暇に飽かさたな。

はまやわらかいブログ。

Jacque Demy

2006-06-28 04:08:27 | Weblog
 ひょっとしたら、著作権とかの関係で解析概論をいじって公開するのはいけないんじゃないだろうか、という気がしてきた。そこで、章立てや節分けぐらいを参考にして、新しい本を一冊書くつもりでやってみようと思う。

 先週土曜日、オールナイトで映画を観にいった。ジャック・デュミ監督の特集で、「シェルブールの雨傘」「ロバと王女」に続き、その奥さんの映画を2本観た。なんて名前だっけな・・・そうそうアニエス・ヴァルダ。(いやぁ、さすがGoogle)「ジャック・デュミの少年期」と「5時から7時までのクレオ」。

 実を言うと、私は「シェルブールの雨傘」と「ロシュフォールの恋人たち」を取り違えていて、観たと思っていたのは前者だったのだが実は後者だった。前観たあれ、また観たいなぁ、と思って行ったらぜんぜん違った。それに気づかされたのが「ジャック・デュミの少年期」にて。この映画はデュミへのオマージュからできている作品なのだが、そこにはデュミ作品の原点となるシーンと、それがいかに映像化されたかというのが対比されて登場する。これはこれでなかなか面白かったのだが(いかにもヌーベル・バーグって感じ)、そこで、ロシュフォールの恋人たちより、と言う形でカトリーヌ・ドヌーブたち姉妹が「ミ・ファ・ソ・ラー・ミレ」と歌っていたのだ。これが私が観たかったシーン!ということで損したのか得したのかわからないが、まぁ観られてよかった。

 しかし、話はそこで終わらない。実はその翌日11時に、友人と約束をしていた。大学の卒業アルバム(なんてものがあるらしい)に載せる写真を撮ろう、と言っていたので、一度帰ればもう起きられないだろうと思い、映画館から大学へ直行した。

オールナイトなんて6時ぐらいで終わってしまうから、さてこれから地獄の4時間どうするか、なんて思いながらまどろんで、気づけば11時半。南無三。待ち合わせ場所から200mのところで寝過ごす、という貴重な体験をした。目覚ましかけたんだけどなぁ・・・。

翻訳・・・?

2006-06-24 04:11:35 | Weblog
 最近ブックレビューをしていた流れか、こんなことを思いついた。


  解析概論の現代語訳をしてみる


 解析概論とは、もちろん、高木貞治のそれだ。現代語訳とはいえ、解析概論改訂第三版では旧体字は全て改められていて、若干の古風な言い回しを残すのみとなっているのだがそういう作業ではない。数学として、現代的観点から見たとき改めるべきところを改める、という意味だ。例えば、多変数の微積とか、Lebesgue積分論の章などははっきり言って読みにくい。まだ道具が整理されていなかったころの本だからしょうがないのだが、これを改めようという話だ。

 ということで、解析概論の現代における存在意義を考えてみる。

①数学を専門としない人にも読める敷居の低さと、論理的な構成が適度にバランスされている。

②概念を定義して雑多な事実を整理する、という数学の美しさを紹介する。(解析学全般を一冊の教科書で説明している本が、最近ではあまりないから、この存在は稀有)

③みんな読んでる。ルバング島で戦争してた人も時代的にはかぶりうるというすごい本。


ぐらいを思いついた。このような利点を残しつつ、現代風にリアレンジすることはできないだろうか。


ということで早速手をつけてみようと思ったのだが、開始と同時に問題が。「集合」概念が、あまりにぞんざいに扱われているのだ。実際、Lebesugue積分論を始めるまで、集合の合併や共通部分などといった集合算は出てこないし、全体を通して扱われる集合は「数」の部分集合のみだ。(本書では、実数や複素数などをまとめて「数」という言い方をする)

とは言え、あまり一般的に話を始めると、利点で挙げた①に抵触するのであまりよろしくない。しかし現代においては集合算は高校生も勉強するわけですし・・・。
よくわからないので、1章に0節というのを付け加えて、集合の簡単な定義などを並べてみることにした。

