goo blog サービス終了のお知らせ 

原発賠償 8割で半額以下算定

2014-09-02 14:20:43 | 原発

東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」が、避難後に死亡した人の慰謝料に関して示した約120件の和解案のうち80%超で、「原発事故の影響の度合い」を5割以下と算定していることがセンターへの取材で分かった。避難後の自殺に関し約4900万円の賠償を命じた先月26日の福島地裁判決は「8割」と認定しており、原発ADRで慰謝料が低く抑えられている実態が裏付けられた。【高島博之】

◇裁判では「8割賠償」認定

  センターは、和解案で提示する死亡慰謝料を「基準額」×「原発事故の影響の度合い(%)」で算定する。このため、度合いに関する判断は支払額を大きく左右する。

  取材に対するセンター側の回答や、被災者側弁護団に対するセンターの説明を総合すると、これまで示された死亡慰謝料に関する和解案は約120件。原発事故の影響の度合いで最も多いのは「5割(50%)」で、五十数件と全体の四十数%を占めた。さらに「5割未満」も約40%あり、「5割超」は20%弱しかなく、80%超は5割以下だという。

  センター側は基準額についても、交通事故の賠償額より数百万円低い2000万円未満に設定している。このため、和解案額の平均は数百万円にとどまるとみられる。

  死亡慰謝料算定を巡っては、内部文書の存在が既に明らかになっている。文書は因果関係が相当に認められる場合「一律5割」、5割の判断に無理がある場合「例外的に1割」などと記載しており、これに沿った判断が積み重ねられているとみられる。

  一方、避難中に自殺した女性(当時58歳)の遺族が起こした損害賠償訴訟で、福島地裁は強いストレスを重視した。原発事故の影響の度合いを8割と認定して、東電に約4900万円の賠償を命じた。

  この訴訟の中で、東電は文書を提出。原発ADRで(1)避難区域から県外に避難した男性(当時30歳)や、旧緊急時避難準備区域に住む女性(同63歳)が自殺したケースで、原発事故の影響を各10%(2)自主的避難等対象区域の農業男性(同64歳)が自殺した事案で30%--と算定していることを挙げ、裁判でも原発ADR同様、原発事故の影響の度合いを低く算定するよう主張していた。

  ◇定額算定に不信感

  福島地裁の訴訟で自殺した女性側の弁護団に加わっている中川素充(もとみつ)弁護士は「避難中に亡くなった人は、女性と同じようなストレスを抱えていたはず。『一律5割』といった安易な判断はできないはずだ」と、原子力損害賠償紛争解決センターの姿勢を批判した。

  中川弁護士は2011年9月に結成された「福島原発被害首都圏弁護団」の共同代表を務める。弁護団は、自殺した女性の訴訟のほか、被災者282人が、東電と国に賠償を求めた集団訴訟を手がけるが、原発ADRはほとんど利用しない。その理由を中川弁護士は「和解案を作成するセンターの仲介委員(弁護士)が、東電が受諾できる範囲を考慮し、低額の和解案を作成する可能性があることを危惧していたから」と語る。

  今回、原発事故の影響の度合いを巡り、センター側が示した和解案の80%超で5割以下になることが明らかになり、不安は的中した。中川弁護士は「原発ADRが信頼できないことがはっきりした。誰のためにやっているのか疑問で、今後も依頼者が望まない限り、ADRは使わない」と話す。

  ただ、裁判は判決までに数年かかり、平均半年で終わる原発ADRよりハードルが高い。原発ADRへの申し立てを手掛けたことのある渡辺淑彦弁護士(福島県弁護士会)は「迅速さや、立証が裁判より簡易である点はADRの利点だ。しかし、5割以下が多いのは問題。センターは、福島地裁判決が示したように、避難生活の困難さを直視するよう姿勢を改めるべきだ」と話した。【高島博之、関谷俊介】


