致知出版社の「人間力メルマガ」よりです。
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致知出版社の「人間力メルマガ」
【2011/10/13】 致知出版社編集部 発行
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このメールマガジンでは、
人間学を学ぶ月刊誌『致知』より
そのエッセンスの一部をご紹介しています。
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本日は京セラ創業者・稲盛和夫氏のもと、
「アメーバ経営」を推進してきた
京セラコミュニケーションシステム元社長・
森田直行氏のお話をご紹介します。
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「デッドストックをゼロにするには?」
森田直行(京セラコミュニケーションシステム社長)
1997年5月号
特集「リーダーシップの本質」より
※肩書きは掲載当時です。
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よく稲盛からは、
「お前のルールは論理的には正しい。
しかし、このルールでは人のやる気は出ない。
やる気のない人間がいくら集まっても、
会社は立派にならないじゃないか。
いい方向に行かないな。それじゃだめだ」
と言われました。
ルールは論理的には正しいが、
メンタルな面でまちがっている、というんですね。
例えば、新製品が出ると、古い製品は売れなくなって
デッドストックになってしまいます。
そのデッドストックの処理について、
事業部からある提案が上がってきたんです。
デッドストックが出たときに、そのつど処理していたのでは、
採算計画が狂ってしまいます、
そこで月々どのくらいのデッドストックが出るかを計算して、
デッドストック処理のための経費を毎月積み立てておきたい、と。
で、デッドストックをその積み立て金で
相殺するという提案です。
私はなるほどそうだなと思いました。
そういう積み立て制度があったほうが、
確かに効率はいい。
で、案をつくって稲盛のところに持って行ったのです。
(記者:稲盛会長はなんと?)
ガツンとやられました(笑)。
「お前の案は論理的には正しい。
しかし、これはメンタルではだめだ。
そういうルールを認めてしまうと、
デッドストックは出るものだとみんな思ってしまう。
そういう気持ちでみんなが働けば、
デッドストックはいまよりもっと増えるぞ。
デッドストックはゼロにしなければいけないんだ。
そういう心をいつも持たせるような
ルールをつくらなければだめだ」
なるほど、納得です。
グーの音も出るものではありません(笑)。
しかし、稲盛はなぜだめかを丁寧に教えてくれるんです。
その教えはいまの私にとって大きな財産になっています。
(記者:稲盛会長は、「大善は非情に似たり、小善は大悪に似たり」
という言葉をよく使われますね)
このルールは小善なんですね。
私としてはみんなのためによかれと思って提案したのですが、
広い視野でみれば、このルールでは士気は下がるばかりです。
経営者とわれわれとの視野の違いを思い知らされました。
本当の士気というものは、つらいかもしれないが、
事実を真正面から受け止め、
それを乗り越えていこうとするときに生まれるんです。
大善を貫くには、ときには厳しいルールを
つくることも必要なのです。
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現在発行中の『致知』11月号には、
稲盛和夫氏の盟友で、京セラ現相談役の
伊藤謙介氏がご登場。
京セラ創業期の感動秘話や
事業経営のヒントが満載です。
http://www.chichi.co.jp/monthly/201111_pickup.html#pick2
(転載以上)
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「デッドストック」のお話は、とても分かりやすい例ですね。
“月々どのくらいのデッドストックが出るかを計算して、
デッドストック処理のための経費を毎月積み立てておきたい”
もともと、この提案は、どうしても出てしまうデットストックの経理的な処理をいかに効率的に行うか、ということが出発点だったわけですね。
しかし、その提案は、稲盛会長に“ガツンとやられて”しまう。(笑)
“お前の案は論理的には正しい。
しかし、これはメンタルではだめだ。”と。