試しに


しかし、こう書いてしまうと、その辺にいくらでもころがっている解析学の教科書と大差ないのか。難しい、意見求む。

フーリエ解析大全

2006-06-23 01:00:06 | Book review
 前回は、あまり意味のないブックレビューを書いた。今度はもう少しましなのを書いてみようと思う。ということで、含みのある本をレビュー。


フーリエ解析大全 (上・下) 朝倉書店

私の知っている限りで、最も丁寧な、かつ最も親切なフーリエ解析の入門書兼参考書である。上下あわせて1万円以上するのだが、買ってしまった。女性に生まれていたらグッチだのプラダだのを買ってしまっていたであろうことを考えると、安い買い物である。

基本的に、これを使って量子力学をバリバリやれるような力をつけたい!とか関数解析の入門の一ステップに!とか思っている人は読む気が起きないだろう。あまりに趣味的で、あまりに高踏的。すべてのセクションが数ページ一話読みきりになっているのだが、3節でいきなり扱われているのがWeylの一様分布定理。無理数を自然数倍してmodを取る数列を考えると、その区間に一様分布するという定理である。力学系の準周期解の、ポアンカレによる取り扱いなど思い出す向きもあられよう。

そして圧巻は11節。タイトルたるや「至るところ微分不可能な連続関数」。連続ならどっかでは微分可能だろう、というナイーブな直感を打ち破るこの反例はWeierstrassの手になるもので、実は初等的な事実しかその構成に要しない。

そんなの勉強しても時間の無駄じゃん。と思ったら、人間は進歩しなかった。続く12節では、Weierstrassの同時代人たちの冷ややかな反応をスケッチしつつ、次の節からはきわめて現代の物理学的な「モンテカルロ法」「数学的ブラウン運動」へとそのテーマをシフトさせていく。実は、ブラウン運動を時間軸に沿ってグラフにすると、いたるところ微分不可能な関数になるのです。また、ブラウン運動を用いた解析では、そのランダムネスが逆に空間に正則性を生み、調和関数の解との関係性が生まれる。調和関数と言うのは、正則関数の実部が満たす方程式(ラプラス方程式)の解のことで、正則関数と言うのは何回でも微分可能な関数。われわれはこうして、微分可能な世界へと帰ってきたのです、と来る。

 そのほかにも、非線形微分方程式や直交多項式や確率論、統計手法へと話は及び、果てはワインの貯蔵法、データの捏造法(!)までも指南してくれるとはこれまさに至れり尽くせり。しかも、なんと驚くべきことに、フーリエ解析の専門書にもかかわらず、Lebesugue積分論の知識を仮定していない!ある程度積分論を知った今となっては、多少のまどろっこしさも感じるが、それは読み飛ばせばいいだけの話であり、逆に大学1・2年のころこの本を読むことができたことを思い返せばなんという親切さだろう、と思う。

 こういう数学の本を、昼食後ミルクティーでも飲みながら読みふけることができる生活にすごく憧れる。あぁ、早く人生を引退したい。ビバご隠居。

名著と思うもの

2006-06-20 03:00:00 | Book review
 ネタが思いつかないので、今までに読んだ数学・物理学書で1・2年生向けで、割とましなものを列挙してみる。できるだけself-containedなものから順に書く。


①力学

・物理学序論としての力学 [藤原邦彦]
 大学1年の時に使っていた。とてもつまらなかった記憶があるが、速習に便利だった。

・古典力学 [Goldstein]
 大著。まだ半分も読んでいない。使われている数学は旧態依然としていて読みにくいが、いわゆる「物理屋さん」にはむしろ使いやすいかもしれない。豊富な演習問題と、種々の応用が役に立った記憶がある。

・力学 [Landau-Lifschitz]
 大学生になってすぐに買った本。とりあえず一番難しい定番の本を買おうと思って3月頃に買った記憶があるが、あまりに難しすぎて本棚の肥やしに。だって始まって3ページで、ニュートン方程式からラグランジュ方程式が導出されてるんだもん。