原発安全対策に2・2兆円 40年運転では回収困難

2014-08-29 16:38:51 | 原発

原発安全対策に2・2兆円 40年運転では回収困難

 東京電力福島第1原発事故後、電力9社が原発(47基)に投じる安全対策の総額が約2・2兆円に膨らみ、原子炉等規制法で定められた運転期間(40年)を超えて長期運転しなければ、電気料金からの投資回収が一部で難しいことが、西日本新聞が実施した9社へのアンケートで分かった。原発再稼働に向けて新規制基準をクリアするには多額の安全投資が不可欠だが、投資するほど原発は止められず、脱原発を望む世論とは懸け離れる。

<電力9社アンケート まとめはこちら>

 本紙は、昨年施行された新規制基準で、事故時に原子炉格納容器の圧力を下げる「フィルター付きベント」の設置などが義務づけられたことから、電力9社に安全投資額や原発設備の資産価値(減価償却が終わっていない投資分、2013年度決算ベース)などを聞いた。

  それによると、原発の資産価値は9社総額で約2兆800億円。安全投資額も施設が完成した後に上乗せされ、資産価値は倍増する計算だ。

  原発の減価償却費は電気料金の原価に含まれ、料金から徴収する仕組みだが、慶応大の金子勝教授は「安全投資が資産価値を既に上回るような電力会社は、これまでと同じような償却を続けるなら、40年を超えて運転しなければ回収できないのは明らか。国や電力会社はそのことを、きちんと説明すべきだ」と指摘する。

  九州電力によると、玄海、川内両原発でベントや免震重要棟などの整備を含めた安全投資額は三千数百億円。両原発の資産価値(約2100億円)を守るために、1・5倍ほどの投資をする計算。電気料金単価に反映させると1キロワット時当たり1円の上昇に相当するといい、運転期間が40年以内の回収が難しい原発が出てくるとみられる。九電は今後、どの原発を何年運転するかの計画は明らかにせず、「(長期の減価償却で)十分に回収可能だ」と説明している。

  ほかにも、運転年数が20年以下の新しい原発を持つ電力会社は回収に自信を見せるが、再稼働を見通せない東京電力や、老朽化原発が多い関西電力は「安全投資と回収は今後対応を検討する」(広報担当)と慎重な回答にとどまった。


◆原発の減価償却制度◆ 減価償却は、資産取得時の投資額を、資産の利用期間に割り振って毎年の経費として計上する手続き。原発設備の償却費用は電気料金から賄う。安全投資などがあれば、原発の資産額はその分、上乗せされる。廃炉が決定すると利益を生み出さない設備となるため、未償却の費用を一括で損失計上しなければならなかった。だが、会計規則の見直しで一部の原発資産は、廃炉後も継続して減価償却できるようになった。
.
西日本新聞社


焼身自殺は原発事故が原因 東電に賠償命令

2014-08-27 18:06:10 | 原発

「自殺と原発事故に因果関係」東電に賠償命令

東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難を余儀なくされ、その後自殺した福島県川俣町の女性の遺族が起こした裁判で、福島地方裁判所は「自殺と原発事故の間には因果関係があり、生まれ育った地でみずから死を選択した精神的苦痛は極めて大きい」として、東京電力に対して遺族に合わせて4900万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
東京電力によりますと、原発事故が自殺の原因だとして遺族が訴えた裁判で、賠償を命じる判決が出たのは初めてだということです。

福島県川俣町の渡邉はま子さん(当時58)は、原発事故によって住んでいた山木屋地区から避難生活を余儀なくされたあと、一時帰宅をした平成23年7月、体にガソリンなどをかけ火をつけて自殺したことから、夫と3人の子どもが「避難生活でうつ病になったことが原因だ」として東京電力を訴えていました。
26日の判決で福島地方裁判所の潮見直之裁判長は、「女性は福島市内のアパートに避難して以降、うつ病を発症していた可能性が高く、いつ帰還できるか見通しが持てない状況で強いストレスを受けていた。
避難生活の再開が迫っていたことが直接の契機になって自殺したと認められ、自殺と原発事故の間には因果関係がある」と指摘しました。
そのうえで、「展望の見えない避難生活へ戻らなければならない絶望や、生まれ育った地でみずから死を選択することとした精神的苦痛は、容易に想像しがたく極めて大きい」として、4人の遺族に合わせて4900万円を支払うよう命じる判決を言い渡しました。
東京電力によりますと、原発事故が自殺の原因だとして遺族が訴えた裁判で、賠償を命じる判決が出たのは初めてだということです。
.

