プレＳＥ、「少額訴訟」 第六章 その７

「片山が？　泣くような玉じゃないと思いますけど。」

「そう言わないで。俺からもきつく言っとくからさ。
　ところで、昨日の結果は聞いているかな。」

「ええ、富田からも連絡貰ってます。
　資料もメールで送ってもらってますし、結果も聞きました。」

「そう。片山からは打ち合わせの報告もなしにいきなり見積もれってね、
　そりゃ怒るよね。」

御厨の言葉に片山はますます萎縮する。

「ところで、今から大至急見積もって貰いたんだけどできるかな。」

「ええ、実は昨日富田から連絡貰ってすぐ準備に掛かったんですよ。
　昨日中に作って川村部長の確認を取っているところです。」

「そうか、やってくれるか。
　今、横で片山が手を合わせて桜井君のことを拝んでる。」

「何だ。片山がすぐそばにいるんですか、どうりで。
　私は怒ってませんからね。」

「判った。お怒りはごもっともです。
　すぐにでも片山からお詫びとお願いのメールが行くと思うから
　気を取り直して作業をお願いしますよ。」

片山は御厨の前から慌てて席に戻り、メールを作成し始めた。

御厨はそれを見ると、椅子をくるりと横に向け、
声が直接片山に届かないようにして話を続けた。

「悪いね。ちょっと片山をからかってたんだ。」

「嫌だなあ、私が随分性格が悪いみたいじゃないですか。」

「いや、いいんだよ。多少は言っとかないと、
　設計の都合を無視して無茶言うのが当たり前になっちゃうからね。
　無理して一生懸命やってるのに、やって当たり前じゃきついからさ。」

「いいですけど。私を悪者にしないでくださいよ。」

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