ハッジ巡礼といえば、世界中からメッカに200~300万人が集まる公衆衛生のネガティブ要因として、侵襲性髄膜炎やインフルやMERSと関連づけて語られるのが相場でした。
しかし、この”恐怖のマスギャザリング”が実はポジティブな側面をもっているという目からうろこの記事@Newsweek。
巡礼者のケアにあたる医療従事者2万5千人(!)の余力をつかって、通常ならアプローチの困難な戦乱地の状況を、そこからの巡礼者の健康状態を調べることによって把握、ひいては将来のパンデミック対策に役立てようという壮大な活動。
巡礼期間中には2万5千人の医療従事者が、体調不良の巡礼者のケアは言うに及ばず、陸海空の玄関口13か所でのチェック(と必要に応じワクチンや予防薬)、25か所の医療施設でのケアと疫学データ収集、監視チームの巡回、etcetc で、巡礼者の60%(!)の疫学データを集め指令センターに送られWHOほかと共有。米CDCも技術支援。
H12年にマスギャザリング医学協力センターを創立、いまやマスギャザリング医学のメッカ(実際にもメッカだけど)になっています。こうしたマスギャザリングを利用した監視で、たとえば戦乱で公衆衛生システムの崩壊したシリアやイエメンなど、疾患ではリーシュマニア・疥癬・狂犬病・ブルセラ・髄膜炎・リステリア・結核・肝炎・エンテロ・赤痢・サルモネラが挙げられています。
こうした、メッカ巡礼の渡航医学上のポジティブな側面は、なかなか表にでる形で報じられませんが、200万の巡礼者の過半数120万人以上(!)が2万5千人の専門家の目でデータ収集されているのは、縁の下の巨大な力持ちですね。今後も変わらぬ活躍を期待したいです。
https://www.newsweek.com/new-research-efforts-hajj-could-prevent-next-health-outbreak-1069009
How Hajj Pilgrimage to Mecca Could Help Prevent Next Global Health Pandemic
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