カキぴー

春が来た

「DCー10」を、空母に着艦させる話。

2011年04月15日 | 乗り物
快晴のサンフランシスコ国際空港滑走路28-Lから、センチュリー航空101便・DC-10-30型機が離陸し、1万1000キロ離れた北京へ向かった。 この機は中国本土直行の第1便で、アメリカ副大統領夫妻をはじめ国務長官、中国駐在大使、センチュリー航空社長など多くのVIPや政府関係者、報道関係者、警備要員などの乗る特別フライトで、11時間に及ぶ飛行に備え、フライトエンジニアを含む4人のパイロットが乗務している。 他にセンチュリー航空を引退したばかりの名パイロット「ダンカン・マニング」が、合衆国大統領の特別招待客として搭乗していた。

東京国際空港との中間に設定する 「ポイント・オブ・ノーリターン」(最終引返し点)を通過して間もなく、過熱気味だった第3エンジンが砕け散った・・・すざまじく、完璧に。  多くの金属片が翼の下側や機体に突き刺ささり、第3エンジンの燃料残量計のデジタル表示がみるみる200ポンド下がっていった。 コクピットではパイロットが瞬間的に酸素マスクをつけ、毎分1000フィートで機を降下させ始めた。 応援のためコクピットに駆けつけたマニングが訊ねる、 「左右の燃料バランスの限界はフライトマニュアルで幾らだ?」 「・・4000ポンド・・」 計器は重量差限界の7000ポンドを指しており、すぐに燃料投棄を指示した。 

ざっと計算して飛べるのはあと2時間、アリューシャン列島の米軍基地は雪で閉鎖、ミッドウェーまで1105マイルは遠すぎる。 残るはカムチャッカ半島の先端にあるコジルクフスコエだ、そこはソ連領だが・・・」。  「その飛行機をソ連へ着陸させてはいかん!」 緊急連絡で晩餐会から呼び出された合衆国大統領は命じる。 打ち明けられない重大な理由があったのだ。 苦渋の判断で101便を不時着水させることが決まり、ミッドウエーの北で演習中の米空母艦隊10隻を、着水区域に向かわせる。 

大統領はマニングを呼び出して訊ねる 「空母ヴァリアントは一昨年完成した世界最大の原子力空母だ、DC-10はその空母に降りられないだろうか?」。 マニングは情報を集めて計算する。 ストール・スピードは余裕を見て110ノット、空母は45ノットで風上に向かっている。 風速は15ノット、つまり機は50ノットのスピードで着艦できる。 着艦に使う斜め甲板の長さは800フィート、幅の方はかなり厳しいが273フィート・・・「降りられるんだ!」。  

マニングはらくらくと飛ばした。 いい感じだ!320度から風速18ノット、ギア・ダウンしフラップを下げると進入角度表示電波をキャッチした計器バーがゆっくり下がった。 フラップを最大の50度にし、グライド・スコープに乗せ続けるためパワーを少し入れる、スピード115ノット、機体は飛行と失速とのきわどい狭間にある。 高度50フィート、30,20・・ 車輪が金属製の甲板を激しく叩き4本のタイヤが破裂した。 間髪を入れずブレーキを踏むとウイングスポイラーが自動で開き、滑走制止用ネットをかぶった全長182フィート、翼幅165フィートの巨体が、甲板の先端から28フィート手前で停止した・・・。  このストリーは現職ライン・パイロット 「オースチィン・ファーガンス」の小説 「101便 着艦せよ」。 プロットのたて方に難はあるものの、緊迫した流れはそれを忘れさせ、充分に楽しませてくれる。 



 


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