確かに、このやり方を認めてしまうと、“デッドストックは出るものだとみんな思ってしまう”でしょう。
すると社員のモラルダウンが起きて、デッドストックが今より増えてしまうかも知れません。
“デッドストックはゼロにしなければいけないんだ。
そういう心をいつも持たせるような
ルールをつくらなければだめだ”
稲盛さんの経営者としての考えは、もっとぐんと高いところにあったわけですね。
“「大善は非情に似たり、小善は大悪に似たり」”
デッドストックはゼロにすることは、大善であり、(一見)非情に似ている。
デッドストックの発生を前提に、経理処理を変えることは、小善であり、(実は)大悪に似ている。
“本当の士気というものは、つらいかもしれないが、
事実を真正面から受け止め、
それを乗り越えていこうとするときに生まれるんです。”
この言葉には、人が自分の運命を切り開いていくその秘密も内包されているような気がします。
致知一日一言よりです。
「致知一日一言」読者の皆様
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
野田首相はTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加の意向を固め、それに向けた準備を開始するよう指示しました。
国会は賛否両論で議論が白熱していますが、新聞各紙は賛成一色に染まっているようです。
『致知』10月号では、経済評論家の三橋貴明氏が確かな数字とデータを基に、マスコミが語らないTPPの実体を語っています。
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一般的にTPPは多国間の自由貿易協定だと思われているが、実際はアメリカの対日輸出を増やすための戦略の一種である。
TPP参加国・参加検討国のGDPの割合を見れば一目瞭然で、アメリカ66%、日本24%と、日米だけで全体の9割を占めている。
経済規模からして、日本にとって輸出先はアメリカでしかなく、逆もまた然りである。
ご承知のように、リーマンショック以後、アメリカの景気は悪化の一途を辿っている。
昨年末に横浜で開催されたAPECの演説で、オバマ大統領が「この地域で輸出を増やすことに大きな機会を見出している」と明言しているように、アメリカの景気回復のため、日本への輸出拡大が急務なのだ。
マスコミはTPPについて「関税を撤廃して貿易を自由化する」「農業VS製造業」という報道ばかりしているが、これは極めて一面的な見方と言わざるを得ない。
実はTPPには24もの項目が存在する。その中には例えば政府調達(公共事業)、投資、金融、各種サービス、労働、市場アクセス、紛争解決、知的財産権といったものが含まれている。
言語や文化、法律などのあらゆる非関税障壁を撤廃して、人・モノ・金・サービスの移動をすべて自由化する。これがTPPの本質なのである。
そして、農業の打撃もたしかに大きいが、我々はもっと恐ろしいものに目を向けなければならない。
特に危惧されるのは「法務」「医療」「金融」といったアメリカ社会のガンが日本に入ってくることである。
……さらに詳しくは『致知』10月号136ページで!
※今なら10月号からのお申し込みも受け付けております。
☆詳細・お申し込みはHPにて
↓ ↓ ↓
http://www.chichi.co.jp/i/index.html
(転載以上)
三橋貴明さん、経済関係では、今私が最も信頼している方のお一人です。
以前の日記でも三橋さんの著書に触れたことがあります。
今日本に浸透してしまっている“情報の歪み”を直そうと努力されている方だと思います。
上記に書かれたTPPについての説明、その実態を浮き彫りにしていると思います。
実は、TPPについては、米国自体、今、かなり熱が冷めているとも聞きます。
即ち、今後の米国経済動向に暗雲が立ち込めて来ている中で、様々な業界における自由化を図ることは、米国の中にも大きな抵抗があるようなのです。
なのに、野田首相の日本政府は、米国にお土産を用意したいと、なぜか頑張ってしまっています。
それが日本の国益に沿うものならいいのですが、そもそも情報自体少なすぎますし、その限られた情報の中でも、そうとは決して言えないもののようです。
更に不思議なのは、本来は、そこに問題意識を向けるべきメディアが、大手新聞、テレビ含めて、なぜかTPP推進の大合唱していることです。
国民新党の亀井さんが、「乗ってはいけないバスに乗ってはいけない。乗ったら途中で降りることはできない」とTPP参加の交渉に加わることに慎重な発言をされているようです。
その背景は不明ですが、私は、その言葉に賛成です。