ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「息もできない」

2010-04-14 23:46:53 | Weblog
                                 「息もできない」
渋谷CINEMA RISEにて。
監督・脚本・主演・ヤン・イクチュン

以前からずっと観たかった本作を、やっと観て参りました。

ヤン・イクチュンの演出、演技、脚本、そして息をのむような存在感に圧倒される!!

ネタバレになってしまいますが
ストーリーの至る場面で映される暴力的描写、これがハンパではありません
これほど各方面から絶賛されている映画なのに、上映館が極端に少ないのもうなずけます・・。

ちょっとだけあらすじを・・・。
主人公のサンフン(ヤン・イクチュン)は、友人のマンシク(チョン・マンシク)の元で借金の取立て屋をしている・・。
当然堅気の取立てではない。返済の遅れた者から力ずくで奪ってくるのだ。

そんなサンフンは、実は幼い頃に、心に傷を負っていた・・。
そしてひょんなことからサンフンは、同じように心に癒されぬものをもつ勝気な女子高生ヨニ(キム・コッピ)と出会う・・。

暴力で生きて来たサンフン・・。ヨニとの出会いが少しずつ彼の頑なな心を変えてゆくが・・

いや、とにかくサンフンを演じたヤン・イクチュンが素晴らしいとしか言いようがないっすね。本当の取立て屋“サンフン”がそこにはいましたよ!

そして容赦ないバイオレントな取立てシーン・・顔色一つ変えずに殴り続けるサンフン・・。なのですが・・なぜか観終わって「暴力シーンにうんざりした」とか「あそこまで描かなくてもいいじゃないか」とは感じないんですよ・・。

それはやはり(ネタバレになるので書きにくいのですが)サンフンが、あれほど恨んでいるはずの父(パク・チョンスン)に対して、ここ一番にとった行動や(魂を揺さぶられましたな)、甥のヒョンイン(キム・ヒス)と遊んでいる姿や、
ヨニの前で見せた本音があるからでしょうね・・。

これは私的考えですが、この映画は“家族”を描いた作品ではないかと思うのですよ。
一つの“家族”の中で、いったいどう生きたらいいのか(優等生的な問いかけではなく)。
どうやって生き残って行けばいいのか・・。そのもがきをフィルムに収めたのではないかと・・。

ストーリー中盤までのサンフンは怖いもの知らずの悪漢ぶりを見せ付けますが、後半のあるシーンでヨニの膝に頭を乗せて涙を流します・・。あれほどの暴力漢が子供のように泣く・・。彼の悲しみの深さを表現するために(イイ意味でですよ)イクチュン監督は、主人公を粗暴な男にしたのではないかとも思えますね(ひきばっち説)・・。

そして観ていて予感はしていたのですが、物語はあまりにも悲しい結末を迎えます・・。
サンフンは、約束していたヒョンインの学芸会には来れませんでした・・。

マンシクの焼肉店の映像が、サンフンの横で皆が泣き叫ぶ映像より先に入るため、より一層悲しみがリアリティをもって観る者を打ちのめします・・

しかし、観終わった後、心が優しくなれたような、えも言われぬほんわかした気分になったのはなぜでしょうか・・

それは、この作品が、サンフンとヨニとのラブストーリーでもあるからではないでしょうか。
手も握らず、キスシーンもない、ラブストーリーです・・。



ひきばっち的満足度★★★★