八幡鉄町教会

聖書のお話(説教)

「止まらない罪と悲惨の連鎖」  2013年7月7日の礼拝

2013年08月03日 | 2013年度~
創世記4章1~16節

  さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。主はカインに言われた。
  「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」
  カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
  主はカインに言われた。
  「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」
  カインは答えた。
  「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」
  主は言われた。
  「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」
  カインは主に言った。
  「わたしの罪は重すぎて負いきれません。今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」
  主はカインに言われた。
  「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」
  主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。


  アダムとエバが犯した罪と悲惨は、とどまることなく、むしろ、その深刻の度を増していきました。すなわち、世界最初の殺人事件が起こったのです。それは兄弟の間で起こりました。また互いに争った結果ではなく、一方的に、また突然、兄が弟を殺すというかたちで生じたのです。
  創世記3章では、蛇と土が「呪われる」と言われていますが、人は呪われてはいませんでした。蛇と女の間に敵意が置くと言われましたが、女に敵意を置くと言われたのではありませんでした。しかし、4章では、弟を殺したカインが、神から「今、お前は呪われる者となった」と告げられたのです。このことから、その罪の大きさが分かります。
  その事件は、カインとアベルが、それぞれ神に献げ物を献げた事から始まりました。礼拝は、私たちを聖人君子にする魔術ではないのです。
  何故、アベルの献げ物はかえりみられ、カインの献げ物はかえりみられなかったか、その理由は、はっきりとは記されていません。ただ「アベルは、羊の群の中から肥えた初子を持ってきた」とあるのに対し、カインの献げ物については何も記されていません。ですから、カインは心からの献げ物をしなかったとも考えられます。神はカインに対して、献げ物のことで叱ってはいませんので、確かなことは分かりません。
  神は、怒っているカインに、罪を犯さないようにと、警告されました。
  何故カインの献げ物に、神が目を留められなかったかが重要なのではなく、むしろ、その後が重要なのです。すなわち、神が警告されたにもかかわらず、カインが罪を犯したことです。神とその御言葉を無視し、神との関係を壊したのです。カインの敵意は、神にではなく、弟のアベルに向けられました。そして、殺害におよんだのです。人と人との関係の破れは最悪のかたちで現れました。
  神は、「あなたの弟アベルは、どこにいるのか」と問われました。分からないからではなく、カインに、罪の告白と悔い改めの機会をお与えになっているのです。しかし、「私が弟の番人でしょうか?」と言い放ち、神の招きを振り払います。この後の神の裁きに対しても、彼は悔い改めるどころか、不平を言うばかりです。そのようなカインに対して、神は「私はあなたの番人だろうか」などとは言いません。カインを保護し、子孫まで与えられました。
  私たちに対しても、神は「私はあなたの番人だろうか」などとはおっしゃいません。私たちを愛し、保護者として見守ってくれているのです。