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訴訟:ヒューザーに勝ち目はあるのか?

2006-02-03 | マネジメント
報道から若干タイムラグがありましたが、今日はヒューザーの訴訟について。先日の報道の通り、ヒューザーが自治体に対して損害賠償請求を起こしています。

耐震偽造 ヒューザーが18自治体に139億円賠償提訴

報道によれば、ヒューザー側の訴訟内容は「国家賠償法に基づく賠償請求」であるとのことです。訴状の内容まで明らかにはされていませんが、「18自治体は、建築確認や完了検査で、構造計算書の改ざんを見逃した」というのが賠償請求の理由と伝えられています。

さて、この訴訟でポイントになるのが「国家賠償法」です。国家賠償法では第1条にて
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

と定めています。

さて、では今回のヒューザーの訴えが認められるかどうかという部分ですが、論点は次のようなところになると思われます。

(1)自治体側の行為が「公務員が公権力の行使を行った」ことにあたるかどうか


最初の論点は、今回の自治体が行った行為が「公権力の行使」にあたるかどうかという点です。今回のケースでは、自治体が行った行為は「建築確認」ということになりますが、その実態は次の2つに分類されます。
[A]自治体自身により「建築確認」という処分を行っている。
[B]民間検査機関により「建築確認」という処分を行っている。


まず「建築確認」が公権力の行使に該当するか否かについて考えます。
建築基準法第6条にて「建築確認を受けた後でなければ、工事を行うことができない」とはっきり書かれております。したがって確認という言葉は使われているものの、一般に禁止された事項を特別の場合にのみ解除をしていますので、これは一種の「許可」と同様にとらえることができます。

したがって、まず[A]のケースでは自治体が直接建築確認を行っていますので、「公権力の行使」があったということが出来るでしょう。

しかし[B]の場合にはやや複雑になります。というのも、民間検査機関が行った建築確認という行為を「公務員が行った行為と見ることができるのかどうか?」という部分が微妙になるためです。

建築基準法では「指定民間検査機関の確認済証は、自治体の確認済証とみなして取り扱う」ということは定めていますが、確認行為自体を自治体が行ったようにみなす規定はありません。このため、一つ一つの確認行為を当該指定者を含む自治体が行ったことと同義に捉えることが可能なのかどうか、悩ましいところです。

(2)自治体側の行為に「故意又は過失」があったか?


次の論点は、建築確認の行為に「故意又は過失」が認められるかどうかです。これについては、事件発覚当初の段階で国交省自身も「建築確認において不適切なプロセスがあった」という話をしていますので、全部ではないにせよ、少なくとも自治体側に「過失」があったことは立証できそうな印象を受けます。(立ち入り検査結果の報道をみると、少なくともイーホームズの検査は間違いなく過失を問えるレベルではないかと思います。)

(3)自治体側の行為により「損害」が加えられたか?


最後の論点は、自治体側の行為によって損害が加えられたかどうかです。これについては、現にヒューザーはたとえ自らは無過失であっても瑕疵担保責任による損害賠償を追わなければならない立場にありますし、一連の展開で事業停止に追い込まれるほどの損害を受けていますので、上記(1)(2)が認められれば一定の範囲で損害も認められることになると思われます。

以上を論点として整理すると、もし上記[A]のケースなどで建築確認プロセスに過失が認められれば「自治体は賠償しなければならない」という判断が出る可能性は十分にあると考えられます。

一方、自治体側の反論としては「ヒューザーが建築基準法に抵触することを知った上で、それを隠して建築確認を申請した」という部分になるのでしょう。ただ、この場合にも「ヒューザーにも(故意ではなく)過失があった」という判断となれば、「過失相殺」の減殺は受けるものの一部の賠償が認められる可能性はあります。

本来であればヒューザーとしては
○直接偽装行為を行った姉歯建築士
○建築を請け負った木村建設
 (建築者は無過失であっても瑕疵担保責任を有します。)
に対しても損害賠償を行いたいところでしょうし、この方が話が早いはずです。しかし、両者ともにすでに事実上の弁済能力を失っていますので、「損害賠償は取れるところから取る」という考え方をもとにすれば、今回の国への訴訟については、当然取りうることが出来る選択肢ではないかと思われます。

正直なところ、今回のケースでは国土交通省自身がプロセスにおける過失があったことを一定範囲で認めていますので、国・自治体側はあんまり迂闊なことは言えないはず・・・と感じています。しかし、実際には

「責任はき違え」と批判 ヒューザー提訴に国交相
「盗っ人たけだけしい」 横浜市長がヒューザー批判

などの発言があるようです。これで「自治体の過失責任」が認められたとき、どのような発言をするのでしょうか?

今回の事件で取り違えていけないのは、現時点でヒューザーが負っているのは「危険負担の観点から無過失でも賠償義務を追わなければならない瑕疵担保責任」に過ぎないということです。もし行政行為に瑕疵があれば、それは当然国家賠償法に基づく責任を負わなければならないことになります。

また、ヒューザーの悪意が認定されて、ヒューザーからの賠償請求自体が認められなかったとしても、過失そのものが認定されたとすれば、住民自身から国家賠償法に基づく訴訟を起こされる可能性も残されています。

「●●が全て悪い!」と決め付けるのではなく、過失があった人が過失責任をきちんと負うように展開されなければ、それこそ「盗っ人たけだけしい」ということになってしまいます。今回の訴訟を通じて、この耐震偽造に関する一連の動きの中で、誰に「過失」があったのかがきちんと整理されることを願っています。


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