マレーシア機撃墜 エイズとの闘いに大打撃 多数が国際会議関係者
産経新聞 7月19日(土)7時55分配信
「報道が事実だとすれば今日は国際エイズ学会(IAS)にとって悲しい一日です」。世界最大のエイズ対策専門家集団であるIASは18日、マレーシア航空17便に関する声明を発表した。乗客の身元確認もできない段階での早期声明は、世界のエイズ対策へ与える衝撃の大きさを物語るものだ。
IASはまた「エイズとの闘いにささげた仲間の献身に応え会議は予定通り開催する。その中で追悼の機会を設ける」とも発表した。
マレーシア航空17便の乗客283人の中には、オーストラリアのメルボルンで20日開幕予定の第20回国際エイズ会議に参加するヨーロッパのエイズ研究者やエイズ対策の非政府組織(NGO)関係者が多数、乗っていたと伝えられる。乗客の3分の1を超える100人以上が国際エイズ会議関係者だとの報道もある。
また、報道ではIAS元会長のヨープ・ランゲ博士夫妻も乗客に含まれていると伝えられており、声明は「事実だとすればエイズとの闘いは文字通り巨人を失う」と述べている。
国際エイズ会議は隔年開催の大規模会議で、第20回メルボルン会議は「ペースを上げよう」をテーマに世界中からエイズ研究者、医師、エイズの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染したHIV陽性者組織の代表、エイズ対策のNGO関係者、各国政府保健担当者ら約1万5千人の参加が予定されている。
開幕前日の19日にはIAS主催で、HIV感染の治癒に向けた研究の進展状況を検討するシンポジウムが予定されており、ヨーロッパの第一線の研究者の多くが18日中にメルボルンに到着できるようマレーシア航空17便を利用していたとみられる。
ランゲ博士は2002年から04年までIAS会長をつとめ、HIV陽性者の長期生存を可能にする抗レトロウイルス治療の普及に取り組んだ功績はいまも高く評価されている。(宮田一雄)