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文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

日本の優秀小売企業の底力 矢作 敏行編著…日経新聞読書欄から。

2011年11月27日 17時44分13秒 | 日記
日本経済新聞出版社・2700円)
▼やはぎ・としゆき 国際基督教大卒。法政大教授。

編著者はジャーナリスト出身。記者時代に培った取材力を活かし、かつて成長著しかったコンビニ業界に対し、広くて深い現場調査を行った。その成果である『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』は、刊行当時、世界的に大きな注目を集めていたコンビニの事業システムの全貌を初めて明らかにし、流通研究の金字塔的存在となった。

本書は以後、流通研究における日本のトップランナーとなった編著者の最新作。日本の流通企業と流通研究者の現状と課題を把握することができる。

ファーストリテイリング、ニトリ、ヤマダ電機。本書が取り上げる企業は、社会人であればその生い立ちや経営者の考え方、事業システムの全体像を知っておきたいと思うものばかりだ。編著者らは読者のそうした好奇心に、現場への数度の聞き取りと、既存文献をデータ源に応えようとしている。

本書の特徴は日本の優秀小売企業を「組織能力」という視点から理解しようとしているところにある。ただし「組織能力」という概念を使うのには注意が必要だ。

例えば、自動車メーカーのある工場は歩留まり率が同社の他の工場より圧倒的に高かった、つまり効率生産という能力で高いものを有していた。しかし、同工場は生産していた製品が市場で不人気だったため、工場単位の採算では赤字続きだった。「組織能力」が高くても低業績だったのだ。組織能力の高い、低いは経営成果(営業利益など)と関係なく考えることができる。そこに注意が必要だ。

小売企業の組織能力をどのよろな点から捉え、数値化すればよいのか。本書が取り上げる小売企業(例えばファーストリテイリング)は同業他社(例えばしまむら)と比較して組織能力でどれほど差があるのだろうか。高い能力を持っていても、業績が低迷している小売企業はどこか。今、モノ余りに加え、情報余りの時代に突入しているとされるが、時代のそうしか重層的な変わり目の中で求められる組織能力の中身とは何か。

編著者らによる豊富な記述の巾にその答えを求め、思索の旅に出ることも本書を楽しむ一つの方洗だろう。

評者:神戸大学教授 小川進

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