ビル街の薄暗い一画、聞いていた場所に確かに占いの爺さんがいた。
茶坊主のような、どっからどう見ても占い師のいでたち。丸眼鏡の奥の目でオレを見上げた。
「いらっしゃい」
酒臭~い。昼間から飲んでやがったな。
「爺さん、ウワサで聞いたぞ。あんた、人の未来が見えるんだってな?」
「フム、確かに見える。水晶玉をとおして客の未来の顔がハッキリとな。ただし、明日の顔だけじゃよ」
「明日が見えれば問題ない。オレは、明日、小学校のときのクラスメートだったミヨちゃんとデートの約束をしてるんだ。10年ぶりに会うんだぞ。テヘヘ」
「そりゃ、楽しみですねぇ」
「オレはガキの頃からどうもカンシャクもちでイケねぇ。そんなオレにミヨちゃんだけは、ズケズケ文句ゆうんだ。憎まれ口叩き合っていたけど、気がついたら惚れちまってたんだなぁ。テヘッ」
「いいですなぁ、初恋ってヤツですな」
「おう。なにせ10年ぶりだからなぁ。うまく話せるかなぁ。明日の様子、知りたくってなぁ。爺さん、頼む。占ってくれ」
「よろしい。ここに座って」
爺さん、テーブルの下から紫の繻子にくるんだ水晶玉を取り出した。
「ほう、これがその水晶かい。な、本当に見えるんだろうな?」
「うむ、水晶というカメラをとおして見るみたいな感じかの。客の顔がそのまま見えるにすぎん。ただ、その顔は24時間後の顔じゃ」
「そんだけじゃ、未来かどうか、わかんねぇだろ?」
「イヤイヤ、満面の笑みや憂鬱な表情を見れば、何が起きたか、たいがいのことはわかろうというものじゃ」
「なるほどね。そんなに正確かい?」
「怖いほどにの。あるとき、顔が見えず水晶玉は白いモヤモヤのままじゃった。翌日、客の家は大火事、煙に包まれたそうじゃ」
「へぇ、そりゃブルっちまうなぁ」
「占ってみますかの?」
「頼む!」
占いの爺さんはオレの前に水晶玉をかざし、透かして凝視した。
ムムッ
爺さんの顔が見る見る真っ青になる。
「ど、どうしたんだ、爺さん?」
「イ、イヤ・・・金はいらない。帰りなさい」
「何言ってやがる。そんな言われ方されて、スゴスゴ帰れるかよ!爺さん、教えろ。教えないとシバくぞ!」
「ホント、カンシャク持ちじゃな。なら言おう。水晶玉が真っ暗なんじゃ。アンタの姿が見えん。どういう意味かわかるか?明日がないんじゃ、アンタには!」
「んなワケねぇ!明日は大切なミヨちゃんとの。ざけんなぁ!!」
ああ、カッと血がのぼって。
悪いクセが出て。
気がついたら、占いの爺さんをボコボコに。
テーブルやら椅子やらはバラバラ、その上に顔面を抱えた爺さんがのびている。
どうすればいいんだ、オレは?明日がないオレはいったい・・・ああ、ミヨちゃん!
ウウ・・・
走り去ろうとすると、爺さんのうめき声。
振り向くと、起き上がろうとする爺さん、両目の周りがパンパンに腫れ上がっている。明日一日は、何にも見えないだろう。
ア・・・
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そうかそうか、占い師がお客の24時間後の顔を水晶を通して見ると言う事ですね。
つまり、水晶玉は24時間後の占い師の目と繋がっているわけでしょ。
いやいやそれではおかしいか。
24時間後には占い師は男の前にはいないはずだからね。
24時間後のお客の顔を水晶玉が時間を超えて中継する感じなのかな。
いや、それでは見るのは今の占い師だからちゃんとお客の顔は見えるのか。
つまり、24時間後の…
わからん!
もう一度整理しますね。
水晶玉が真っ暗だと言う事は、普通に想像すれば、24時間後にはお客は死んでいると言う事でしょ?
でもそれではショートショートとしてありふれているので、も少しひねりたいわけですよね。
で、占い師の目が腫れて両目が見えないと言う事にした。
ここまではいいですね。
まず、水晶玉がどういう作用をしているかですね。
水晶玉が24時間未来を映すタイムカメラみたいな物だとすると、見るのは現在の無傷の占い師なので、ちゃんと未来が見えるはずです。
と言うことは水晶玉の働きはそうではない。
わかった!
占い師は男の顔を空間を超えて見る事が出来るんです。
でも、それは時間を超える事は出来ない。
時間を超える力があるのは水晶玉なんですよ。
占い師は24時間後に空間を超えてお客の顔を見ている。
さらに今の占い師が水晶玉で時間を超えて自分が見ている物を見る。
こういう感じでしょうか?
でもまだそうだと決まったわけではないですね。
お客の男がそう思っているだけですからね。
男が死んでしまっていると言う可能性の方が大きいと思います。
または、傷害罪で捕まって、警察で暴れまわるので、拘束服を着せられ、目隠しをされているとか。
ショートショート1本書くより考えました(笑)
これはないですね。
男は見られる方ですから。
なんて、私がかしこまった言い方をすると、
虎犇さん、なんかイヤ~な予感がするでしょう?(笑)
そのイヤ~な予感は、的中です。(*v.v)。
実は、「ボクはカメレオン」の動画が、順調に(?)閲覧数を伸ばしています。
そこで、ご相談なのですが、朗読も吹き込ませていただいてもよろしいでしょうか?
但し、元画像はすでに削除しているので、作り直しをしなくてはなりません。
ここで、大きな問題がもう一つ!朗読を入れる事により、閲覧数が減るという危険もあります。(´;ω;`)ウウ・・・
なので、今のはそのままで、新規にと思っているのですが……。いかがでしょうか???
災難ですねえ。
こんな癇癪持ちは、ミヨちゃんにも振られてしまうんじゃないでしょうかね。
相手が占い師じゃなくてやくざだったら、本当に明日がなくなりますね^^
一夜限りなんてナシですぜっ
ハマッてますなあ(笑)
こういう特殊な職業があいますよね。
そんなことより、なんだか突き指したみたいで
左の中指が痛いんです。
で、今キーボードを中指使わないで打ってます。
不便ですねえ。
水晶玉って、いつから占いの道具になったんでしょうね。
キンタマで占うこともできるかもしれません。
なんて、露骨な下ネタ!
中指使えないって不便だろうなぁ。多少指が動かなくても他の指で補って日常生活で他にあまり困らないけど、キーボードだけはダメッすねぇ。