朝の電車の静かな時間の中で読書をするのが楽しみだ。
乗っている時間、正味およそ20~23分くらい。
面白いものになるとページをめくる回数が増える。が、中には何度も同じところを読み返すような、熟読玩味のほうがいいものもある。
今は、その中間くらいのものを読んでいる。
テレビドラマの悪役のような顔が二つ、斜め前にある。
男女二人が次の駅から乗ってきて、僕の右隣に定着する。
「オレはよ、ロハなんだったら、絶対にやらねー。当たり前だろう、何かやれば、それなりの報酬を得て当然だろ。お前の姉さんが……赤ん坊の……お前の母さんが……」
聞き耳するまでもなく、自然と耳に飛び込んでくる。でかすぎる、、、、、声が。
車内の半分くらいの人は、この内容を聞いて「なんという考えの持ち主なんだ」という感想を持ったはずだ。座って寝ていたと思われるオバサンも、顔を上げて何か言いたげであった。
僕は、斜め前の悪役二人に「うるせー、もっと静かにしろ!!!!」と期待したのだが、何事もなく終着駅に着いた。
親切心というものを全く持ち合わせていない。これが信条らしい、この男。
結局、約20分間、1ページほど進んだだけで、中身はほとんど覚えていない。
……ったく。。。。。