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労働契約法制:ホワイトカラー・エグゼンプションとIT業界

2007-01-24 | 経営実務
アクセス解析を見ていますと、大変ありがたいことに安定的にアクセスが増加してまいりました。その中でも、ホワイトカラー・エグゼンプションの話題については様々な方からコメントやご意見をいただいており、関心の高さを感じさせていただいております。

その中で、あかさたさんのブログにて、私の以前のエントリについてご意見を頂戴いたしました。

ホワイトカラー・エグゼンプションについて(Akasata's Page)

このエントリを読ませて頂き、以前のエントリの中で、私の表現の拙さから分かりにくい部分もあったことに気づくことができました。あかさたさんのエントリにもコメントを寄せさせていただきましたが、「IT業界におけるホワイトカラー・エグゼンプション」というものをもう一度整理して見たいと思います。

まず、プログラマ・SEという職種の性格から考えてみたいと思います。改めていろいろと考えてみると、プログラマ・SEという職種には「その人にとっては時間と生産量の相関が認められる」世界と、「生産性と時間が相関しない」が共存しているように感じます。

例えば、あかさたさんのブログで紹介されているJoel氏のようなケースは、「研究開発型」のアプローチといえるのかと思います。OSやアプリケーションの開発といった、今までとは異なる「独創的な解決策」が求められるような「開発」を行うときには、このような働き方が適するのでしょう。

一方で、私が過去IT業界の「現場」で見てきたのは、大型システムを分業体制で構築していく世界です。そこで行われるのは「仕様書に基づいて忠実に実装する」ことであり、独創的な解決策というよりも「効率よく一定のボリュームの作業を行う」ということが求められてます。システムが大型化するほどこの傾向は強まり、潤沢なハードウェア資源を背景といして、既存の部品やデータベースへのアクセスの「組み合わせ」をただひたすらと打ち込んでいく「生産」というのが、日本におけるITエンジニアの一つの大きな仕事となっているのではないかと感じます。また、このほかにも大型システムとなれば「システムが安定稼動するようにお守りをする」という「監視・保守」というのも一つのまとまった大きな仕事となります。

したがって、同じ「プログラマ・SE」と言ったとしても、「求められる成果」によって
●「開発」型 ●「生産」型 ●「監視保守」型
の3つに分類して考えていかなければ、「働き方のあり方」を考えることは難しいのではないかと感じます。

そこで、ホワイトカラー・エグゼンプションの議論に戻りますが、まず「開発」型のプログラマ・SEについては、期待成果は「今目の前にある課題を解決すること」であることから、時間と成果の結びつきは必然的に弱くなります。したがって、このような形のプログラマ・SEについては「裁量労働」や「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度が似合う分野となってくることでしょう。

一方で、「生産」型や「監視保守」型のプログラマ・SEについては、少々状況が異なります。「生産」型のITエンジニアに期待される成果は「指示された内容にしたがって、(一種の単純労働的に)指示された内容を実施すること(例えば、DBテーブルを構築したり、仕様書に沿ってコーディングをしたり、システムソフトウェアをインストールしたり・・・といったこと)」=「一定のボリュームの作業を行う」となります。こういった形の場合には、手の早さ遅さといった個人差は除いても、少なくともその人個人にとっては、「時間量」と「作業量(生産量)」の相関関係は相当程度高まりますので、時間では拘束しないとしてしまう「ホワイトカラー・エグゼンプション」には余り向いていないでしょう。(例えば、サーバーを更改するときなどは、深夜帯での作業をどうしても行ってもらわなければならないという状況を思い返していただければ分かりやすいかと思います。)

まして、「監視保守」系のエンジニアの場合には「一定の時間において、その間に起きうることを監視し、対応する」という極めて時間拘束性が強い職種になります。したがって、「生産」型にせよ「監視保守」型にせよ、「時間によって成果がある程度測定できる」という観点からは、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の対象として考えるのは問題が多いのではないかと感じるのが私の意見です。(前回はこのことについて「ブルーカラー」と表現してしまいましたので、誤解を生んだ部分があったかと思います。)

今の状況を見ていると「プログラマ・SEだから、個人の創造性で仕事をしているはずで、時間では成果が測定できない」という安易な意見がまかり通ってしまっているように感じます。肩書きや職種のみで判断するのではなく、その仕事内容の「本質」をきちんと見極めていかなければ、かならず「ひずみ」と「拡大解釈」が生まれ、結果として大きな問題に繋がってしまうことがあるのではないかと思い、前回のエントリを書かせていただきました。メンタルヘルスの問題も含め、元IT業界に携わっていた社労士からの「IT業界への警鐘」としてご理解いただければ大変幸いです。

(追伸)
このエントリに限らず、私のエントリについて引用やご紹介、またご批判・ご指摘を頂ける場合には、ぜひ遠慮なく当該エントリへトラックバックいただければ幸いです。TBいただけたとこには、ぜひお邪魔させていただきたいと思っておりますm(_ _)m

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