「寄り添った意義のある判決」

自殺した渡邉はま子さんの夫の幹夫さんは判決のあと記者会見し、「自分たち家族の思いに寄り添った意義のある判決をいただいたと思う。これまで悩み苦しんだ家族も救われる。山木屋地区の自宅に戻ったら、はま子の遺影に『ゆっくり休んでくれ』と報告したい」と話していました。
また、会見に同席した広田次男弁護士は判決について、「全面的な勝訴と評価できる。原発事故を原因とする裁判の先例としての意義は大きい。きょうの判決は、今後の別の裁判にも引き継がれ大きな影響を与えるだろう。東京電力はこの判決を真摯(しんし)に受け止めて控訴しないでほしい」と話していました。


「内容精査したうえで対応検討」

判決を受けて東京電力は、「渡邉はま子さんがお亡くなりになられたことについて、心よりご冥福をお祈りいたします。本件の対応に対する詳細は回答を差し控えるが、今後、判決内容を精査したうえで対応について検討してまいります。判決が言い渡されたのは事実であり、引き続き真摯(しんし)に対応してまいります」というコメントを出しました。


自殺までの経緯

自殺した渡邉はま子さんは、福島県川俣町の山木屋地区で夫の幹夫さんや子どもたちと一緒に暮らしていました。
この地区は福島第一原子力発電所からおよそ35キロ離れていたため、事故の直後には避難の指示は出されませんでしたが、1か月以上たってから「放射線量が比較的高い」として避難を求められ、自宅を離れることを余儀なくされました。
はま子さんは幹夫さんと共に親せきの家などを転々としたあと、福島市内のアパートに移りました。
原発事故の前、はま子さんは、近所の人たちを自宅に招待して一緒にカラオケをしたり、自分で育てた花をおすそ分けしたりするなど、社交的で明るい性格だったといいます。
しかし、夫婦で勤めていた農場の閉鎖や慣れないアパート暮らし、それに、子どもたちと離れて暮らすなどめまぐるしく環境が変わるなかで、はま子さんの様子に変化が見られるようになったということです。
はま子さんは「眠れない」と頻繁に訴えるようになったうえ、食欲も減り、将来を悲観することばが出るようになっていたといいます。
幹夫さんは、はま子さんが「山木屋に戻りたい」と言って泣いたことなどから、原発事故からおよそ3か月半後の6月30日に山木屋地区の自宅に2人で一時帰宅しました。
このとき、はま子さんは「ずっと残る」「アパートには戻りたくない」などと言って夜中になっても泣いていたということです。
そして翌7月1日の早朝、はま子さんは自宅の敷地内でみずからの体に火をつけました。
幹夫さんが見つけたときにはまだ一部火が残っていた状態で、火を払ったといいます。
はま子さんは救急搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。
遺書はありませんでした。


震災と原発事故理由の自殺者数は

内閣府のまとめによりますと東日本大震災と原発事故を理由に自殺した人は、震災が起きた年の6月から先月までのおよそ3年間で9つの都府県で130人となっています。
このうち、最も多いのは福島県で全体のおよそ40%に当たる56人、次いで宮城県の37人、岩手県の30人となっています。
福島県では、原発事故が起きた年の平成23年は10人でしたが、おととしが13人、去年が23人と増えているほか、ことしに入っても先月までの間に自殺した人は10人と、宮城の2人、岩手の1人に対して多くなっています。
福島県では、今回の川俣町の女性の裁判以外にも、原発事故を理由に自殺した人の遺族が東京電力に賠償を求める裁判は少なくとも2件ありますが、東京電力側はいずれも「原発事故が自殺の原因とは言えない」などとして争う姿勢を見せていて裁判が続いています。


