爆弾は、同じ場所には落ちない。だから落下跡の穴に飛び込め。そうすれば死ぬことはない。ヘンリー少尉のそばでサンダース軍曹がカービーらに叫んだ。
子供のころ見た戦争テレビドラマ、コンバットの一コマだ。
下高井戸の駅を降り、顧客のオーナー宅に向かった。昨夜の豪雨は嘘のようにあがり、見事な晴れ間が広がっている。そこは、人通りも少なく車も滅多に通らない住宅街の道路。片手に黒のビジネスバッグを持ちのんびりと歩いていた。
どこかの社宅なのだろうか、三階建てのコンクリート造りの建物が右側に見えた。中年の小太りのおばさんが自転車を引きながら出てきた。どこに行くんだろう、なんて、どうでもいいことを頭に浮かべ、歩を進めた。都会の真ん中なのに、静かでのどかな光景だ。
昨日の豪雨の名残りが水溜まりとなって残っている。その少し先の道路端に、幾何学的な模様が見えた。白っぽい跡?
前方から車が速度を落とし向かってきた。狭い道だから端っこに避けた。ちょうど幾何学模様の上をまたいだ。するとその脇を車が通過して行った。その刹那、ビチャっという音と共に頭に重みを感じた。
何かが頭に落下。雨? 雨のしずく? ん……? 嫌な予感が。
頭に手をやる。ねばっとしている。その手を見た。
白と黄緑が混ざったジェル状のものが、…………。
カラスが……。
誰かに見られたらかっこ悪い。周囲を見まわすと、反対方向におばさんが自転車をこいでいた。今のうちだ。ハンカチで必死に拭いた。
真っ黒いカラスが大きく羽根を伸ばし、か~か~(アホ~)と頭上から飛び立っていった。
爆弾は、、、、、、、同じ場所に、、、、、、落ちるじゃないか~~~!^ ^;;
お~~~い、サンダース~~~、頼むぜい!^ ^;;