湯けむり発電 国の支援事業に認定

2013-02-21 22:20:19 | 自然エネルギー

再生可能エネルギーへの関心が高まるなか、全国有数の温泉地を抱える大分県の中小企業のグループが開発した、温泉の蒸気と熱水を活用した「湯けむり発電」と呼ばれる新しい技術が、国が支援する事業に認定されました。

「湯けむり発電」は、温泉の井戸から噴き出す蒸気と熱水を使ってタービンを回し発電する仕組みです。
大分県の中小企業のグループが別府市で実験を重ねてきましたが、縦1メートル50センチ、横1メートルの小型の装置1つで、一般家庭、数世帯分に相当する電気を作ることに成功しました。
この湯けむり発電の技術は、今月、経済産業省が支援する事業に認定され、21日、装置の開発や設計を担う会社の林正基社長が県に報告に訪れました。
認定により、3000万円を上限に補助金が出るほか、低金利で融資を受けられるということです。
今後、改良を進め、最終的には装置1つで一般家庭およそ100世帯分の電力を賄えるまで発電量を増やせる見通しで、ことし4月以降に実用化し、九州電力に買い取ってもらうことになっています。
林社長は、「実用化に向けて大きな一歩となった。まずは全国一の温泉地、別府市で技術を確立させ、全国に湯けむり発電を広げていきたい」と話しました。
グループでは、別府市をはじめ、温泉地がある長崎県や熊本県などでも実用化を目指し、5年後までに全国40か所の温泉井戸に「湯けむり発電」の装置を設置したいとしています。
発電の仕組み
「湯けむり発電」は、まず温泉の熱水で1つのタービンを回し、さらに蒸気も使って2つ目のタービンを回転させます。
この2系統の回転の力で1つのモーターを回して電気を作ります。
熱水と蒸気に分け、効率よく温泉のエネルギーを活用することで、より大きな電力が生み出せるよう工夫されているということです。
背景事情と意義
「湯けむり発電」の強みは、これまでの地熱発電に比べてコストが格段に安く、環境への負担も少ないことです。
火山が多く地熱エネルギーが豊富な日本では、これまで地熱発電に期待する声が多くありました。
しかし、地熱発電で使う高温の蒸気は、地下1キロから3キロという、地中深くから取り出す必要があります。
この穴を掘るだけで数億円の費用がかかり、発電のための巨大な施設も必要になります。
また、火山があって地熱発電に使えるほどの高温の蒸気が得られる場所は、その多くが国立公園や国定公園にあり、思うように開発できません。
地下水や温泉資源に悪影響が出るのではないかという懸念もあって、これまでなかなか実用化が進んできませんでした。
これに対し、「湯けむり発電」は、熱水がすでに噴き出している温泉地の井戸をそのまま利用するため、新たに深く穴を掘る費用はかからず、3000万円から5000万円ほどのコストで、すぐ発電を始められるということです。
さらに、発電に使われた熱水は、そのまま温泉水としても利用できるうえ、比較的小さな装置を設置するだけで済むため、観光地の景観を損なうおそれも少ないということです。
国も支援に乗り出すなか、再生可能エネルギーの新たな可能性を広げることができるのか注目されています。