岩切天平の甍

親愛なる友へ

美術館

2008年02月17日 | Weblog

撮休日を利用して、ワシントンの美術館めぐり。
殆どの美術館が入場無料なのが嬉しい。

先ずは国立美術館。
Alexander Calder の部屋。モビールの影が美しい。
フラッシュを使わなければ写真を撮るのは構わない筈なのにカメラを取り出したとたん警備員に怒鳴られる。
「おい、何でも撮っていいって事じゃないんだ。これを見ろ!」
壁の隅っこに写真を撮るなと小さく書いてある。
何だこの人。何でこんな言い方されなきゃならないの?
「そんな所に書いて誰の目につくって言うんだい。バカじゃないの?」思わず大人げない事を言ってしまい、自分が恥ずかしくなる。

近代、現代美術を収めた東館はデザイナー様のおかげで全くばかばかしい建物に仕上がっている。広大なフロアーのどこに部屋があるのか地図を見ても分からない。上の階にどうやったら行けるのか、立派なエスカレーターを上がるとただトイレがあるだけ、吹き抜けの向こうの同じ高さにあるギャラリーに行くにはまた降りて違う階段を登らなければならない。なるほどワシントンだ。美術館までがお役所っぽい。

個人経営のフィリップス・コレクション。
大金もちのお屋敷に
インプレッショニズム、モダニズム、スノビズム。
お金持ちの道楽の裏に、きっと悲しい労働があったんだろうなとは、貧乏人のひがみかいいがかりか。
せまい廊下に立ちはだかっておしゃべりする職員たち。
立派な解説を大声で披露する紳士淑女の皆様。

ゴッホの絵は彼が死ぬ迄ただの一枚も売れなかった。
感謝のしるしにと医者に贈った絵は、鶏小屋の穴をふさぐのに使われていた。
絵の具代を弟に無心するのに、血の涙を絞るような手紙を書いていた。
絵を前にして何の言葉も無い。ただ深く深く悲しいミストラルが吹く。

画家はどんな事を考えながら作品を作るのだろう。
美の追求、社会性、讃歌、宇宙、神、愛、悲しみ。
パトロン様とのおつきあい。

ネガティブな事は書くまいと思っていたのに。
今日もまたぼやきオヤジになってしまった。

ああ、楽しかった。