スーパーチューズデー。
シカゴのヒルトンホテルの大宴会場にオバマ陣営が張られた。
大スクリーンに映し出されたCNNの開票速報を見守りながら一喜一憂が続く。
今夜はニューヨークのヒラリー、アリゾナのマケイン、シカゴのオバマ各陣営とニューヨークの投票所、それらをまとめるワシントン支局の計5カ所から徹夜で生中継。
体勢が見え始めた頃にオバマ候補がステージに現れた。
噂に高い演説が始まる。短いセンテンス、感情を煽る言葉、聴衆を疲れさせる冗長な政策の説明は一切無い。絶妙の間が効果を上げる。
どこかで聞いたことがある話し振りだ。ああ、これはまさに教会で聞くお説教にそっくり、特に南部の黒人教会で聞くものに似ている。酔ったような聴衆の様子も同じだ。
彼の演説を評してよく言われる、中身が無い、非現実的という批判は的外れだろう。政策が論点になるべきなのはその通りだろうが、現実は彼の演説こそが民主選挙に対応したものだ。民衆は理屈など聞きたがらず、感情で投票する。民主主義の限界でもあるし、それを問題だとするなら教育の底上げを実現する必要があるだろう。
夜明け前、横殴りの雨の中で夕方ニュース用の中継を終えて、帰途に着くも、滑走路に出てもいつまでも飛ばない飛行機の中でもうろうと眠る。