どこまで進む? 再生可能エネルギー

2014-04-29 06:07:23 | 自然エネルギー

どこまで進む? 再生可能エネルギー】東京農工大学大学院教授・秋澤淳氏

 ■光発電の次は太陽熱利用の時代に

 省エネ社会の実現が要請されているが、電力需給の逼迫(ひっぱく)から現在は節電が中心だ。東京農工大学大学院の秋澤淳教授は、根本的な省エネは熱利用にあるとし、「太陽熱利用を本格化すべきだ」と指摘する。

 --本格的な省エネ社会とは

 「節電は電力使用量のピークを下げるには効果があるが、根本的な省エネはエネルギー消費量全体を下げることだ。そのためには排熱利用が必要だ。しかし、インフラがないため住宅やビル、または工場間でも余った熱をやり取りできずに捨てている。配管を敷けばできるが、初期投資が大きいため実現していない。街づくりから考えて面的に融通できるようにすれば、再生可能な太陽熱ももっと使いやすくなり、真の省エネにつながる。国も熱利用を推進する意識を持ち始めており、太陽熱だけでなく、

バイオマスなどの熱利用が進んでほしい」

 --太陽熱利用はなかなか進んでいない

 「現在は太陽光発電が主流で、熱利用に関心が持たれていないが、発電の次は熱利用の時代だと思っている。一般家庭の屋根で3キロワットの太陽電池を設置するには20平方メートル程度の面積が必要だが、熱利用だと4~6平方メートルで済む。家庭のエネルギー使用の3分の1は給湯だから、都心の狭い屋根では太陽熱利用に注目してもらった方がいい。家庭用だけでなく、業務用や産業用でも広げていくべきだ」

■ --低い温度の熱利用の研究をしている

 「これまで150度以下の熱は、質が低いためほとんど利用されていないが、工場のプロセス冷却や空調・給湯に利用できるように吸収冷凍機と吸着冷凍機を研究している。吸収冷凍機は、排熱を遠隔地でも利用できるようアンモニア水溶液を使って熱に変えずにロスなく輸送して輸送先で冷熱として使う。実現すれば、排熱利用のミスマッチをクリアできる。このシステムは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実験を行っている。一方、吸着冷凍機は、乾燥剤のシリカゲルが水を吸収して冷水を取り出し、低温でも動くようにする。太陽熱利用など低温駆動に合うシステムで、東京都小金井市の農工大キャンパスで実験機が動いている。また、太陽光を効率よく集光するレンズの開発にも取り組んでいる」

                   ◇

【プロフィル】秋澤淳

 あきさわ・あつし 1985年東京大学工学部卒。三菱総合研究所を経て95年東大大学院工学系研究科博士課程修了、東京農工大学専任講師。2007年東京農工大教授。再生可能エネルギー協議会実行委員会分科会3(太陽熱利用)リーダー。52歳。神奈川県出身。



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