以下は前章の続きである。
その後、「犯罪事実があった」と主張する伊藤氏の主張は、検察と検察審査会によって、二度にわたって退けられた。
日本の法制度上、刑事事件としては完全に終結し、伊藤氏の私を犯罪者にしようという目論見は失敗に終わったのである。
普通の記者ならば、「なぜ伊藤氏の主張は退けられたのか」という点をまず検証する。
しかし今回の場合、テレビのワイドショーや週刊誌の報道は、取材も根拠の提示もなく、盲目的に伊藤氏側の主張に寄り添うものが少なくなかった。
たしかに、うら若い独身女性が「レイプ被害に遭いました」と顔出しで告発すれば、世間の注目を一気に集めるだろう。
そして、「記者でない一般の人」であれば、顔を出して告発した伊藤氏に同情し、「薬物を盛られて意思に反して性行為がなされた」という彼女の主張を信じてしまうかもしれない。
しかし、そこで「ちょっと待てよ」と立ち止まるのが、一般人と記者の違いである。
しかも今回の場合は、客観的証拠を元に、検察と検察審査会が二度にわたって彼女の主張を退けているのである。
伊藤氏の主張に辻褄が合わないところがあったのではないかと考えるのが、普通の記者である。
この稿続く。