あえて「獣」と呼びたい。
明らかにそれらは「獣」ではない。本来は鳥類である。しかも、ちゅんちゅんと鳴いて飛び回る、田んぼでは害鳥であるが、街では愛らしき小型の鳥類。
その名を、雀。
しかし、目の前でくりひろげられる様子を見ていると、どうにも「獣」と呼びたい気分になってしまった。
嵐の近づく中、青山のこじんまりとしたシックな店で珈琲を飲んでいた。買い物をするには雨は激しすぎ、友人の瑠璃子ちゃんもワタクシも余り体調が良くなかったこともあって、なんとなぁ~くだらだらと茶をしばいていたのだった。昔話をして、くすくす笑いながら。
窓の外には蔦が絡んでいる。ぼんやりと雨の降り続く様子を窓から眺めていたら、向かいの古びたビルの屋上にぬれそぼった雀が三羽飛んできた。屋根の端の方に、絞られた濡れ雑巾のような物体が乗っている。雀らはそれをどうやらついばんでいるようなのだ。
「あれ、なんだろうね?」
向かい側でお上品にサンドウィッチを頬張っている瑠璃子ちゃんに聞いてみた。少し間を開けて彼女が答える。
「・・・肉?」
に、肉・・・?肉ってなんだ?(笑)
突拍子もない発想にも思えるが、実際肉に見えないこともない。鶏の足つき唐揚げのようにも見えないこともない。
目の前の雀たちは、小さな体をずぶぬれにしながら、水滴をぷるるっと時折払いのけつつ、その「獲物」に喰らいついている。それはもう本当に、「喰らいついている」という感じなのだ。一度くちばしに挟んで、「おらっ、おらっ、おらよっ」というように左右に首を振って、肉だかなんだか分からないそれを手頃な大きさに引きちぎろうと試みている。
気になる・・・。ひじょーに気になる。
あれは、なんだ?あの物体はなんなのだ?
食べ終わったとうもろこしの芯のようにも見える。なにかちょっとぶつぶつとした感じもする。更に瑠璃子ちゃんが続ける。
「まさか、スズメ?」
と、共食いか~~っ?それは余りにシュールな光景だろう。まぁ、雑食だからありえない話でもないけれど、そんな想像が咄嗟に出てくる、ちみが素敵♪(笑)
スズメが得体の知れない物体と格闘していると、やがて雨の中を一羽のカラスが飛んできた。スズメに見慣れると、やはりカラスは俄然大きい。スズメはあっという間に逃げていく。カラスは悠然と舞い降り、その場にぬぅっと立ち竦んだ。そうして、その不思議な物体二本を、一度に咥えて(途中ちょっととりこぼして失敗したりしながら)またどこかへ飛んでいってしまった。
二本一遍に咥えようとする様子を見て、瑠璃子ちゃんは「馬鹿ね・・」と言っていたが、本当に二本咥えて飛んで行ってしまった。おおっ。カラスめ。こしゃくな。
そんなカラスを見て、瑠璃子ちゃんは「カラスってサラリーマンに似ている」と妙なことを口走りだす。途端に、ワタクシの頭の中にはネクタイをつけたカラスの絵柄が浮かんだ。時間通りに出勤して、セコセコとマメに働くカラス。確かに。今一つ人に好かれないのも、わが身を見るようで嫌だからなのかもしれない(笑)。
一部始終、鳥たちの捕り物の様子を眺めていたワタクシたちも、人としてどうかと思わないでもないが、いかんせんあの物体が謎である。
「誰かがどこかから投げた何か」なのか。(←何一つ分かっちゃいないじゃないか(笑))
なんだ、あれ。
やっぱり肉か?こちら側のビルの人が屋根に肉を投げたのか。
まさかあの家の住人が後ろ手に屋根まで「肉」を投げたりもしないだろう。抜けた歯じゃあるまいし。
結局その物体が何であったのかは判明しないままだった。
スズメが美味しいそうについばんでいた様子を思い出すにつけ、却って怖い。
窓の下の小道を行き交う色とりどりの傘の群れを眺める。まるでフランス映画か何かのワンシーンのようだ。
そのすぐ頭上で繰り広げられた弱肉強食の世界には、人々は気づかずに通り過ぎていく。