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②熱力学

・熱力学 現代的な視点から [田崎晴明]
 本当にいい本。熱力学という学問の論理構成を教えてくれる稀有な本。普通、物理の本は局所的な論理のつぎはぎで作られているのだが、この本はそんなことはない。とはいえ、こういう本は実際にはほとんどないので自分で再構成するしかない。既存の教科書に期待しすぎるのはいけないのかもしれないとも思う。

・フェルミ熱力学 [Fermi]
 この本を読んだのは2年生の時だった。熱力学とはなんと難しいのだろうと感じた。むずかしい、というのは「何が許される操作で何が許されない操作なのか」がわからないという意味で。正直、大学一年生にこの本で熱力学をわかれというのは不可能だと思う。この本でわかるのは、いわゆる物理流の「無限小解析」である。

・演習熱学・統計力学 [久保亮五]
 物性屋、統計屋で知らないヤツがいたらモグリ。めちゃくちゃ有名な本。この世界に骨を埋める気でいる人がいたら今すぐ買ってください。損はしない。5000円近くするけど、入っている問題数が半端ではないし、何より熱力学っぽくない問題が豊富。なんと一問目はコイルの自由エネルギーなのだから。

・熱力学入門 [佐々真一]
 self-conteinedな順に挙げる、と書いたがこの本が一番最後に来てしまった。これはとても薄っぺらい本だが、本当に必要最小限のことしか書いていない。ひょっとしたら読む人に理解させようとはしていないのではないか?といぶかしんでしまう。しかし、その内容はしっかりしていて、論理の飛躍はなく、前提は明示されている。その意味ではself-conteinedなのだが、いくらなんでもこれで熱力学を初習するのは不可能だ、と言う意味で最後に挙げた。

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③量子論
・量子論の基礎 [清水明]
 タイプ的には田崎熱力学と近い、その学問の論理型を解説する本。物理屋なら買いましょう。こういう本を読んでいると、本当にテンションがあがります。フーリエ変換できなくても、量子力学は理解できる、と思う。

・量子力学 [小出昭一郎]
 読みやすい。古い本だが、とても親切。速習に便利。

・量子力学 [河原林研]
 うーん、正直はずれかなぁ。つまんないけど参照用ぐらいには役に立ってます。

・The Principle of Quantum Mechanics [P.A.M. Dirac]
 ランダウ・リフシッツの力学以上に本棚の肥やしになってます。でも、本棚にあると格調が高く感じられる。私は、この本で量子力学を始めたのですが、やめるべきです。何にもわかりませんでした。今読むとちょっとわかるかもしれない。

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④数学
・線型代数入門 [斉藤正彦]
 これ以外考えられない。私は斉藤正彦のファンです。線型代数演習、数学の基礎、超積と超準解析、みんな隅から隅まで読みました。(あっ、演習はウソ)この本で数学書に慣れました。ありがちな入門書では物足りないけれど、専門書は読めない、という1・2年生に激しく薦めます。

・解析概論 [高木貞治]
 日本が誇る大数学者、高木貞治の古典的名著。もはや一家に一冊レベル。ではないが、それぐらいの勢い。とくに前半の複素関数論までは一気に読ませる。多変数の解析学やFourier解析、Lebesgue積分論などに関してはやや古臭さも感じるが、級数論などはわかりやすい。高校生に読ませたい。



眠くなってきたので打ち切ります。後日第二弾をやろうかな。

統計的に言えば

2006-06-11 15:11:35 | Weblog
 手術以来、左眼周辺視野の下部が欠ける感じがある。ドンマイ、では済まされないかもしれない。


 今、Amazon.comで買い物をしてきた。定価150$の本を、中古だが7$で買えた。送料のほうが高いし。ちなみにこの本はスピングラスの関係です。

 じゃあ今日は統計力学で行こうかな。とも思ったが統計力学と一口に言っても広い広いとても広い。ふつうに統計力学と言ったら(普通は「統計力学」なんて単語を発することはないが、それはさておき)平衡統計力学のことで、系がそこそこ落ち着いた後どうなるかを解析するツールなのだが、ほかにも揺動散逸定理に代表される線形応答理論、またそれよりもっと平衡から外れた所で生まれる散逸構造などを扱う非平衡統計力学・・・など名前を挙げていけばもっとたくさん出るのだろうが、私はあまり知らない。

