な数値の発動基準にして、関係者がそれを目安に動けるようにすべきである。

消費者もコメが高いと言うが、農家にとっても消費者にとっても30年前の米価に戻っただけである。30年前には、小売米価は5kgが4,000円以上していた。しかし、消費者にとっても所得も減る中で、急激に米価が上がって苦しいのは確かだ。今、農家にとっての適正米価と消費者にとっての適正米価が乖離している。増産を促し、下がった米価でも農家の所得が得られるように支援することで、消費者も安く買えるようにして、市場拡大する必要がある。緊縮財政の壁を打破して実現してほしい。


「無礼者!戻れ!」斎藤知事 第三者委の「漏えい指示」

2025年05月30日 01時07分57秒 | 社会・文化・政治・経済

指摘後初の定例会見で怒号…「延長」要望噴出も最後まで平行線

配信

(写真:時事通信)