文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、「円安は日本に有利で好機なのに何を騒いでいるのか」と冷ややかだ。

2024年06月15日 21時19分41秒 | 全般

以下は、北國新聞6月12日夕刊に掲載された、「日本の解き方」高橋洋一利下げを始めた欧州中央銀行からである。
高橋洋一氏と田村秀男氏が本物の経済の専門家であることは、これまでもたびたび述べてきた。
この論文もまた、高橋洋一が日本随一の経済専門家であることを証明している。
日本国民だけでなく、世界中の人々にとって必読の書である。
文中強調は私。

FRBと同様に雇用確保重視
日銀の利上げ方向と対照的だ 

欧州中央銀行(ECB)は6日、利下げの開始を決めた。
米連邦準備制度理事会(FRB)も利下げの時期が注目されており、日銀の政策の方向性との違いが目立つ。 
ECBのインフレ目標は、EU基準消費者物価指数(対前年同月比)でみて2%だ。
政策金利をO・25%からO・75%へと金融引き締めを開始した2022年7月のインフレ率は8・9%だった。 
その後、政策金利を小刻みに引き上げ、23年9月に4・75%になった。
他方インフレ率は22年10月に10・6%まで上昇したが、すぐにピークアウトし、24年5月に2・6%にまで低下した。
この動きは、まさに金融引き締めは遅れて行う「ビハインド・ザ・カーブ」だ。 
ただし、正直いえば、インフレ率が二桁になるまで放置せずに、6%程度まで急騰した22年初めの頃に金融引き締めを開始すべきだった。 
なお、FRBのインフレ目標は、コア個人消費支出価格指数(対前年同月比)でみて2%だ。
政策金利をO・25%からO・5%へと金融引き締めを開始した22年3月のインフレ率は5・4%だった。
その後、政策金利を小刻みに引き上げて23年7月に5・5%になった。 
インフレ率は22年9月に5・5%となったがその後、低下に転じて24年4月は2・8%だった。
FRBの政策対応もビハインド・ザ・カーブの典型であり、タイミングも問題ない。 
ECBは、今後インフレ率が上がるとみているか、それとも下がるとみているか。
上がるとしても失業率の低下の余地はほとんどない。
というのは、今年4月の失業率は過去最低水準となっている。
一方、下がるとすれば、失業率が高くなる可能性がある。
となれば、雇用確保の観点から、利下げするのは中央銀行の責務として合理的であり、当然だろう。

中央銀行には2つのタイプがある。
1つは雇用の確保を重視する立場で、もう1つは金融機関の経営を重視する立場だ。
前者は利上げに慎重で、後者は利上げに前のめりだ。 
ECBは前者であることが今回明らかになった。
FRBも利下げ方針を公表しているくらいなので前者だ。 
一方、日銀は典型的な後者だ。
インフレ率は当分の閧目標2%から大きく逸脱する環境ではないので、直ちに利上げすべきではない。
しかし、「円安悪者論」もあって、日銀の利上げへの前のめり感はなくならない。
ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、「円安は日本に有利で好機なのに何を騒いでいるのか」と冷ややかだ。
これは政府とマスコミの滑稽な対応を揶揄したものだが、国内メディアはまともに言及できない。 
最近は、新手の罠(わな)もある。
筆者が円安によって外国為替毆金持別会計の含み益があることを「外為埋蔵金」と言ったら、日銀が保有する上場投資信託 (ETF)の含み益を「日銀埋蔵金」として、売却を示唆する向きもある。
ただし、これは金融引き締めであり、利上げになるので要注意だ。


2024/6/13 in Kanazawa

 


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