明らかにそれらは「獣」ではない。本来は鳥類である。しかも、ちゅんちゅんと鳴いて飛び回る、田んぼでは害鳥であるが、街では愛らしき小型の鳥類。
その名を、雀。
しかし、目の前でくりひろげられる様子を見ていると、どうにも「獣」と呼びたい気分になってしまった。
嵐の近づく中、青山のこじんまりとしたシックな店で珈琲を飲んでいた。買い物をするには雨は激しすぎ、友人の瑠璃子ちゃんもワタクシも余り体調が良くなかったこともあって、なんとなぁ~くだらだらと茶をしばいていたのだった。昔話をして、くすくす笑いながら。
窓の外には蔦が絡んでいる。ぼんやりと雨の降り続く様子を窓から眺めていたら、向かいの古びたビルの屋上にぬれそぼった雀が三羽飛んできた。屋根の端の方に、絞られた濡れ雑巾のような物体が乗っている。雀らはそれをどうやらついばんでいるようなのだ。
「あれ、なんだろうね?」
向かい側でお上品にサンドウィッチを頬張っている瑠璃子ちゃんに聞いてみた。少し間を開けて彼女が答える。
「・・・肉?」
に、肉・・・?肉ってなんだ?(笑)
突拍子もない発想にも思えるが、実際肉に見えないこともない。鶏の足つき唐揚げのようにも見えないこともない。
目の前の雀たちは、小さな体をずぶぬれにしながら、水滴をぷるるっと時折払いのけつつ、その「獲物」に喰らいついている。それはもう本当に、「喰らいついている」という感じなのだ。一度くちばしに挟んで、「おらっ、おらっ、おらよっ」というように左右に首を振って、肉だかなんだか分からないそれを手頃な大きさに引きちぎろうと試みている。
気になる・・・。ひじょーに気になる。
あれは、なんだ?あの物体はなんなのだ?
食べ終わったとうもろこしの芯のようにも見える。なにかちょっとぶつぶつとした感じもする。更に瑠璃子ちゃんが続ける。
「まさか、スズメ?」
と、共食いか~~っ?それは余りにシュールな光景だろう。まぁ、雑食だからありえない話でもないけれど、そんな想像が咄嗟に出てくる、ちみが素敵♪(笑)
スズメが得体の知れない物体と格闘していると、やがて雨の中を一羽のカラスが飛んできた。スズメに見慣れると、やはりカラスは俄然大きい。スズメはあっという間に逃げていく。カラスは悠然と舞い降り、その場にぬぅっと立ち竦んだ。そうして、その不思議な物体二本を、一度に咥えて(途中ちょっととりこぼして失敗したりしながら)またどこかへ飛んでいってしまった。
二本一遍に咥えようとする様子を見て、瑠璃子ちゃんは「馬鹿ね・・」と言っていたが、本当に二本咥えて飛んで行ってしまった。おおっ。カラスめ。こしゃくな。
そんなカラスを見て、瑠璃子ちゃんは「カラスってサラリーマンに似ている」と妙なことを口走りだす。途端に、ワタクシの頭の中にはネクタイをつけたカラスの絵柄が浮かんだ。時間通りに出勤して、セコセコとマメに働くカラス。確かに。今一つ人に好かれないのも、わが身を見るようで嫌だからなのかもしれない(笑)。
一部始終、鳥たちの捕り物の様子を眺めていたワタクシたちも、人としてどうかと思わないでもないが、いかんせんあの物体が謎である。
「誰かがどこかから投げた何か」なのか。(←何一つ分かっちゃいないじゃないか(笑))
なんだ、あれ。
やっぱり肉か?こちら側のビルの人が屋根に肉を投げたのか。
まさかあの家の住人が後ろ手に屋根まで「肉」を投げたりもしないだろう。抜けた歯じゃあるまいし。
結局その物体が何であったのかは判明しないままだった。
スズメが美味しいそうについばんでいた様子を思い出すにつけ、却って怖い。
窓の下の小道を行き交う色とりどりの傘の群れを眺める。まるでフランス映画か何かのワンシーンのようだ。
そのすぐ頭上で繰り広げられた弱肉強食の世界には、人々は気づかずに通り過ぎていく。