中南米を席巻しているジカウイルス感染症、なぜかキューバの国内感染だけはわずか3例という、出色の少なさです。その舞台裏の紹介。
- キューバでは、ジカウイルス感染症の国内感染が3例しか発生していない。すぐ近隣のプエルトリコで8766例発生しているのと対照的。
- キューバでは、一般市民の媒介蚊対策の啓発が行き届いている。蚊の姿を目撃するや、一般市民はドライヤーのような噴霧器を取り出し躊躇せず駆除する。
- キューバでは優秀なサーベイランスシステムが機能している。1981年にデング熱が344000例発生するという出来事があり、発生地に医療者を送り込み徹底的な蚊対策をおこなった。そしてこの危機をチャンスに変え秀逸なシステムを整えた。報告制度の整備、政府部局間の協力、啓発キャンペーン。殺虫剤散布と、子供を含めて蚊に咬まれたことを自覚することを教育。蚊の媒介条件を放置している世帯に対する、重い罰金制度はもっとも著効した策のひとつ。
- 今回のジカにあたっても、前回デング対策の枠組みより新しいものは要せず、そのままで著効したと当局者。実際、まだキューバに発生する以前から、軍9000人を動員して殺虫剤散布をおこなうとともに、労働者を動員して水路の清掃など幼生(ボウフラ)対策おこなった。空港検疫官は流行地からの入国者に目を光らせスクリーニング、医療者は症状のある人々を探し個別訪問をおこなった。母子保健の分野ではすでに出生前検診を包括的におこなうシステムができているのでジカ関連でも威力を発揮している。
- ただし、それでもジカ対策は予算不足にはある。
キューバの医療界、しばしば世界をあっと言わせます。EVD現場への大量派遣など世界中に報道されたこともありますが、もっと地味なところでもしっかりしているのは結構知られた話。
それがジカ対策でもいかんなく発揮され、米CDC責任下にあるプエルトリコより圧倒的すぐれたアウトプットをたたき出しているという話。
一般社会に蚊対策がしっかりアウトプットされ、殺虫剤がすぐ使われる。高濃度DEETひとつでぶつぶつ言う人がいる国からは羨ましいところですが、その背景にはしっかりしたリスクコミュニケーションとしっかりした(瑣事に拘泥しない)国民性があるのでしょう。しかしその中でも、(シンガポールだけが有名になっている)ボウフラ湧かしたら高額罰金!というのが効果をあげているのは注目どころです。
ソースはネイチャー
http://www.nature.com/news/mosquito-guns-and-heavy-fines-how-cuba-kept-zika-at-bay-for-so-long-1.20429
Mosquito guns and heavy fines: how Cuba kept Zika at bay for so long
It is one of the last Caribbean countries to get hit.
17 August 2016