今日初めてコートを下ろしたが電車内が暑くて着ていられない。10℃くらいでは全然寒さを感じない自分の身体がおかしいのだろうか。
最近、某図書館で37年前刊行された井上靖の随筆本を見つけた。昭和40年代の後半に発表されたショートエッセイを寄せ集めたものである。
もうとっくに絶版となっているから、図書館や古本屋でないと手に入らない。ページの大半が茶色に黄ばんでそれだけで年季や年代を感じる。
井上靖という作家は実に飾らない文体で、読んでいて胸がすっと静まる自然体の文章である。少しも大袈裟なところや気負ったところがなく、説明もくどくなくて、それでいて人間の大事な本質をさらりと平易に述べる。
以前書いたが私が初めて読んだ小説(井上靖「夏草冬濤」)も中学生がすらすら読める情景の浮かぶ物語であった。時代は昭和でも、その感性や人間らしさはそのまま令和のこの時代に十分生きる内容だ。
電車の中で、お昼を食べながら、仕事の隙間時間見つけてゆっくり噛みしめて読む楽しさがある。いい本に出会うとほんとうに生きてて良かったと実感する。凄い偶然が作用するのも人との出会いと全く一緒だと思う。
今年ももう10日あまり。年の瀬は何故だか慌ただしく過ぎてゆく。そろそろ年賀状の準備に入らなくては。年賀状だけで繋がっている旧友がいる。