大きく口を開けて叫ぶ姿、手を挙げ何かに祈る姿………。
小さなひねり人形が何かを訴えようとしている。
翌日は朝から昨夜フルスを吹いた会場の旧香港上海銀行の2階にある久保田馨の頓珍漢人形資料館を見た。手のひらに包める程度の小さいひねり人形であるが、その独創性と表現の大胆さに驚いた。
テーマは全て、原爆に対する、怒りと、平和への願いである。
作者の久保田馨は長崎の山中に庵を構え、粘土で作った人形をひたすらに焼き、その数は30万個に及ぶという。大半は長崎に修学旅行に来た子供たちのおみやげとして安い値段で売られたが、それらは全国各地に散らばり、散逸しているという。それに文化的価値を見いだした収集家たちが呼びかけて集めたものだそうだ。
岡本太郎は縄文時代の人形に創作のエネルギーを得て、大阪万博の太陽の塔を作ったそうだが、久保田薫にも共通するものがあるように感じられる。
どれ一つとして同じものはないという。