 なぜこんなにあるのか。それはきっと、統計力学なんてものはないからだ、と思う。「統計力学」なる学問は存在しないのだ。

 いきなり結論を言った後ではあるが、順を追って話を進める。そもそも「統計」という概念は純粋数学(というと確率論の先生は怒るが)である。細かなデータから、必要な情報を抽出するための科学には不可欠なツールである統計は、もちろん、物理学にも適用される。そしてそれはその本質上、たくさんのデータがあればあるほどいい。そこで、物理に適用する時は一番細かい所を「力学」で指定する。例えば、作用反作用があるとか場があるとか。

 さて、上に書いたような意味で、統計力学は存在している。すなわち、「統計+力学」として。統計は数学でしかないのだから、統計力学という物理の分野があると考えるのはおかしいのではないか、というのが私の考えだ。

 とはいえ、それが統計力学の研究の無意味さを主張するものでは決してないのは明らかだ。統計という道具の開発は、物理的考察や直感を要求する、高度に物理的な作業である。


 けれども私は、あまりにもプラグマティックな物理というのを好きになれない。それは数学者の仕事であって欲しいと思うのだが、世の中そうもうまくいかない。となれば物理学者には、道具主義、公理主義、経験主義のいずれにも偏ることなく、しかも無駄に哲学的な思索に陥ることのない健全さが必要なのではないだろうか。

眼科に行ってきた。

2006-06-03 20:01:12 | Weblog
 色々なものを見てきたので、覚えているうちに書いてしまおう。

 昨晩は酒を飲んでから徹夜で麻雀を打っていたので2時間ほどしか眠らずに眼科に行った。この時、疲れ目と二日酔いが問題にならないかと思いながら眠っていたのだが、完全に寝ぼけていて、ある微分方程式の可積分条件を満たせばこの問題は解決できるような夢を見た。きもい。

 さて、眼科まで行くと目薬を三度に分けて点眼し、瞳孔を開いた。そして先生の前に座ると検査が始まる。普通にやっては見えるわけない瞳孔を見るのだから面白い機械を使うのだが、これがすごい。上まぶた(だと思うのだが)に薄い膜のようなものを挟み、ものすごい光度の光をあてる。まぶしい、はずなのだがまぶしくない。するとあら不思議、目の前に光の筋が見えていて、そこを見ていると目医者さんが勝手に検査してくれるというものだ。

 そして、目医者さん一言。


     「あー、網膜に穴開いてるね。」


 うそーん。何それ。網膜って穴開くの?聞いてないし。ふしぎ発見なり。

 「これは処置したほうがいいですね。穴の周りをレーザーで焼きます」と先生。えっ、焼くって何よと思いつつも合意書にサイン。よく読むと「本手術により・・・」と書いてある。手術じゃん。

 そして手術開始。ちなみにこの時、オペを始めます、とは言ってくれなかった。なにやらフレームのようなものに顔を押し付け、先ほどの検査と同様の機械を前にする。左目に異物侵入。「それではいきますよー」と先生一言。パチっと言う音とともに左目が赤い光を捕捉する。レーザーって見えるのかよ。


 そして数十回にわたってサイクロプスのオプティックブラスト的な行為を繰り返し、ついに終わった。肝っ玉完全燃焼。もうこんな思いはしたくないと思う私に先生は、「これから毎年検査してくださいね」とさ。正直、穴があっても入れたくないんだがこればっかりはしょうがないか。


 ということで、私の左目の網膜は今、焦げ目がついている。あんな光景は、もう目に焼きついて離れない。