つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

読書日記:月村了衛『影の中の影』 見落とされがちな要素に目を向ける機会

2018-07-24 22:33:17 | 本の感想/読書日記

本日も暑かったです、昨日よりはちょっと暑さ和らいだ気がしております。読書日記です。

月村了衛さんの小説『影の中の影』、読みました。

影の中の影 (新潮文庫)
月村 了衛
新潮社




主人公は日本人ジャーナリストの女性。その女性が日本に逃亡してきたウイグル人にコンタクトをとることから物語が展開していきます。

ところでウイグル人ってご存知でしょうか?

ウイグル人とは、ユーラシア大陸に居住する民族で実在しています。その多くは中国の新疆ウイグル自治区に住んでいて、ウィキペディアによると1000万人強とのこと。独自の言語もあるんです。私、何気にウイグル語の辞書所有しております。

語学好きなんですよね~。と同時に、コミュニケーションに悩んでいたというか、本気でどうやって会話すればいいのかわからなかったので、外国語を通じて勉強しました。日本語だとみな当たり前だから教えてくれないのですよね、その当たり前がわからないのに。。。というあたしの特殊事情を書き出すと話が混線するので、一度話を戻します。

中国って多民族なのですよね。あたしたちが一般的に中国人としてイメージするのは、日本人と同じ感じの漢人。その漢人が中国人の90%以上を占めます。けれどもそれ以外にも50以上の少数民族が居住している。

ウイグル人の暮らしぶりは、残念ながら平和とはほど遠いものです。ニュースでも話題になるミャンマーのロヒンギャ、中国のチベットのように、虐げられています。


小説はあくまでもフィクションです。フィクションなのですが、ついつい現実に重ねてみてしまいました。内容は、冷戦時代の米国で書かれたソ連のような描かれ方をしております。

おおまかに書くと、中国国内でウイグル人虐殺の生き残りとして日本に逃げてきたウイグル人とその協力者の漢人たちが、米国のCIAに保護してもらうまでのサバイバル物語です。アクションシーンが多く、中国人特殊部隊、日本のやくざ、日本の警察が血みどろの戦いを繰り広げます。

アクション小説あまり好きではないので、そこは流し読みしつつにさせていただきました。

この小説が出版されたのは2015年でいまから3年前。冷戦時代のハリウッド映画をみると、「いやいやいくらなんでもこれはソ連にひどいんじゃない?」って誰もが感じますよね。この小説を読んだ方が、「いやいやいくらなんでもこれは中国にひどいんじゃない?」とおもうくらいに、世の中が平和になることを祈ります。

最後に、ウイグル関連のウェブ雑誌記事のリンクをご紹介いたします。

◆さまようウイグル人の悲劇 Newsweek 2017年8月18日(金)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8247.php
◆ウイグル「絶望」収容所──中国共産党のウイグル人大量収監が始まった 2018年2月16日
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/02/post-9547_1.php


ほかも詳しくは、ネットをご参照ください。


前のブログ記事『イベントデザイン、最近は啓発したいことを忍ばせるらしい』とも関連しているのですが、小説で世の中を表現するのっていいですね。
この小説を通じて、日本人にウイグル人のことが少し知られた気がするのです。(もちろん、著者の月村了衛さんはもちろんそれを目的に書かれているとは限りません)

最近、インスタレーションに興味があります。インスタレーションとは、空間全部がアート作品になっていて、政治主張ではないのですが、あたしには世界がこうみえますということを聴衆に投げかける感じです。
先だってあるギャラリーがインスタレーションの作家さんの個展をされていて、そのときにそういう手法があるとお話をお伺いいたしました。日本にはあまりいないそうなのですが、西欧諸国だと、美術館からまとまった金額を受け取って、それを元手に表現活動をすることが多いそう。 どこかで情報を見かけたら、観に行くように心がけます。

それではまた~

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月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
東京読書交換会ウェブサイト

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


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