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「共謀罪」新設根拠の犯罪条約 「条約の目的 テロ対策ではない」

2017-05-06 | いろいろ

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「共謀罪」新設根拠の犯罪条約  

「テロ対策 目的でない」国連指針執筆の米教授

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のために政府が必要としている「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)をめぐり、国連の「立法ガイド」の執筆者が朝田新聞社の取材に応じ、「テロ対策は条約の目的ではない」と明言した。条約の目的について「テロ対策」を強調する日本政府とは異なる見解が示された。

 取材に答えたのは、米ノトスイースタン大のニコス・パッサス教授。国際刑法の専門家で、2000年に国連総会で採択された同条約に関連し、各国が立法作業をするための指針を示したL立法ガイド」の執筆で中心的役割を担った。滞在先の欧州から、電話やメールで取材に応じた。

 安倍晋三首相は4月6日の衆院本会議で、「(TOC条約は)テロを含む幅広い国際的な犯罪組織を一層効果的に防止するための国際的な枠組み」と述べていた。しかし、パッサス氏は「イデオロギーに由来する犯罪のためではない」「利益目的の組織犯罪を取り締まるための条約だ」と話した。

 国会審議では、条約に加わるには法案創設が必要とする政府の主張と、現行法を補うことで対応できるという野党の主張が対立している。「新規立法が必要か」との質問に、パッサス氏は「既存法で加盟の条件を満たすのであれば、新法の必要はない」と語った。ただ、日本の既存法がこの条件を満たすかは、答える立場にないとした。


テロ除外の理由「条約制定済み」

パッサス教授との主な一問一答は次の通り。

一一条約の目的はテロ防止ではないのか。

 「条約はイデオロギーに由来する犯罪のためではない。犯罪の目的について『金銭的利益そのたの物質的利益を得ること』とあえて入れているのはその表れだ」

一一なぜ、テロは除外したのか。

 【思想信条に由来した犯罪のための条約はすでに制定され、国連安保理の決議もある。テロを取り締まるためには、これらが国際基準となっている」

一一日本政府は、条約に加わるためには新法が必要と説明している。

 「条約は、組織的な犯罪集団に対応するため、『重大な犯罪に参加することへの合意』か、『集団への参加』のどちらかを罰することを求めている。そのような法律がなければ、新法の整備が必要だ。もっとも、既存の法律で対応できれば新法はいらない。多くの国はまず、国内の既存法を検討し、立法が必要かを考えるのが通常だ」



「条約の目的 テロ対策ではない」 「共謀罪」政府見解と相違

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は「テロ対策」が目的なのか――。「共謀罪」法案をめぐる国会審議で争点になっている。過去3回廃案になった共謀罪法案に「テロ対策」の位置づけはなく、同じ趣旨の法案が突然、「テロ等準備罪」と名前を変えて出てきたためだ。

 法案の審議が行われている衆院法務委員会で政府と野党の見解は対立する。

 政府は、2014年12月の国連安保理決議が、テロの資金源となる国際組織犯罪への対応として、TOC条約を含めたテロ防止関連条約の締結を加盟国に求めた――などと強調。テロ防止のために条約締結を求められていると主張する。

 野党側は、条約の起草段階で政府が「テロは条約の対象とするべきではない」と主張していた経過を指摘。条約は経済的利益を目指す組織犯罪集団を対象とうたっているとして、「マフィアなど国際的な経済犯罪を対象とするもの」と反論する。

 「TOC条約の目的はテロ対策ではない」。TOC条約の「立法ガイド」の作成の中心人物、米ノースイースタン大のニコス・パッサス教授(国際刑法)が、朝日新聞の取材にこう証言した。「共謀罪」法案に反対する高山佳奈子・京都大教授(刑法)は「条約はテロ対策を目的としないというあたり前のことが確認された。テロ対策を口実にして法案を押し通そうとする政府の意図がはっきりした」と話す。

 パッサス教授は一般論として、「既存の法で加盟の条件を満たすのであれば、新法の必要はない」とも語った。高山教授は、「日本には共謀共同正犯の理論があり、現在ある(犯行前の段階の行為を処罰する)予備罪などと組み合わせることで、条約が求める既遂・未遂の前の段階の処罰に対応することは可能だ。条約締結のため新たな法律が必要という政府の説明には理由がない」と話す。


■TOC条約をめぐる発言

 安倍晋三首相 「テロを含む幅広い国際的な犯罪組織を一層効果的に防止するための国際的な枠組み」「東京五輪・パラリンピックの開催に向けて締結が不可欠」

 ニコス・パッサス教授 「条約はイデオロギーに由来するり犯罪のためではない」「思想信条に由来した犯罪のための条約は既に制定され、国連安保理の決議もある」


捜査権限の拡大 行き過に懸念 米テロ対策

 テロ対策の強化は何をもたらすのか。2001年の同時多発テロ事件を機に、米国では、携帯通話やメールの傍受などを認める反テロ愛国法が成立。捜査権限が拡大した。テロ防止を望む世論が背景にあるが、行き過ぎを懸念する声も出ている。

 「おとり捜査」が認められている米国では、当局が捜査対象者のテロ計画の立案や武器の調達を支援する手法が広がり、「事件を誘導している」などの指摘が挙がっている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は昨年、過激派組織「イスラム国」(IS)に関する米当局の捜査手法を調査。その結果、ISに共鳴する容疑者に関する15年2月以降の案件のうち、3件に2件の割合で「おとり捜査」が使われていた。同紙は、おとり捜査は「かつて最後の手段だった」と指摘した上で、十分に議会などの検証を受けていないと指摘した。

 ミズーリ州では2月、男(25)がISを支援しようとした疑いで逮捕された。米司法省によると、男が偽名で政府への攻撃の意図とイスラム過激思想への忠誠心をネットで示唆したことから捜査を本格化し、覆面捜査員がIS関係者を装って男と面会を繰り返した。男はテロ目的の爆発物に使うクギやバッテリーなどを購入。最後の面会時に身柄を拘束された。覆面捜査員が、この購入品リストだけでなく、所持金のない男に代金20,レドも渡していた。

 当局の捜査権限を強化して、きわどい捜査を尽くしても、過激思想に影響されて単独で犯行に及ぶ「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型の事件を防ぐことは難しい。

 米国では、昨年6月にはフロリダ州のナイトクラブが、15年6月には黒人教会が狙われて銃乱射事件が起き大勢の犠牲者を出した。いずれも容疑者が過激思想に触発され、事件につながったとされている。


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