木内昇の直木賞受賞作「漂砂のうたう」を読んでみた。
重苦しい雰囲気の時代の中で、希望が見いだせるのか、いったい、何を言いたいのか、非常に難しく考えてしまう作品だった。時は、明治維新によって、侍がなくなった時代。西郷は、戦うことで、生きることを決断した。
そんな時代、新しい時代に、どう生きるか、ひとりひとりが、自分の生き方を考えなければならない、見直さなければならない時代だった。
その時代の雰 . . . 本文を読む
8篇の短編からなる新田次郎の時代小説で、どれも、とても面白かった。
ちょっと、残念なのは、「凶年の梟雄」を含む3篇は、以前よんだ時代小説短編集「赤毛の司天台」とダブっていたものだった。
読んでいるうちに、気が付いたが、忘れている部分もあるので、また、読んでしまった。
「きびだんご侍」は、小作人が川中島の戦いで、手柄を立てる物語をコミカルに描いたものだが、「最後の叛乱」などは、幕末のアイヌの反 . . . 本文を読む
ちょっと、軽めのが読みたくて、本書を選んだが、葉室麟でも、こんな軽いのがあるのかと驚いた。
風野真知雄とまではいかないが、なかなかである。
道場主の父が、酔って階段で足をすべらせてなくなる。しかし、不審な点が多く、父の仇を3人兄弟が力を合わせて探すのだ。
その方法が面白い。その藩には、主人公の道場を含めると6つの流派の道場があるのだ。おそらく、その中に、仇となる犯人がいると、道場破りをしてつ . . . 本文を読む
浅田次郎の「お腹めしませ」を読んでみた。
浅田次郎の時代劇は、ドラマでは「一路」を見て、面白かったが、本を読んだのは初めてかも知れない。
6篇からなる短編集なのだが、どれも、一風、変わっている。各物語の初めに、現代の自分の周りの出来事や、祖父からの昔話などの記憶から、この物語を書いたきっかけのようなものが書かれ、終わりには、ちょっとしたピリッとしたコメントが書かれている。何とも、不思議な構成な . . . 本文を読む
葉室麟の「秋霜」を読んだ。
羽根藩が舞台の「蜩の記」から、羽根藩シリーズが「潮鳴り」「春雷」と続き、この「秋霜」は、4作目だから、二つ、飛ばしてしまったことになる。
といっても、おそらく、単独で読んでも、十分、読み応えのある作品と言えると思う。
欅屋敷という館は、何となく、記憶があったが、そこで、暮らす孤児たちと前家老、多門隼人の元妻、楓及び、大阪からやってきた謎の男、小平太の物語だ。
葉 . . . 本文を読む
本当に久しぶりに藤沢周平の時代劇を読んだ。
「橋ものがたり」という10作の珠玉の短編集だ。
藤沢周平にとっても、連作の短編集というのは、この作品集が初めてで、かつ、いわゆる市井の作品の型を作ったともいえるものらしい。図書館から借りてきた本書は、愛蔵版と書いてあるだけに、巻末に、自筆原稿の写真集や、江戸絵図めぐりとして、江戸古地図に現在の地名を追記したものがカラーで載っていた。思わず、カラーコピ . . . 本文を読む
葉室麟の歴史文学賞受賞作の「乾山晩愁」を読んだ。
浮世絵師にまつわる小説は、読んだ記憶があるが、それ以前の絵師たちの物語は、なかなか、珍しい気がする。
おそらく、浮世絵から、庶民のための絵となり、それ以前は、襖絵だったり、肖像画だったり、山水画だったり、仏画だったりと、地味なもので、物語にし難いからかも知れない。表題作は、緒方乾山だが、他の4つの短編の主人公は、それぞれ、狩野永徳、長谷川等伯、 . . . 本文を読む
百田尚樹の作品の中に、時代劇があるのを知り、読んでみた。
時代劇まで書いてしまうとは、正直、驚きだった。
下級武士から、筆頭家老にまで上り詰めた勘一と、その竹馬の友、彦次郎の物語だ。
農民のため、新田を増やすため、自分を犠牲にしても、新田開発に奔走なする、まっすぐな勘一。
