道尾秀介さんの小説『骸の爪』(幻冬舎文庫)を読みました。
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骸の爪 (幻冬舎文庫) |
道尾 秀介 | |
幻冬舎 |
以前、同じ作家の『向日葵の咲かない夏』を読んだことがあってとても面白かったので、気になる作家でした。
現実離れした話だからか、『向日葵の咲かない夏』はアマゾンレビューによると賛否両論。読書交換会に持っていったときも、読んだことがあるという方が「自分は好きだったけど…」とおっしゃっていて、やはりそうなのかとおもっておりました。
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向日葵の咲かない夏 (新潮文庫) |
道尾 秀介 | |
新潮社 |
と、別の日の読書交換会で、ほかの方が『骸の爪』を持ってきてくださった。これはぜひとも!!持って帰りたい、といただきました。
感想は、紹介してくださった方がおっしゃるとおり、仏像の勉強になりました。
かつてスピリチュアル界隈の方が神社仏閣に行くのについて行ったりすることがけっこうな頻度であったのですが、当時は仏像さっぱりわからないままでした。ひとりで訪問すると、自分の気になるところをさささとみて、仏像とか細かい違いわからないものだから、早いのですが、やはり詳しい方がいると、なんというか滞在時間が長いのです。そしてひとつひとつ真言までつぶやかれていて、おとなしく待っていたのを覚えています。
漢字にあまり詳しくないことに加え、視力が悪かったり、あまり視覚で物事を認識しないこともあり、薄暗い部屋で遠く離れた距離から見る仏像・・・椅子なしですと、あまり長時間興味を持続することができませんでした。
今回はスマホで仏像を検索しながら読みました。またここのところ絵を描いているため、仏師という仕事に興味を持ちました。舞台は滋賀県山中にある仏像の工房で、登場人物のおよそ半分が仏師という仏師だらけの小説です。そこに心霊現象探求家の主人公らが乗り込みます。
もっとも起こるのは殺人事件で、心霊現象ではなくすべてにからくりがあります。言葉の勘違い、それこそ漢字の読み違いも重要な鍵(しかも複数形!!)でした。
読んでいておもったのは、やはり狭い世界は怖いなということ。その世界でしか通用しない価値基準が生まれ、それによって感情が大きく揺れ動く。その価値観だけで判断し、誤解が生まれた結果、ちょっとそこから外れた方が傷ついてしまったり。そう、あと外部にそのコミュニティ内のことを隠そうとするところとか。
カルト団体のことなどを連想しつつ読んでおりました。もっとも自分と遠いものとして突き放すのではなく、この小説の登場人物たち同様、カルト団体は特殊なことではなく、だれでも陥る可能性があるんだなとおもいました。最近よくそのことを考えます。
読書交換会ができるきっかけになった社会人サークルだってカルト団体っぽい側面は、やっぱりありました。ネットで数年前に炎上していたときは余裕がなくあまり考えなかったのですが、最近の特集番組とかみていて、似ているなと少しおもったのでした。
今回拝読した『骸の爪』はシリーズ物の2作目のようです。1作目や続きも読んでみたいです。
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