どうする自民党?福島第1の汚染水遮断 「氷の壁」断念

2014-08-14 10:11:48 | 原発

福島第1、建屋の汚染水遮断 「氷の壁」断念を検討 ドライアイス効果なく

 東京電力福島第1原発海側のトレンチ(地下道)に滞留する汚染水を遮断するための「氷の壁」が3カ月以上たっても凍らない問題で、7月末から投入している氷やドライアイスに効果が見られないことから、政府が「氷の壁」の断念を検討し、別の工法を探り始めたことが13日、分かった。政府関係者によると、19日に原子力規制委員会による検討会が開かれ、凍結方法の継続の可否について決めるという。(原子力取材班)

  氷の壁は、2号機タービン建屋から海側のトレンチへ流れ込む汚染水をせき止めるため、接合部にセメント袋を並べ、凍結管を通し周囲の水を凍らせる工法。4月末から凍結管に冷媒を流し始めたものの、水温が高くて凍らず、7月30日から氷の投入を始めた。

  しかし氷を1日15トン投入しても効果がなく、今月7日からは最大27トンに増やしたが、凍結が見られなかった。

  12日までに投じた氷は計約250トンに上る。ドライアイスも7日に1トン投じたものの、小さい配管に詰まってしまい投入を見合わせ、12日に再開した。

  氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充填(じゅうてん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。

  規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。特に凍結管の中に冷媒を通して水分を凍らせる技術は、1~4号機周囲の土中の水分を凍らせる「凍土遮水壁」と同じで、氷の壁が凍土壁にも影響しないか懸念を示している。

  氷やドライアイスの投入について、東電の白井功原子力・立地本部長代理は「十分な検討が不足していたという批判はその通り。失敗を次の糧にしていく。当初予定していたことができないことはあり得る」と話している。


フランスが原子力発電に上限設定

2014-06-20 08:03:12 | 原発

フランスが原子力発電に上限設定

再生可能エネルギー生産の主な原動力は洋上風力発電設備の増強と電気自動車の普及促進

フランスは原子力に対する高い依存度を大幅に下げることを目指し、原発の発電能力に上限を設定する。

 社会党政権が18日に明らかにした「エネルギー転換法」はフランソワ・オランド大統領の選挙公約の1つを改めて打ち出したもので、現在は先進国最高の約75%に上るフランスの総発電量に占める原子力の割合を2025年までに50%に引き下げるという内容だ。

 
政府は左派および連立相手の緑の党からの圧力を受け、フランスは他国に後れを取っている非原子力の再生可能エネルギー分野での成果を高め、野心的な環境目標を達成するために、エネルギーミックスを再調整する必要があると主張している。

 「我々は原子力を廃止するわけではないが、(エネルギーミックスにおける)割合を下げなければならない」。

 新法は原発の発電量に、現行水準である63.2GW(ギガワット)の上限を設ける。ドイツとの国境近くにある、既存の原発58基の中で最も古いフェッセンハイム原子力発電所を2016年までに閉鎖するというオランド氏のもう1つの選挙公約については、具体的に言及することを避けた。

 だが、新たな上限は既存原発の閉鎖に関する決断を迫る。ノルマンディー地方にあるフラマンビル原子力発電所の設備容量1630MW(メガワット)規模の次世代欧州加圧水型炉(EPR)が2016年に操業を開始し、原発の全体的な発電能力が高まるからだ。

 原子力への依存は、フランスが他の再生可能資源を開発するのが比較的遅かったことを意味する。非原子力の再生可能エネルギー生産は全体の15%を占めるが、その大半は水力と木材に由来するものだ。

 新法は非原子力の再生可能エネルギーを2025年までに発電量の40%に、そして2030年までにエネルギー消費量全体の32%に引き上げる目標を定める。また、2012年の水準と比べ、化石燃料の消費を2030年までに30%、エネルギー消費全体を2050年までに50%削減することを掲げている。