一方、頭脳明晰、剣の達人で、将来を嘱望されるが、事件を犯し、藩を出てしまう彦四郎。
何故、彦四郎が、そのような行動を . . . 本文を読む
歴史小説で、直木賞受賞作ということで、「炎環」を読んでみた。
鎌倉幕府の成立、武士の台頭のころを、4編の連作を一本にしたものだ。
阿野禅師、梶原景時、北条保子(政子のいもうと)、北条四郎の4人が、主人公のような4篇であるが、不思議なのは、どれも、かなりの部分で重なり合っている物語の部分があるところだ。
また、鎌倉幕府と言えば、当然、源頼朝、義経、政子、北条時政などの普段なら主役間違いなしの者 . . . 本文を読む
葉室麟の「月神」を読んだ。
月の章と神の章に分かれている。
最初に、月形潔が、北海道に監獄を建てるため、船で赴任するところから始まる。
その中で従兄で、尊王攘夷運動に命をかけた月形千蔵の物語が月の章となる。そして、神の章で、また、月形潔の、北海道の話に戻る。彼は、従兄の残した「夜明けを先導する月でありたい。」という言葉にしたがい、自分も、そうありたいと、もがき苦しむ。
こちらは、歴史小説な . . . 本文を読む
新田次郎の作品としては、マイナーかも知れない。
だが、傑作短編集と言ってよいだろう。
特に、新田次郎のもう一つの専門分野である気象と歴史の関わりに着眼した表題作の「赤毛の司天台」は、面白い。日本の気象予報の先駆けの話なのだ。天文を専門にしている部署に、無理やり、気象予測もやるように指示が出たのが始まりだという。
大奥が参拝に出かけるのに、良い天気の日を聞いてきて、もし、外れたら切腹ものだなん . . . 本文を読む
葉室 麟の「散り椿」を読んだ。 お家騒動有り、剣劇あり、恋愛ありと、盛りだくさんという感じの作品だった。
「散り椿」は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるもの、たとえこの世を去ろうとも、ひとの想いは、深く生き続ける。というのが、大きなテーマになっている。
従って、お家騒動や剣劇がありながら、なぜか、少し、湿っぽいというか、秘めた想いの中で、嫉妬やら、本当の想いは何だったのかという疑問 . . . 本文を読む
日本の剣豪に興味を持っているが、直木賞の直木氏が、戦前に書いた剣豪列伝を読んでみた。
十数人の剣豪を主に題材にしているのだが、その中には、その弟子やら、関連する剣豪の話にも飛びまくっており、少々、まとまっているとは言い難い部分もあった。
後半の雑話の中には、繰り返しとなる文章もあり、飛ばし読みになってしまった。
しかし、戦前の本にしては、読みやすく、大衆小説の賞に与えられる直木賞の由来が少し . . . 本文を読む
7編の短編からなる「山桜記」を読んだ。
戦国の夫婦の姿を描いた短編集ということで、非常にユニークな作品集だった。
また、どれも、質の高い、美しい作品だった。
どれか、一つと選ぶのも難しいが、「牡丹咲くころ」という作品の最後のやり取りは、ちょっと、美しすぎる。
ほのかに思う女性を何としても守りぬきたい花として、花の美しさを守ろうとする人の心を、花は知らずとも良いと夫に言われ。
今度は、牡丹 . . . 本文を読む
本書は、葉室麟の初めての直木賞候補の作品だ。
葉室麟の作品は、3回連続で直木賞候補にあがったが、取れず、そのあと、「蜩の記」で、やっと取れた。
直木賞のイメージは、直木って?誰?、いつも、芥川賞と一緒に発表され、純文学ではない、大衆文学に授与される。くらいだろうか。今までで、読んだことのある作品には、「強力伝」「マークスの山」「テロリストのパラソル」「理由」「蜩の記」など、面白かった。
本書 . . . 本文を読む