Sleeping in the fields of gold

小麦畑で眠りたい

Blood Diamonds

2007-07-03 | Films
大変興味深いドキュメンタリーを見た。NHKBSで放送していた世界のドキュメンタリーで、アフリカを取り扱っていた。このシリーズが放映されることは告知で知っていたのだが、すっかり忘れていて、たまたまTVをつけたらシェラレオネの「血のダイヤモンド」に関する特集をしていたのだ。ツイテイタ。

骨太のドキュメンタリー。ジャーナリストのサウラ氏はシェラレオネ出身だそうで、地元の人々の中に飛び込んで低い視線からのレポートをしている。実に見ごたえがある一本だった。Blood Diamond。血のダイヤモンド。確か最近映画にもなっていたように思う。縁遠い話のようにも思う。けれども案外そうではない。

日本の市場に出回っているダイヤモンドのどれくらいの割合が真にアフリカの紛争に関わっていないダイヤモンドだろうか。アフリカのシェラレオネやコンゴ、アンゴラなどではダイヤモンドが採れる。このダイヤモンドが密輸され、反政府組織などの資金源となっている。

泥の中を這いずり回って男たちは一粒のダイヤモンドの原石を探す。原石が出ればいいけれど、出なければ過酷な労働を一日行っても30セント(!)の賃金にしかならない。労働者たちは高値で買い取ってくれる密輸業者へ売る、と口を揃えて言う。ダイヤがその後どこへ行くかなんて興味もない。食べて行くため、生きていくため。ダイヤが売れてその日の糧が得られればいい。密輸業者に売られたダイヤモンドはいとも簡単に川を越えただけで国境を渡り、ギニアへ入る。産出国がどこか、どういった経緯で入手されたのか、そんなことは気にもせず、証明書がついていなくても買い取り業者は買い取ってくれる。

それらのダイヤモンドは大都市NYへ運ばれ、更に高値で買い取られる。キンバリー・プロセス(英文サイト。プロセスには法的拘束力はない。あくまでも各国の自由意思による参加なので、不参加の国に対する強制力のない枠組みである。強制力がない、ということはこのプロセスに限らず、常に国際法や国際的枠組みのネックである。主権国家である以上、国際法では各国の判断、統治に口出しをできないという大前提がある。で、強制力のない法律って、じゃなんなのよ?って話(笑))というダイヤモンドの出自を証明する制度があるが、そんなものは有言無実であると言っていい。美しいダイヤモンドは、その一粒を得るためにどれほどの命が陰で失われようが、目玉の飛び出るような高値で取引される。

これを見るととてもではないが、ダイヤモンドを綺麗と言って買うことはできなくなる。永遠の愛の証として送られるダイヤモンド。それが実は血塗られたダイヤだとは、なんとも皮肉である。少なくとも。日本はキンバリープロセスに参加しているのでダイヤモンドを購入するのであれば、証明書の提出を求めることができる。せめて、買うのであれば出自のきちんとしたダイヤモンドであって欲しいと思う。買わないのが、一番だと思うけれど(笑)。

シェラレオネというのは、私にとっては多少思い入れのある国である。行った事はないが、クラスメートにこの国の出身の人がいた。彼は極論をする人で、女性差別が激しく(本人はそうでないと思っているところが尚更やっかいなのだが)必ずしも頭の切れる人というイメージはなかった。が、彼の加える的外れな(論点が常に逸脱してしまうので)コメントの一つひとつは、やはり長年紛争に苛まれたシェラレオネという国で生まれ育ったからこそ、生まれでたものだった。どんなあほなコメントをしたとしても、彼には敵わないなと思ったものだった。彼は「生」の声を持っている。それに比べて私は、ただ「頭で」考えているだけの意見だったからだ。

留学中、何が素晴らしかったといって、やはりこうした生の声を聞くことができたことだった。イギリスの旧植民地としてアフリカとは関係が深いから、私の通った学校にはたくさんアフリカ人留学生がいた。国においては、留学ができるくらいだからかなりのエリート、裕福な家庭の人達ばかりであったと思う。それでも自分の国を改善しようと一生懸命に学ぶ姿には好感が持てた。その「必死さ」というものにはとてもではないが敵わなかった。私は紛争や開発の勉強をしなくてもさほど困ることはない。別の道で生きていくこともできる。けれども彼らは「自分たちがやらなければ、誰がやるんだ?」という意識で動いている。その違いは、とても大きいと思った。

ほんの少しだけ付き合った人にシェラレオネ人もいた。とんでもなく「アフリカンタイム」で物事を運び、物を考える人だったので、一ヶ月ももたなかったけれど、しみじみ良くも悪くも"African Way"について考えさせられた。AIDS検査という「おまけ」までついたので、忘れようと思っても忘れられない(苦笑)。病院に検査に行った時に看護師に言われたものだ。「アフリカの方とつきあっていたなら、HIVに感染している確率は倍以上になります」恋人選びも、本当に命がけである。

昔好きだった人から小さなダイヤモンドの指輪をプレゼントされたことがある。
それほど高価なものではないが、とても大事にしている。このダイヤはどこから来たものだろうか。

しばらく、自分の指の小さな輝きを黙って見つめてしまった。